人間不信の犬は防衛のために咬む
通報・発見
「ラルフ」は虐待され、放置された挙句に捨てれられて、ゴミの山で過ごしていました。ラルフに毎日食べ物を与えていた人たちは保護に協力してくれる先を探し回り、やっと保護団体HOPE FOR PAWS に助けを求めることができました。
現場は、草野球場か何かでしょうか?金網で仕切られ、地面が露出した広く寒々しい場所です。
異変を察知したラルフは、土ぼこりが舞うその場所を無暗に走り回っています。その様子から、運動能力が高くすばしこいことがわかります。
作戦
すばしこい犬で走ってつかまえることが不可能な場合は、よくケージトラップが使われます。「攻め」ではなく、「待ち」の作戦ですね。
食べ物につられて思惑通りケージに入ってきましたが…。
賢いラルフはまんまと食べ物だけ拾い、落ちてくるフタが閉まる前に脱出してしまいます!
作戦変更
ケージがだめならと、直接対決に作戦変更。ヒトの存在に少し慣れた(かもしれない)ラルフを食べ物でおびきよせ、直接布リードを首にかけようと試みます。
ラルフはそれを嫌がって吠え、そして咬みつくような素振りも見せました。威嚇してくるタイプの犬なんです。
ラルフはそのまま夕日に向かって走り去り、保護活動1日目は不発に終了。翌日出直しです。
2日目。女性のボランティアの手から、ラルフは直接食べ物を受け取りました。犬が男性を恐れ女性になつくのは、よくあるパターンです。おそらくですが、ラルフを虐待し捨てた元飼い主は男性だったのでしょう。
下の静止画のラルフは、食べ物をもらった後に、自分から女性に近づいた瞬間です。希望が見えたかな?
…甘かった。ラルフの人間不信はもっと根深いものでした。
それに近くで吠えていている犬も気になって神経質になっているようです。食べ物を直接受け取るところまでは来るものの、逃げ腰で、そこからなかなか進展しません。
この日もやっぱり、日没が迫って参りました。保護する人たちの根気に脱帽です。
でもね、変化のきざしも見えてきたのです。ラルフは相変わらず後ろに跳びのきますが、吠えずにその場にとどまるようになりました。
そして手から食べ物を受け取った後、1秒ほどとどまってからゆっくり離れるような、そんな感じになってきました。行動に少し余裕が出てきたと言いますか。
そこで、もう一度、食べ物でケージに誘導してみます。すると!
ラルフはケージに入り、フタが閉まったんですねえ。
昨日の経験があるから、ラルフは半分、わかっていたんじゃないかと思うのです。どこか自分で「この人たちにつかまってもいいかな」と感じたのではないかな?
緊迫の10分間
そして病院に到着しました。
部屋の中でケージから出されたラルフは、すぐにソファに跳び上がり、そして壁に向かってジャンプ!逃げ道を探しているのです。
部布リードをかけると抵抗し、リードを噛み切ろうとします。
リードの次の課題は「なでる」。部屋の隅に立ちすくむラルフをタオルを使ってゆっくりなでようとすると、迫ってくるタオルに敵意むき出しで、咬む、咬む、咬む!
これが素手だったら、皮膚に細かい穴、開きますよ。痛そう~。
憶測ですが、虐待の後遺症じゃないかと思うのです。この子はどんなに、肉体的、精神的にいじめられていたのでしょう。
少しずつ、少しずつ、ラルフは理解していきます。「あれ、前と違うのかな。怖くないな…。あれ、ちょっと気持ちいいな…ちょっとうれしいな…」
そしてついに人の指で頭をホリホリされた瞬間、一瞬ビクッとして、それから、ホリホリの快感を知ってしまう…!「溶ける」とはこういうことでしょうか?
ラルフの仕草と表情が刻々と変化する、動画必見場面のひとつです!
大変身
それからは速かった。
HOPE FOR PAWS に助けを求めた女性もやってきました。ラルフは彼女の手も受け入れ、そしてじっと見上げます。
ついにはシャワーを受け入れていますよ!うそみたい。人を信頼してくれたのです。その翌日には、なんと人の子どもになついています。ラルフが完全に安全な犬だと、大人たちは確信を持てたのです。
3ヵ月後、ラルフに里親さんが見つかりました。里親さんの愛情を欲しがり、愛情を与えられるラルフの姿があります。
咬みつく犬は、決して悪い犬ではありません。「悪い犬」などいないのです。人間不信と恐怖がインプットされた犬がどう猛になるのは、自然な成り行きでしょう。信頼を回復した時、ラルフは本来の姿を取り戻しました。
動画をご覧ください。
※こちらの記事は動画配信をしているYouTubeチャンネルより許可を得て掲載しております。
掲載YouTubeチャンネル:Hope For Paws - Official Rescue Channel
Hope for Paws
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