ペットのバイオバンクとは?
アメリカの大手ペットフードメーカーの一部門であるウォルサム・ペットケア科学研究所が、ペットのためのバイオバンクを構築するために一般家庭の犬や猫の参加者を募集しています。
バイオバンクとは生体試料(血液サンプルやその他の組織サンプル)や、それに付随する情報などを集めて保管し研究に活用する施設や仕組みのことを指します。生体試料とは植物や微生物の場合もあれば、ヒトや動物の場合もあります。(植物や微生物のバンクは違う名称で呼ばれる場合もあります。)
近年、ヒトの医療研究のための大規模なバイオバンクが設立され、病気の原因解明や新薬開発などに活かされています。ヒトだけでなく動物のバイオバンクも増えつつあり、中でも犬や猫などペット動物のバイオバンクが注目されています。
ウォルサム・ペットケア科学研究所が予定しているバイオバンクは、数多くのサンプルを長期間にわたって収集し、さまざまな病気の引き金となるものをゲノムパターンを通じて特定することを目的としています。
バイオバンクに参加すると何がある?
バイオバンク構築のための参加者募集は、ペットフードメーカーのウェブサイトを通じて行われています。
参加条件は生後6ヵ月から10歳までの健康な犬1万匹と猫1万匹で、ペットフードメーカー系列の動物病院の現顧客、または供血プログラムに参加していることとなっています。
参加する場合、10年間にわたって1年に1回同系列病院で健康診断を受け、血液サンプルと便サンプルを提供します。10年の間に病気や怪我をした場合は無料で治療が受けられます。参加後の初診時に、猫には遺伝子検査キット、犬には活動量モニターがプレゼントされます。
このペットバイオバンクは世界で最大の規模になると考えられており、現在は難治とされる病気の治療法開発などが期待されます。また、収集されたゲノム配列のデータはパブリックドメインとして公開することが予定されており、日本も含めた世界中の獣医療関係者、飼い主さんたち、犬や猫たちの役に立つことが期待されます。
世界のペットバイオバンク
ペットのためのバイオバンクは世界各国で既に多くの研究結果を報告しています。
ハンガリーのエトヴェシュ・ロラーンド大学はシニアファミリードッグプロジェクトという犬の老化研究のためのバイオバンクを作り、脳の老化について新しい発見を報告しています。
https://wanchan.jp/column/detail/27150
アメリカのコーネル大学の獣医学バイオバンクは初めてISO2387の認定を受けたバイオバンクで、その施設と運用が国際的に的確であることを認められています。同バイオバンクはワシントン大学とテキサスA&M大学が運営しているドッグエイジングプロジェクトにも協力しており、犬の老化研究に貢献しています。
https://wanchan.jp/column/detail/18108
他にも、イギリス、イタリア、フィンランドなどの研究機関が獣医学バイオバンクを構築して研究開発を行なっています。大切な愛犬や愛猫が病気になった時にこれらの研究結果に助けられることがあるかもしれませんね。
まとめ
アメリカのペットフードメーカーの研究所が、ペットバイオバンク構築のための参加者を募集しているという話題をご紹介しました。
バイオバンクなどと聞いても、愛犬や愛猫とは縁遠いことのように思いがちですが、その内容を知るとグッと身近に感じるのではないでしょうか。
将来もし日本の獣医学の研究機関でバイオバンク参加の募集などがあった時の参考になれば幸いです。
《参考URL》
https://www.mars.com/news-and-stories/press-releases-statements/mars-launches-worlds-first-pet-biobank
https://www.marspetcarebiobank.com
https://www.vet.cornell.edu/departments/centers/cornell-veterinary-biobank