犬の口臭が気になる!どうすればいい?
愛犬が嬉しそうに駆け寄ってきて、顔をなめてくれるのは飼い主にとって喜ばしいことではありますが、犬の口臭に思わず顔をしかめてしまったことのある方も中にはいるのではないでしょうか。
ペット用品会社が行った調査によると、愛犬の口臭が気になるという飼い主は全体の約4割にも上ります。通常、健康な犬であれば、寝起きや空腹時などにやや口が臭うことはありますが常に気になるほど口臭が生じることはありません。
したがって、もしこれまで気にならなかった口臭が急に気になるようになった場合は、何らかの病気や口内のトラブルのサインである可能性もあります。
では、口臭の原因にはいったいどんなものがあるのでしょう。飼い主が日常的にできる口臭ケアや便利なグッズなども含めて紹介していきます。
犬の口臭の原因
犬の口臭の原因としては、主に口の中のトラブル、内臓系の病気、フードの劣化などが挙げられます。また、原因によって口臭の質も微妙に異なるようです。
口の中が乾燥している
水をあまり飲まない犬は、口の中が乾燥して唾液がネバネバした状態になり、魚のような生臭い口臭が発生することがあります。
また、鼻炎で鼻が詰まっている時や暑い季節など、口で息をすることが多い場合も口の中が乾いて口臭が発生しやすいです。さらに、加齢とともに分泌される唾液の量が徐々に減ってくると、口の中が乾燥して徐々に口臭が強くなってきます。
歯周病や口腔内疾患
犬の歯に溜まった歯垢や歯石が原因で歯周病を発症すると、ドブ臭いような口臭がしてきます。また、歯茎の炎症により膿が出て腐ったような臭いがしたり、さらに歯周病が進行すると口臭だけではなく歯肉の腫れや出血なども見られます。
このような状態になると、犬は口の中の痛みや違和感から食欲がなくなったり食べこぼしが多くなったりすることもあります。
一方、口腔内疾患としては口の中にできる腫瘍が挙げられます。腫瘍には良性のものと悪性のものがあり、良性の腫瘍としては歯肉腫や乳糖腫などがありますが、この場合は周囲の組織にそれほど悪い影響はありません。
ただし、悪性黒色腫(メラノーマ)や扁平上皮癌、繊維肉腫などに代表される悪性腫瘍ができた場合は、粘膜、歯肉、骨組織などが損傷を受けて腐敗臭のような口臭が発生します。
さらに、腫瘍ができると口臭以外にも全身の状態が悪化したり、よだれがひどくなったりすることもあるでしょう。ちなみに、このように犬の口の中に歯周病や腫瘍があると、一般的に「鉄臭い」と言われる口臭が生じることもあるようです。
内臓の病気
内臓の病気が口臭の原因である場合、どの臓器の病気かによって口臭の質も異なります。
腎臓・肝臓の病気
腎臓や肝臓に何らかの病気があり、その機能が低下すると体外に排出されるはずの不要な老廃物が毒素として体内に蓄積されるため、犬の口からアンモニアのような口臭が発生します。
また、腎臓や肝臓の病気は早期では目立った症状がないため、犬の口臭に気づくころには病気がかなり進行している場合もあるでしょう。
腸の病気
重度の便秘や腸閉塞、腸捻転(腸がねじれる病気)などにかかっていると、うんちの臭いような口臭が発生することがあります。特に腸閉塞や腸捻転の場合、口臭以外にも強い腹痛があり、全身がぐったりとするなどの症状が見られます。
また、うんちのようなものを嘔吐することもあるでしょう。犬の腸閉塞の原因としては、重積(腸管の一部が肛門側の腸管に入り込み腸が閉塞する病気)、腫瘍、異物などが挙げられます。
これらの病気は、愛犬の命に関わる危険な病気ですので、疑われる場合はすぐに動物病院を受診しましょう。
胃炎や胃酸過多
胃の調子が悪い時や胃炎にかかっている時は、胃酸過多となり酸っぱい臭いの口臭が発生することがあるでしょう。
胃炎には「急性」のものと「慢性」のものがあり、急性の場合は、感染症や異物・毒物・刺激物など、慢性の場合は、アレルギー・不耐性食品・長期的に服用している薬剤など様々な原因が挙げられます。
