犬を洗う前の準備
犬に負担をかけない効率的な犬の洗い方を実践するには、事前の周到な準備が欠かせません。犬を洗う際は、ドライヤーの工程までスムーズに進められるよう以下のものを用意しておきましょう。
用意するもの
- タオル
- ブラシ
- シャンプーとリンス/トリートメント
- ドライヤー
- ペット用バスタブ
タオル
犬の体の大きさに合わせて十分な枚数を用意しておきましょう。体を拭くには吸水性の高いマイクロファイバータオル、滑り止め用に床に敷くにはコットンタオルがおすすめです。
タオルは、洗い終わったらすぐに水気を拭き取ることができるよう洗い場からすぐ手の届くところに用意し、ドライヤーをかける場所にはタオルを敷いておきます。また、浴室で犬を洗う場合は犬が滑らないよう浴室の床にもタオルを敷いておきましょう。
ブラシ
スリッカーブラシやコームなどを用意しておきます。
シャンプーとリンス/トリートメント
シャンプーとリンスまたはトリートメントも洗い場からすぐに手の届くところに用意しておきます。シャンプーとリンスまたはトリートメントは犬用のものを使用しましょう。
皮膚病などの持病がある場合は獣医師にも相談の上、症状を改善できるような薬用シャンプーを、特に皮膚に問題がなければきれいな毛並みに仕上がるような美容シャンプーを選ぶとよいです。
より刺激の少ないものを選ぶのであれば、アミノ酸系のシャンプーがおすすめです。また、無着色・無香料のものの方がより安全でしょう。
ちなみに、犬用シャンプーの多くは雑貨として販売されており、成分の表示義務がないため一部の有効成分しか記載されていないものもあれば、すべての成分が記載されているものもあります。
さらに、中には化粧品としての販売許可をきちんと得た比較的信頼できる商品もあります。どのシャンプーを選ぶかは犬の状態によって異なるため、しっかりとその表示内容を確認した上で最適なものを選ぶようにしましょう。
さらに、シャンプーの中にはリンスまたはトリートメントが一緒になった「リンスインシャンプー」や「トリートメントインシャンプー」もありますが、こうした商品はあまりおすすめできません。
シャンプーとリンスまたはトリートメントが一緒に配合されていると、互いに効果を打ち消し合ってそれぞれの効果が減弱してしまう可能性もあるためです。したがって、できる限りシャンプーとは別にリンスまたはトリートメントを用意することをおすすめします。
ドライヤー
人間用のドライヤーでも犬の毛を乾かすことはできますが、できれば犬用のドライヤーがあると便利でしょう。人間用のドライヤーは温度が高すぎたり犬の毛が入り込んで故障の原因となったりするなどの難点もあるためです。
犬用のドライヤーには風量が大きいものやハンズフリーで使えるスタンド型のもの、あまり高温にならないよう設計されているものなど様々なタイプがあります。ですので、犬の大きさや被毛のタイプ、毛量に応じて使いやすいものをひとつ用意しておくとよいでしょう。
ペット用バスタブ
必ずしも必要ではありませんが、小型犬や中型犬用に様々なタイプのバスタブが市販されており、これを使うと動きが制限されるため比較的洗いやすいと言われています。特に、シャワーフックや水抜き栓などのついたものがおすすめです。
洗う前に準備しておくこと
初めて自宅で犬を洗う場合は、あらかじめ体の隅々に触れられることに慣れさせておくことが重要です。シャワーやドライヤーの音も事前に何回か聞かせて慣れさせておくと、初めて洗う際にも犬の恐怖心を軽減することができるでしょう。
犬を洗う際は、体を濡らす前に全身をブラッシングし、余計な抜け毛や埃を取り除いて毛玉などもほぐしておきます。ブラッシングの際は犬の皮膚に傷やできものがないか確認しておくことも大切です。
できたばかりの傷や膿み傷などに気づかずシャンプーすると、傷が悪化してしまう恐れがあります。さらに、犬を洗う際は濡れてもよい服装に着替えておきましょう。防水または撥水性のエプロンを着用するのもおすすめです。
犬の洗い方の手順
- 体を濡らす
- シャンプーで体を洗う
- シャンプーを洗い流す
- リンス/トリートメントを被毛に馴染ませてから洗い流す
- タオルで全身を拭く
- ドライヤーで全身を乾かす
①体を濡らす
お湯の温度は35~38度位が最適です。適温の範囲内でも夏場はやや低め、冬場はやや高めを心掛けるとよいでしょう。最初の手順として、シャワーをかける前にまず自分でお湯の温度がちょうどよいことを確認してください。
その後、「お湯かけるねー」など何かしら声をかけてからシャワーをかけ始めます。いきなり頭や顔から濡らすと嫌がりますので、最初はできるだけ頭から遠いお尻や後ろ足あたりから始め、徐々に頭側に移動していきましょう。
