警察、本気の摘発
通報・発見
動画は薄暗い場所を映し出し、男性のモノローグがかぶさります。
「どうにも忘れられない強烈な場面というものがあります。これほど過酷な状況にあった犬を忘れることはできません。」
これはもう10年以上前に実行されたレスキューの想い出ですので、心静かに動画を鑑賞しましょう。
米国の動物愛護団体The Humane Society of the United States がまたしても、闘犬場から悲惨な状態に置かれた犬たちを救出しました。インディアナ州の警察による違法施設の手入れの協力依頼です。
逮捕の現場ですよ。この闇施設を運営する容疑者たちが地面に横たわり、武装した警察官たちが監視しています。日本で動物に関わる違法行為の摘発では、まずあり得ない光景ですね。本気度が違うと言いましょうか。
この厳しい対応は、この施設で行われていた虐待の凄惨(せいさん)さを物語ります。生ぬるい商売ではなかったのです。カーペットや壁、落ちているタオルには犬の血液のシミが付着していたり、「ブレーク・スティック」と呼ばれる先のとがった金属の道具が転がっていたり。
調べるとこの道具、咬みついて放さない犬の口元に差し込んで口を開けさせるものだとか。恐ろしい状況が作り出されていることに間違いありません。
裏口から出ると、隅に縮こまっている犬がいました。もちろん太く思い鎖につながれています。その頬には大きくえぐれた傷がありました。間違いなく、闘犬で相手の犬に食いちぎられたあと。このような傷を治療することもなく放置なのです。
もし化膿して菌が全身にまわり弱って死亡したとしても、主催者には痛くもかゆくもないのでしょう。子犬工場から新たに仕入れればよいのだから。
奴らにとってそんなの、はした金。お許しください、「奴ら」と言うことを。
すっかり怖気(おじけ)づいている犬。しかもこの子、出産もしていますね。戦わせられる上に、強制的に闘犬用の子犬の生産にも使われていたのです。
この子は見るからに疲れ切っていて、心がすり切れていて、みじめで、痛くて、つらい。つらいよ、と言っています。
この子は闘犬として優秀だったので、死ぬ前に子犬を産む機械に回したのでしょう。けしかけられ、脅されて戦い、この子の牙の下で失われた命がたくさんあったのかもしれません。自分が生きるために。
そしてこの子はおびえています。全身全霊で、こわがっています。
「この子が再び人を信頼してくれることはあるだろうか。確信を持てませんでした。」
奇跡の20分
おびえきっていたこの子「ハニー」は恐怖に支配されていて、愛護団体職員でさえ、人との関係を築けるか予想ができませんでした。人に攻撃的でないのが不思議なぐらいです。
それなのに。ハニーのそばで20分間なだめていると、彼女の態度が変わってきたのです。
生まれてからずっと暴力的な環境に置かれていた人が、自分の身を守るために暴力的になったり、極度に内向的になったりすることは人間社会でも見られます。その人たちの態度が変わるのがどれだけ難しいか、多くの報道で私たちは知っています。
犬はどうなのでしょう。20分という時間がハニーにとって短いのか長いのか。「自分を痛めつけない、やさしく接してくれる人がいる。」ハニーはそれを、20分の間に察知したようです。
重苦しく悲しげだった男性職員の声に、最後に少し明るさが戻ってきました。動画をご覧ください。
動画を見ることは保護活動支援につながります。
※こちらの記事は動画の制作・配信をしている団体より許可を得て掲載しております。
動画制作者:Humane Society of the United States
掲載YouTubeチャンネル:The Humane Society of the United States