また、空腹時間が長い場合にも胃酸が多く分泌されて口臭を引き起こします。
消化不良や腸内環境の乱れ
フードが犬の体質に合っていなかったり、フードの種類を急に変えたりすると消化不良が起こり、消化しきれていないフードの臭いが口から出ることがあります。
さらに、体調が悪く腸内環境が乱れているときにも、消化不良が起こりやすく口臭が発生しやすいでしょう。
また消化不良が起きると、胃の中で消化しきれなかったたんぱく質などが大腸まで運ばれて硫化水素が発生し、硫黄臭いおならが出ることもあります。
糖尿病
犬が糖尿病にかかっていると、甘い臭いの口臭がすることがあります。
糖尿病は、糖分の吸収を促すインスリンが体内で十分に産生されなかったり、産生されたインスリンが何らかの原因により体内で上手く機能しなかったりすることが原因で、エネルギー源である糖分を十分に細胞内に取り込むことができなくなる病気です。
糖分からエネルギーを十分に取り込むことができないと、代わりのエネルギー源として脂肪が分解されるようになり、この過程で「アセトン」という甘い臭いのする物質が作られます。
これが犬の口臭として臭ったり、さらに尿に含まれて排出されたりするのです。糖尿病の症状としては、口臭の他に多飲多尿や体重減少なども挙げられます。
乳歯の生え変わり
犬が生後4~6カ月頃には、徐々に乳歯が抜けて永久歯に生え変わっていきますが、乳歯が抜けた際の出血や血に混じった雑菌などが原因で、一時的に口臭が発生することがあるでしょう。
こうした歯の生え変わりの時期には、歯茎がむず痒かったり違和感を感じたりするため、犬はいろいろなものを噛みたがるようになります。
食べ物の影響
脂っぽい食べ物や消化に良くない食べ物を多く食べていると、胃腸に負担がかかり口臭が発生することがあります。また、与えているドッグフードが傷んでいると口の中に残った食べかすが、口臭の元となることもあるでしょう。
傷んだフードは下痢や腹痛、嘔吐を引き起こすこともあるため、しっかりと密閉保管するなどしてフードの酸化や劣化を防ぐことが重要です。
運動不足
運動量が足りていないと新陳代謝が低下して、体の中に不要な物質が溜まり口臭が生じることがあります。
犬の口臭を予防・改善するケア方法
口臭の予防法や改善策は、その原因や予防の目的によっても異なり、自宅で簡単にできるものから病院で施術を受けなければならないものまで様々です。
では、さっそくケアの目的別にその方法をみてみましょう。
歯周病や口腔内疾患の予防
口臭の原因として、最も多いと言われる歯周病を予防するには、毎日の歯磨きが最も有効です。しかし、歯磨きを苦手とする犬も比較的多く、歯磨きが上手にできるようになるにはやや時間もかかります。
そんなときは、歯磨きに慣れるまで歯磨きガムや歯磨きペースト、歯磨きシートなど様々な市販のデンタルケアグッズを併用するのがおすすめです。
ただし、歯磨き以外のデンタルケアグッズでは、それほど効果的に歯石や歯垢を取り除くことはできません。日常的なメインのケアはあくまで歯磨きとして、デンタルケアグッズは歯石・口臭ケアのサポートとして利用するようにしましょう。
また歯周病を予防するには、動物病院で定期的に口腔内検査を受け、歯石を取ってもらうことも重要です。歯石除去を受ける際に、すでに歯周病が進んでいる場合は、炎症のため外科的な処置が必要になったり、歯がぐらついていれば抜歯したりしなければならないこともあるでしょう。
歯石除去の料金は病院によっても幅があり、犬のサイズ別に料金を設定していたり、麻酔の有無や抜歯の有無によっても異なったりますが、2万~4万円くらいが平均的なようです。
一方、このように歯磨きを習慣化してこまめに口の中をチェックしたり定期的に口腔内検査を受けたりすることで、腫瘍などの口腔内疾患を早期に見つけ病気の進行を防ぐこともできるでしょう。
