保護センターに収容されていたお婆ちゃん犬
そのお婆ちゃん犬は、住宅街を放浪していたらしく、警察署に保護され、その後保護センターに収容されました。保護されたとき、首輪をしていましたが、飼い主が分かるようなものは何もなかったのです。
首輪に住所や名前の記入はなく、鑑札も付いていませんでした。暫く街を放浪していたのでしょう。体は痩せていました。保護センターでは、天気のいい日は日光浴をしたり、散歩をしたりと元気に過ごしていました。
ただ、収容されて半年もすると、少しずつ認知症の症状がでてきていたのです。それから、まだまだ元気に走ったり歩いたりはできますが後ろ足の力が徐々に衰えてきてもいるようでした。それでも、毎日元気に過ごしていたのです。
我が家に引き取るまで
認知症の症状が出てきているとは言え、センターでの日々の生活で大変な事はありませんでした。ただ確実にこれから症状は進んでくるし、いずれ足に力が入らなくなり寝たきりの状態になるかもしれません。そうなれば保護センターでのお世話には限界があります。
そこでまだ元気に歩き回ったり、走ったりしているうちに、我が家で引き取って残された余生を過ごしてもらおうと思いました。また、少しずつ介護も必要になるだろうから、家庭犬として最後まで過ごしてもらうために、我が家に引き取ったのです。
引き取ってからの生活
推定年齢しか分かりませんが、お婆ちゃん犬から育てるのは初めてでしたので、何もかもが試行錯誤の毎日でした。
まず、天気がいい日はベランダで過ごしていましたが、夜は安全のためにケージの中で寝ていました。そのケージには、立ち上がる時に力が入りやすいように、柔らかいクッション材を敷いていました。少しでも長く自分の足で歩いてもらいたいので、短時間の散歩を時間があるときは、一日何度も行きました。
我が家には先住犬がいましたので、昼間は一緒に遊ばせていました。若い犬達と一緒にいると、刺激があっていいようです。攻撃性が全くなかったので、毎日一緒に過ごしていました。
ただ、半年くらい経つと、認知症の症状が強くなってきて、夜中に起きだして部屋の中をグルグル回りだしたり、時々奇声を発したりしました。それでも、1~2時間くらいすると、また静かに寝てしまう毎日です。夜泣きがひどくなる時はありませんでしたので、近所迷惑にはならなかったと思います。
そしてだんだんと後ろ脚に力が入らなくなり、とうとう寝たきりになってしまいました。でも、逆にそうなると夜中に起きたり、奇声を上げたりしなくなっていったので、少し楽になったのです。寝たきりになってからは、歩けないだけで体は自分で起き上がれますので、バスタオルをお腹に回し支えにして、庭を歩かせていました。
それ以上足の筋肉が落ちないようにと、見ていると自分で歩きたがっていましたので、散歩には行けないまでも一日数回歩かせていました。食欲はそれ程落ちることなく、毎日完食していました。
まとめ
老犬の引き取りと、介護は初めての経験です。何をどうしていいのか、最初は分かりませんでしたが、毎日向き合っていると、少しずつ理解できてきました。保護犬だけでなく、すでに高齢の犬がいる家庭もあるでしょう。
人と同じように介護は大変な事が多いですが、そんな中で時々シャンプーをすると、気持ちよさそうな顔を見せてくれたり、よろめきながらも自分の足で一生懸命に歩こうとしている姿を見ていると、うれしく思えます。
もちろん、一人ではとても大変な時もありますので、そういう時は家族で協力するとか、老犬施設で短時間だけでも預かってもらって少し息抜きも必要だと思います。何かの縁があって家庭に迎えた犬ですので最後までお世話をしてほしいと思います。