犬の訓練士とドッグトレーナーの違い①『家庭犬と使役犬』
犬の訓練士とドッグトレーナーの違いをご紹介するうえで、犬には2つのタイプがあります。
ひとつは、私たちと一緒に暮らしている「家庭犬」、いわゆる、一般的に「ペット」と呼ばれる犬です。
もうひとつは、警察犬・盲導犬・麻薬探知犬・災害救助犬・介助犬などの「使役犬」です。
家庭犬を相手に働くのか、使役犬を相手に働くのか、それが、犬の訓練士とドッグトレーナーとの違いです。どちらの犬を、どちらの職業の方が取り扱っているのか、お分かりになるでしょうか。
家庭犬のしつけを行うのが「ドッグトレーナー」です
ドッグトレーナーは、飼い主からの依頼を受け、家庭犬のしつけを行います。犬の安全を守り、快適な暮らしを送り続けるために必要な、待て・来い・お座り・伏せ・止まれ・放せなどの基本的なしつけを行います。
また、飛びかかる・噛みつく・無駄吠えなどの問題行動のある犬に対し、その問題行動を改善するためのしつけも行います。しつけを行う犬だけではなく、その飼い主との信頼関係を築くことやコミュニケーションをとることも大事な仕事です。
時には、間違ったしつけを行っていたり、良くない接し方をしている飼い主に対し、指導やアドバイスを行うこともあります。犬にしつけを行うことの大切さや、飼い主としての役割を、しっかりと理解してもらうためです。
ただ単純に、ドッグトレーナーに任せておけば良い、ということではないのです。飼い主の、飼い主としての意識が最も重要であるため、ドッグトレーナーは、飼い主の言動や行動など、愛犬との接し方をよく観察しています。
使役犬のしつけを行うのが「犬の訓練士」です
たとえば、犬の訓練士の中には、「警察犬訓練士」という方がいます。警察犬を育てるために、欠かすことのできない存在です。
事件現場にいち早く駆けつけるため、犬にも訓練士にも体力と精神力が問われます。そのため、犬の訓練を行うというよりは、犬と訓練士が共に過ごし、お互いを高め合う、といった感じでしょうか。
共に生活をするため、訓練を行うだけではなく、犬舎の掃除・トイレや食事のお世話・ブラッシングなどのケアも仕事のひとつです。
警察犬には、警察機関直属であり、警視庁や県警で管理と育成が行われている「直轄警察犬」がいます。直轄警察犬の訓練を行う訓練士は、担当部署の警察官になる必要があります。
そして、警察犬にはもうひとつ、「嘱託警察犬」がいます。委託された訓練機関で管理と育成が行われており、民間で訓練されています。名誉ある嘱託警察犬として任命される犬もおり、管理は訓練所で行われます。警察からの出動要請によって、担当訓練士と共に、捜査に協力します。
その他にも、犬の訓練士には、災害救助犬訓練士・盲導犬訓練士・介助犬訓練士・麻薬探知犬訓練士などがあります。
犬の訓練士とドッグトレーナーの違い②『犬に教える内容と犬との関係性』
ドッグトレーナーの場合
ドッグトレーナーが犬に教える内容は、「人間社会で暮らしていくためのマナー」です。そのため、ドッグトレーナーと犬とが親子のような関係性を持ち、親のような気持ちで犬に接し、しつけを行います。まるで、人間の親子のような関係性です。親が子供を教育するようなイメージです。
犬の訓練士の場合
犬の訓練士が犬に教える内容は、「仕事」です。犬の訓練士が上司、犬が部下、というような関係性を持ちます。
たとえば、盲導犬訓練士になるために必要なことは、「国家公安委員会から指定を受けた盲導犬育成団体で研修を受け、盲導犬訓練士として必要な資質や知識を持っている、と認定される」ということです。国家資格などはありません。
盲導犬訓練士は、犬を盲導犬として育てることだけが仕事内容ではありません。視覚障がい者の体験歩行を行ったり、盲導犬と暮らすユーザーのフォローを行ったりもします。
まとめ
- 家庭犬のしつけを行うのが「ドッグトレーナー」
- 使役犬の訓練を行うのが「犬の訓練士」
これが、犬の訓練士とドッグトレーナーの主な違いです。犬の訓練士の場合、どういった使役犬の訓練を行うのかによって、仕事内容は大きく違ってくるでしょう。共通していることは、優れた身体能力と精神力を必要とする仕事であるということだと思います。