出会い
捨て犬?
動物病院の看護師として勤めて2年目のある日、「先生…うちの前に倒れてた」と患者さんが1匹の小さな犬を抱いて入ってきました。
四肢麻痺状態で診察台に横たわり、自分では動けない様子。そしてものすごく毛むくじゃら。体の毛は伸びきって毛玉だらけで、耳や目もどこにあるかわかりませんでした。
保護した方の家の向かいは人気の散歩コースとなっている大きな公園なのですが、よく犬が捨てられてしまうのです。きっとこの子も…
病院の検査では四肢麻痺の原因はわかりませんでしたが、レントゲンの結果、まだ1歳くらいと判明しました。その日は様子観察の為に入院となりましたが、翌朝様子を見に行くと横たわっていたはずのその子は自分で伏せていたのです。
保護した方に状態を伝えたところ「うちで飼います!」と言ってくれました。幸せになって欲しいな…とみんな嬉しい気持ちでで送り出しました。
そのおうちの男の子が「モカ」と名づけ、もじゃもじゃの犬は晴れて家族と名前を手に入れました。
2つ目のお家の生活は数日で…
しかし数日後、病院に来た飼い主さんは暗い顔で「この子との生活が不安で飼えない…」と言うのです。
院長と飼い主さんが時間をかけて話し合った結果、病院で引き取ることになりました。モカの目にかかる毛をかきわけると、とても不安な顔をしていたのを今でも覚えてます。
3つ目のお家は動物病院
病院に来てからも毎日物静かで、コロコロ変わる3つ目のお家でどうしていいかわからないようでした。
その後、詳しい検査の結果「環椎軸椎不安定症」であることが判明。生まれつき首の骨が不安定で脊髄を圧迫して麻痺が出ていることがわかりました。
そのため首に浮き輪のようなカラーを付けて固定し様子を見ることになりましたが、幸い症状は日に日に改善していき歩けるようになりました。
その頃から病院のスタッフにも慣れ始め少しづつ明るくなり、吠えたり喜んだり感情を出してくれる様に♪いつの間にか保護した最初の頃の頃の不安気な面影は消え、おてんばで甘えん坊のトイプードル「モカ」になっていきました。
4つ目のお家は我が家
私が地べたに座ればお膝に飛び乗り、立ち上がれば抱っこをせがみ、毎日全力で甘えてくるモカが日に日に愛おしく大切な存在に…。そして、ついに我が家に迎えることにしました。
毎日一緒に仕事に行き、休みの日は一緒にお出かけ。外食をするときはドッグカフェかテイクアウトなど、私の生活はモカ中心の生活に一変しました。
お留守番できない訳ではないけど、私がずっと一緒に居たかったからです。
一緒に人生を歩む
それからというもの、私とモカは一心同体。たくさん旅行にも行きましたが、ホテルに預けたことは一度もありません。
首にハンデがあるのでトリミングも私がしています。彼にも懐き、プロポーズの時も婚姻届を書いた時も、いつもモカが立ち会ってくれました。そしてモカの誕生日に入籍をし、結婚式ではリングドッグという大役まで…。
嬉しいとき、悲しいとき、私の人生の思い出にはいつもモカが側にいてくれます。私の人生にかわいい彩りを加えてくれて本当にありがとう!
保護犬について
犬は自分のハンデを嘆きません。他の子を羨んだり比べたりしません。いかにたくさん美味しいものを食べられるか、どれだけ抱っこして撫でてもらうか、どうやって最高の昼寝をするか、自分の人生を謳歌しようと一生懸命なのです。
そんな姿に何度励まされ、癒されたことでしょう…。
ハンデがあっても保護犬でも、とにかくきれいな心で全力で私達を愛してくれます。そして幾度となく私を笑顔にしてくれました。
まとめ
保護犬というと病気が心配であったり家庭に馴染めるか不安な方も多いかと思います。しかし健康な子もいますし、少しのサポートで楽しく生活できる子も沢山います。おっとりした子や明るい子、散歩が好きな子や家が好きな子、本当に様々です。
わんちゃんを迎えるときはペットショップに行く前に、保護犬にも一度目を向けて欲しいと思います。運命の子に出会えなければ、それでもいいのです。
モカとの生活は本当に幸せで、モカの居ない生活は考えられません。ハンデがあっても歩き方が不恰好でも、世界一かわいい我が子です。
たくさんの保護犬達に大切な家族ができて、たくさん愛されますよう心から願っています。