また、シャワーヘッドは犬の皮膚に密着させるように動かし、できるだけ水圧やシャワーの水がかかる音を犬が感じないようにして犬の恐怖心を抑えることがポイントです。
顔を濡らす際もシャワーヘッドを密着させたまま水圧を弱めにして頭や耳の後ろ側から静かに流すようにします。
②シャンプーで体を洗う
お湯で薄めるタイプのシャンプー剤は洗面器などであらかじめ薄めて泡立てておきます。そのまま使うタイプのシャンプー剤もスポンジや泡立てネットなどを使って泡立てておくと洗いやすいです。
シャンプーで洗う際は、濡らす時と同様お尻や後ろ足から始めて徐々に頭側へ移動していきます。洗う際は指の腹を使って肌を優しくマッサージするように洗うのがコツです。
ゴシゴシとこすり過ぎて皮膚に負担をかけないよう気を付けましょう。肉球の間にも汚れが溜まっていますので忘れずに洗ってください。
洗っている最中も「エライねー」、「おりこうだね」などとこまめに声をかけてあげると愛犬の恐怖心や緊張感もほぐれるでしょう。場合によってはちょこちょことおやつを与えるなどして気を逸らすのもひとつの方法です。
③シャンプーを洗い流す
]体をすすぐ際は顔周りから先に流していきます。すすぎの際もシャワーヘッドは体に密着させたまま優しく洗い流しましょう。
シャンプーのすすぎ残しがあると皮膚トラブルの原因にもなりますので、丁寧に洗い流します。特にわきの下や内股、肉球の間などはシャンプーが残りやすいため念入りにすすぎましょう。
④リンス/トリートメントを被毛に馴染ませてから洗い流す
リンスやトリートメントは、そのまま手に取って毛に馴染ませてから時間を置くタイプやお湯で薄めて使うタイプなど使用法も様々です。必ず各商品の使用法に従って使用しましょう。
お湯で薄めるタイプであれば、洗面器に入れて薄めたものをそのまま全身にかけて被毛に馴染ませます。リンスやトリートメントを被毛に馴染ませたら、シャンプーの場合と同様丁寧に全身をすすいでください。
⑤タオルで全身を拭く
リンスまたはトリートメントをきれいに洗い流し終えたら、犬に全身をブルブルさせてある程度水気を飛ばします。自分からブルブルしない場合は、犬の耳に息を吹きかけるとその刺激に反応してブルブルっと震えます。
その後乾いたタオルで全身を拭いてください。この際に十分に水気を拭き取っておくとドライヤーにあまり時間をかけずに済むため、十分な枚数のタオルを使ってしっかりと拭き取っておきます。
⑥ドライヤーで全身を乾かす
しっかりと水分を拭き取ったらドライヤーをかけます。一般的なL字型のドライヤーを使用する場合は、持ち手の部分を着ているTシャツやトレーナーの襟ぐりに引っ掛けてあごで固定するようにすると、ハンズフリーの状態で犬を保定しながら乾かすことができて便利です。
ドライヤーをかける際は温度が高すぎないことを確認してから、最初は弱風で始め、様子を見ながら慣れてきたら徐々に風量を強めていきましょう。また、ドライヤーは必ず犬の体から20~30cm程度離して使用します。
ドライヤーをかける順番は飼い主やトリマーによって様々なようですが、基本的に犬は顔にいきなり温風をかけられると嫌がるため、最初は顔から離れた背中やお尻あたりから始める方が無難かもしれません。
また、ドライヤーをかけられて嫌がる部位には個体差もあるため、愛犬の様子を見ながらできるだけストレスのかからない順番で乾かすよう心掛けます。ドライヤーで毛を乾かす際は、スリッカーブラシなどでブラッシングしながら毛の根元まで風を送るようにすると効率的です。
生渇きの状態だと細菌が増殖して皮膚トラブルの原因となる場合もありますので、しっかりと皮膚の表面まで乾かすようにしましょう。仕上げにコームで毛の流れを整えたら完了です。終わったら「頑張ったね」などと声をかけてご褒美のおやつなどをあげるようにしましょう。
犬が怖がらない顔周りの洗い方
水圧を弱めてシャワーヘッドを犬の体に密着させる
顔は体の中でも特に敏感な部位ですので、静かに優しく洗わないと犬が嫌がって暴れる場合があります。そのため、シャワーを使う場合は水圧を弱めにしてシャワーヘッドを密着させたまま頭の後ろや耳の後ろ側からお湯を流すようにします。
犬は鼻が濡れたり鼻に水が入ったりするのを嫌がるため、シャワーをかける際に鼻先を上に向けてシャワーヘッドをおでこのあたりに当ててお湯を流してもよいでしょう。
シャワーを使わずにスポンジやタオルで濡らす
シャワーを使わずにスポンジや小さめのタオルなどにお湯を含ませて濡らしていく方法もおすすめです。
