障害を負っても自分らしく生きる
保護からの15カ月
「ブラック」は、ギリシャ・クレタ島の海岸の波打ち際に捨てられ凍死寸前のところを保護されて、保護施設タキス・シェルターに住んでいました。ブラックの保護とその後の暮らしぶりを、以前にわんちゃんホンポでご紹介しました。
ブラックは顔面に大きな悪性腫瘍、そして背骨の骨折による下半身マヒを背負っていました。そんな状態のために、人々は安楽死を提案。しかし施設長のタキスさんは、ブラックを生かし、残された日々を愛情で埋め尽くすことにしたのです。
今回ご紹介する動画の英語のタイトルは「A tribute to Black(ブラックに捧ぐ)」。
ブラックは施設で歩行器具をつけて生き生きと暮らし、そして15ヵ月後に逝(い)きました。
保護してすぐ、ブラックを安楽死させないことに批判もあったといいます。生かすか、逝かすか。正解のない選択でしょう。
タキスさんは、ブラックに生きる喜びを十分に経験させたかったのだと思います。
「ブラック!レッツ・プレイ!レッツ・プレイ!」
歩行器具をつけたブラックは、ボールを投げてほしくて「早く、早く!」というように前足で跳び上がります。
バスケットボールを追って走るブラック。歩行器具の車輪がカラカラカラと軽快な音を立てています。
「ハハハ!ブラックを引き留めることはできないよ!」
黄色い車輪をつけたブラックが走る姿は、多くの人の心に焼き付きました。
ブラックはガンの治療に化学療法も受けていました。動画にはなくても、きっと治療の副作用に苦しんだ時間もあったでしょう。
「ゴー!ブラック、ゴー!ベイビー!」
それでもブラックは毎日散歩に出かけます。気が強く、食べ物がとられないように周りの犬たちを追い払ったり、他の犬にちょっかいを出したり。体の状態が悪いからと家に引っ込んでいるタイプではありません。
ブラックのドキュメンタリーも撮影されました。
前回の動画では語られなかったブラックの半生が紹介されます。注目されたことで、多くの事実が後で判明したのかもしれません。
10年以上鎖につながれたまま過ごしたあげくに捨てられ、交通事故にあって大ケガをし、半身不随になったようです。
多くの人がブラックの生きる姿勢に胸を打たれました。ブラックはタキス・シェルターの象徴的な存在になり、アニメやTシャツが作られて、多大な貢献をしたのです。集まった大きな金額で、シェルターの多くの犬や猫たちに避妊、去勢をほどこすことができました。
そればかりでなく、ブラックの力強いメッセージの元に動物愛護の精神が共有され、車椅子を使う人もブラックに励まされました。
「私は決してブラックを忘れません。彼は私のスーパーヒーローですから」
「彼は私の所に来て、あきらめず、そして最後まで幸せだったと信じています」
ブラックとタキスさんのハイタッチ。2人はしっかりと手を握り合います。
その後
施設に来て15ヵ月、巨大化した腫瘍から血がしたたるようになり、ついにいつもの散歩道を歩くことができなくなった時、タキスさんはブラックを苦痛から解放する時が来たと悟りました。
タキスさんの「へ―イ、ブラァーック、ブラヴォー、ブラヴォー!」という声や口笛と、ブラックの歩行器具が立てる軽やかな音が、やさしく耳に残ります。
気の強いブラックが自分らしく生きることのできた最後の1年3ヵ月をたたえ、どうぞ笑顔で動画をご覧ください。
ありがとうブラック!
小さなところからでいい、動物虐待を阻止しましょう。動物を飾り物にせず、本来の姿を愛しましょう。動物をむやみに繁殖させず、使い捨てにせず、最後まで努力して、そして看取りましょう。
動画を見ることは保護支援にもつながります。
ブラック、最後の散歩道
ブラック最後の散歩の様子を目にしたい方は、こちらでご覧いただけます。はれあがって血のにじむ病変は痛々しく、ブラックは明らかに衰弱していますが、芯の強さは変わりません。
「It’s time for him to rest. (休ませてあげる時が来ました)」急激に状態が悪化したブラックの痛みを和らげることができなくなり、ブラックはこの日、仲の良い猫たちが見守る中、医師により安楽死を迎えました。
「ブラック、安らかに」
※こちらの記事は動画配信をしているYouTubeチャンネルより許可を得て掲載しております。
掲載YouTubeチャンネル:Takis Shelter