ちなみに、口腔内腫瘍が見つかった場合は外科手術で切除しなければならないことが多く、また腫瘍の切除後は放射線治療を行ったり化学療法を併用したりする場合もあります。
腸内環境の改善
消化不良が口臭の原因と考えられる場合は、対策としてヨーグルトや乳酸菌サプリなどで腸内環境の改善を図ることが挙げられます。
ヨーグルトに含まれる乳酸菌は腸内の善玉菌を増やし悪玉菌の増殖を防いでくれるため、腸内環境の改善には非常に効果的とされています。
口内環境の改善
水をあまり飲まない犬で口の中が乾燥しがちな場合は、十分に水分を取らせるよう心がけましょう。
特に夏場は口の中が乾きやすいため、水を十分に飲んでいるか、室内が快適な温度かどうかなどもこまめにチェックすることが大切です。
また、食後に口の中に残った食べカスが口臭の原因となることもあるため、食べた後は水を飲ませて食べカスを洗い流すようにしましょう。
現在では、口臭ケアのサポートとして利用できる以下のような様々なデンタルケア商品が市販されています。
- 口腔内の善玉菌を増やすサプリメント
- 舐めるだけの歯磨きペースト
- 水で薄めて飲ませる洗口液
- 歯垢を分解する酵素の入ったふりかけ
- 善玉菌入りの口臭スプレー
- 歯垢や歯石が付きにくくなるフード
どれも飼い主が比較的簡単に利用できるものばかりですので、歯磨きが苦手な犬にはもちろん、忙しくて歯磨きの時間が取れないときなどに活用するとよいでしょう。
運動不足・ストレスの解消
運動不足やストレスによっても口臭がキツくなることがあります。新陳代謝の改善やストレス解消のためにも、普段から十分に散歩をさせ、愛犬と遊ぶ時間もしっかりと取るように心がけましょう。
犬の口臭ケアにおすすめのグッズ
様々な効果や特徴を持つデンタルケアグッズが多く市販されている中、飼い主としてはどれを選ぶべきか迷う方も多いかもしれません。
ここでは歯磨きの最初の練習として、あるいは時間がない時に歯磨きの代わりとしても利用できるおすすめの口臭ケアグッズを紹介します。
ドギーマンハヤシ 無添加良品アキレススティック
良質な鳥すじ肉のみを使用した人気の歯磨きガムで、保存料や着色料などの添加物は一切使用されていないため、安心して愛犬に与えられます。
鳥すじ肉のみのシンプルな原材料なため、口内環境や消臭などに効果のあるプラスアルファの成分を求めている場合はやや物足りないかもしれませんが、筋が多く長くかみ続けることができるため唾液による口内の洗浄効果は十分に得られるでしょう。
超小型から大型の成犬を対象としていますが、一本の長さは5~15cmほどで比較的小型犬に適しているようです。また、硬さがちょうどよく愛犬の食いつきもよいといった口コミが多く見られます。
やや小さくなってふやけてくると丸飲みできてしまうため、飼い主の目の届くところで食べさせるようにしましょう。
オーラティーン デンタルジェル
ブラシを使わず、指に付けて歯や歯茎に塗ったりするだけでも良い歯磨きなので、初心者におすすめの歯磨きジェルです。
酵素が含まれており歯垢の予防効果や殺菌効果が期待できます。キシリトールやアルコールなども含まれておらず安心して使用できるでしょう。
インテリジェント 唾液の自浄酵素入り猫犬用歯磨き粉
犬の唾液にはデンプンを分解できる酵素が含まれていないため、歯石が付きやすい口内環境となっています。
一方、このINTELLIGENTにはデンプンを分解するアミラーゼという酵素が含まれているため、歯石が付きにくくなる効果を期待できるでしょう。
さらに、ラクトフェリンをはじめ細菌の増殖を抑える効果や殺菌効果のある酵素が数種類入っているとともに、人工香料やキシリトールは無添加ですので安心して使用することができます。
微かに甘みのある低刺激な味の歯磨きペーストで、強目のフレーバーが苦手な犬にもおすすめです。
プロバイオミスト