この場合は、お湯をたっぷり含ませたスポンジまたはタオルを、おでこのあたりにつけたままお湯を絞るようにしてかけてあげると、顔の毛の根元までしっかりと濡らすことができます。
さらに、シャンプーで顔周りを洗う際はスポンジやネットなどで泡立てたシャンプーを毛に馴染ませるようにして洗いましょう。目の周りはやや洗いにくいですが、目ヤニが毛に絡まって取りづらくなっている部分はお湯でふやかしてから洗うと取りやすいです。
涙やけの部分はガーゼ指に巻いてそっと洗う
涙やけがある部分は指にガーゼを巻くなどして、シャンプーが目に入らないよう注意しながらそっと洗うとようにします。万が一目にシャンプーが入ってしまった場合は、放っておくと目のトラブルとなる場合もあるためすぐにしっかりと洗い流してください。
水が入らないように耳の穴を押さえながら洗う
顔周りを洗う際は耳の内側も重要なポイントです。垂れ耳の場合はもちろん、立ち耳でも散歩中に入った土埃や溜まった皮脂などで汚れているためしっかり洗いましょう。
耳をすすぐ際は、多少であれば水が中に入っても問題ありませんが、あまりたくさんの水が入ると外耳炎や中耳炎などの原因となる恐れがあります。このため、耳の中には極力水が入らないよう耳の穴を親指で押さえながらシャンプーを洗い流すようにしましょう。
また、全身をすすぎ終わったら、タオルドライの際にキッチンペーパーや小さめのタオルなどで耳の中も忘れずに拭いてください。
犬の洗い方で注意すること
小型犬を洗う際の注意点
チワワやトイプードルのような小型犬の場合、シャンプーで体を洗いドライヤーで体を乾かすというプロセスは体力的に大きな負担となります。特に子犬や高齢犬ではこの傾向が顕著となるため、愛犬を洗う際はできるだけ負担をかけず短時間で済ませるように心がけましょう。
さらに、持病があったり体調が悪かったりするときは無理にシャンプーをせず、蒸しタオルやシャンプータオルなどで全身を拭いてあげるような工夫も必要です。
また、小型犬の場合はシャンプーをする際のお湯の温度が体温に影響しやすく、高温すぎると皮膚に炎症が起きたり低温すぎると低体温症のになったりする恐れがあるため、お湯の温度には十分注意しましょう。
中型犬・大型犬を洗う際の注意点
ボーダーコリーやゴールデンレトリバーといったやや大きめの中型犬や大型犬の場合、体の表面積が大きいためシャンプーやドライヤーの際の飼い主の負担も大きくなります。
このため、シャンプーをする際は長時間中腰の状態で作業しなくて済むよう、ちょうどよい高さのイスを用意し、ドライヤーで乾かす際もイスを用意したりトリミングテーブルを使用したりするなどの工夫をするとよいでしょう。
ただし、トリミングテーブルを使用する場合は万が一犬が落ちても怪我をしないよう、低めの台を使用することをおすすめします。
水が嫌いな犬種の注意点
中には柴犬やビーグルのように全般的に水を苦手とする犬種もいます。こうした犬種の場合はあまり無理強いをせずに、慣れないうちはお湯で汚れを洗い流すだけにしたり、顔まわりのシャンプーは省略したりなど、できる範囲で清潔に保つような配慮をしましょう。
また、徐々に慣れさせるためにも、洗っている最中や洗った後は忘れずに誉めてあげることも必要です。焦らずに愛犬の様子を見ながら徐々にできることを増やしていくとよいでしょう。
外で洗う場合の注意点
犬を外で洗う場合、寒い季節は体が冷えすぎて体調を崩してしまったり、暑い季節は熱中症にかかったりする恐れがあるため、気温が極端に高かったり低かったりする時期の外でのシャンプーはおすすめできません。
室内で洗うことができないような環境で飼っている場合や外飼いの場合は、こまめにブラッシングをしたり蒸しタオルやシャンプータオルで体を拭くなどして、汚れを溜めすぎないよう日頃から心掛ける必要があります。
また、シャンプーをする場合はトリミングサロンを利用したり、飼い主が自分で犬を洗うことができるセルフウォッシュの設備が整った店舗を利用したりするのもおすすめです。
まとめ
犬にとっても飼い主にとっても初心者にはややハードルが高いシャンプー。ですが、犬がシャンプー嫌いにならないためにも、初めて自宅で犬を洗う際は事前にある程度の知識を備えたうえで、犬にできる限り余計な負担をかけないように洗ってあげることが大切です。
このため、犬の負担にならない洗い方や手順を把握するとともに、使用するシャンプーやトリートメントの安全性などもしっかり確認し、スムーズに洗って乾かすための道具をきちんと準備してからシャンプーを実践することをおすすめします。
犬のシャンプーは飼い主にとっては体力や手間が必要な作業ですが、犬にストレスを感じさせずに上手に洗うことができれば、愛犬との絆を深めることができる貴重な時間となるでしょう。