怖がりペットのためのプログラム、次のターゲットはアニマルシェルター
アメリカで2016年にマーティン・ベッカー獣医師が立ち上げた『Fear Free(恐怖からの解放)』というプログラムは、ペットに関わる全ての人がペットが感じている不安やストレス、恐怖に正しく対処できるよう研修やセミナー、情報発信を実施しているものです。
このたび同プログラムがスタートしたのは、公営の動物保護施設やレスキューグループなどで働く人を対象にした研修プログラムです。
日本でもペットを迎える時に保護犬や保護猫を選択肢として考える人が増え、動物保護団体への寄付などにも関心を持つ人が増えてきました。しかし一般の人はどのような施設で動物がどのように扱われているのが適切なのかを知らないため、様々な問題が起こっていてもそれが問題であると認識されていない場合もあります。
今回ご紹介するのはアメリカのお話ですが、犬や猫が感じているストレスや恐怖がどれくらい慎重に扱われるべきかということを、日本の一般の飼い主さん達にも少しでも感じ取っていただければと思います。
動物保護に携わる全ての人を対象にしたプログラム
Fear Freeが新しくスタートしたこのプログラムはシェルター医学のスペシャリストと獣医学行動学者によって作成されました。アニマルシェルターなど動物保護施設にいる犬や猫は、たとえ完全に安全が確保されていても恐怖、不安、ストレス、欲求不満などを経験することが多いものです。そのようなネガティブな感情を軽減するために、科学的に設計された戦略、技術を伝えていくことがプログラムの目的です。
プログラムは犬や猫が施設に引き取られた時点から新しい家族の元に送り出されるまでの全ての段階をカバーしています。全ての段階は人間の目から見れば動物のためにしていることでも、犬や猫からすれば未知の経験の連続で不安と恐怖を感じがちなので、適切な対応方法をトレーニングすることが重要なのです。
プログラムの対象となるのは、施設の犬舎や猫舎で働くスタッフ、動物の行動を査定したり管理するスタッフ、施設の受付で働くスタッフ、ボランティア、家庭での預かりボランティアなど、レスキューや保護に関わる全ての人たちです。
プログラムは、保護された犬や猫が精神的な健康を保つために、そこに関わる全ての人間が認識しておかなくてはならない以下のことにポイントをおいています。
- 保護された犬や猫がどのように感じているか
- 動物はどのように学習していくか
- 恐怖のないコミュニケーションと取り扱いの基本
「命がつながればいい」というものではない
日本の公営の動物愛護センターも以前に比べると設備も良くなり、職員の皆さんのご尽力も伝わるようになってきました。私設の保護団体も増え、寄付などを考える人も増えている印象です。保護犬や保護猫の譲渡率も上昇しており、喜ばしいことだと思います。
一方であまり変化していないのが、一般の人々の認識です。保護施設に入って殺処分の対象にならなければそれで問題が解決したわけではないのですが「命がつながって良かった!」とそこで認識が止まってしまう例が非常に多いようです。一般の人々も保護動物の適切な扱い方を知るべきと言っているのはありません。
ここで紹介したプログラムのようなものがあると知ることで、シェルター施設や団体に保護されている犬や猫の扱いには適切なものと不適切なものがあるということ、犬や猫が持つ感情も大切であること、そういうシンプルなことが多くの人に伝わればいいなと思います。
まとめ
アメリカで始まったばかりの、アニマルシェルターやレスキューに携わる全ての人を対象にした、保護された犬や猫のストレスや恐怖を軽減するための研修プログラムについてご紹介しました。
保護された犬や猫が、新しい家族の元に行くまでの間にどのように過ごしたかは、その後の動物と家族の生活に大きく影響することです。
外国の事例を知ることで、犬や猫の不安や恐怖を軽視しない流れが大きくなっていって欲しいと思います。
《参考URL》
https://fearfreeshelters.com/about/
https://wanchan.jp/osusume/detail/13696