280種類もの天然由来の善玉菌を含むアルカリイオン水を原材料とした口臭ケアスプレーで、口内環境と腸内環境両方の改善効果が期待できます。スプレーを嫌がる犬の場合は飲み水に混ぜて飲ませることも可能です。
忙しくて歯磨きの時間が取れないときなどはこのスプレーのみで簡単に口臭ケアでき、さらに歯磨きと併用すればより高い効果が得られるでしょう。
コノコトトモニ このこのふりかけ 犬用 口臭 サプリ
口内環境に良い影響を与える乳酸菌やなた豆、ポリグルタミン酸やグロビゲンPGなどの天然由来の成分が入った、ふりかけタイプのサプリメントです。いつも与えているフードに振りかけたり、あるいはおやつ代わりにふりかけのみを与えてもよいでしょう。
添加物は一切使われておらず、カロリーも低いため毎日でも安心して与えることができます。また、たまごボーロのような優しい風味で犬の食いつきがよくなったという口コミも多いようです。
マインドアップ 犬口ケア歯ブラシ
ヘッド部分が非常に小さい小型犬用の歯ブラシです。ブラシ部分が柔らかいため、歯周病で歯茎が弱っている犬に適しています。
ただし、ブラシ部分がソフトでつぶれやすいため、歯ブラシに慣れておらずブラシを噛んでしまうような犬には向かないかもしれません。
小型犬は口が小さく人間の指では奥まで届かないこともあるため、ある程度口に触られることに慣れてきたら、こうした小型犬用の歯ブラシに切り替えてあげるとよいでしょう。
Hartz デンタル ティーザー
噛むことで歯磨き効果を得られる、獣医師と共同開発された歯磨きおもちゃです。小型犬用の小さいサイズと中・大型犬用の大きいサイズがあり、フレーバーもイチゴやブドウ、ベーコンなどから選ぶことができます。
犬によって好みは分かれますが、子犬の乳歯が生え変わる時期などには最適です。嚙み過ぎると突起部分が取れてきて誤飲の可能性もあるため、飼い主の目の届くところで噛ませるようにしましょう。
犬の口臭ケアを行う時の注意点
愛犬が健康的に長生きするためにも、歯磨きをはじめとする口臭ケアはとても大切ですが、場合によっては犬のストレスとなったり、害になったりすることもあるため、口臭ケアを行う際は以下のようなことに注意しましょう。
犬が嫌がることはしない
歯周病を予防するには毎日の歯磨きを習慣づけることが非常に大切ですが、愛犬が嫌がることを無理強いするとかえって歯磨き嫌いになってしまい、愛犬のストレスとなってしまう場合もあります。
また、たとえ歯磨きに慣れている犬であっても、あまり長時間の歯磨きは苦痛に感じる場合もあるでしょう。したがって、歯磨きをする際は犬の様子を見ながら、極力負担をかけないで行うように心がける必要があります。
また、歯磨き以外の歯磨きシートやサプリなどであっても、愛犬が好きではないものは極力使わず、愛犬が楽しめるケア方法が他にないか探ってみるとよいでしょう。
デンタルグッズは適切な使用法を守って使用すること
口臭ケアのグッズを使用する際は使用方法や注意事項などをきちんと読んだうえで適切な使い方をしましょう。
また、誤って多量に摂取すると害になるものもありますので、これらのケアグッズは犬の見えないところにきちんとしまっておく必要があります。
万が一グッズを使用して愛犬に何らかの異常が見られた場合は、自分で判断せずできるだけ早く獣医師の診察を受けましょう。
まとめ
犬の口臭は多くの場合、歯周病をはじめとする何らかの口の中のトラブルに起因することが多いですが、中には命に関わる別の病気のサインである場合もあるため、気になる場合は放置せず動物病院でしっかりと診察してもらうことも大切です。
また、口臭や歯石を予防するための様々なグッズが市販されていますが、歯石や歯周病を予防するのに最も効果的なのは日頃の歯磨きであり、病院で受ける定期的な歯石取りとなります。
手間や費用はかかりますが、他のケアグッズも上手に利用しながらしっかりと歯磨きの習慣を継続し、定期的に動物病院で歯石除去を受けるよう努めましょう。