犬がキャットフードを食べてしまったら?
私たち人間は、健康維持のためどんな栄養素がどれだけ必要かの数値が具体的に示されています。その適正値どおりの食事をしている人は極めて少ないと思いますが、それでもそこそこ健康でいられています。
犬がキャットフードを食べた場合、健康維持のための栄養素がしっかり摂れているということにはなりませんが、すぐに何か悪影響があるわけでもありません。
しかし、犬と猫は全く別の生き物ですから、当然必要な栄養素も違ってきます。ちょっとだけつまみ食いをするくらいなら問題はありませんが、日常のご飯として犬にキャットフードを食べさせるのは、長期的に見ると栄養が偏って体調が悪くなる可能性があるので、やめた方がよいでしょう。
犬と猫の必要な栄養素の違い
栄養素とは「生命維持のために、体内に取り込むべき成分」のことです。栄養素は大きく5つから構成され、タンパク質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルがあります。
この5つの栄養素は犬も猫も必要な成分です。中でも特に重要なのがタンパク質・脂質・炭水化物でこの3つを三大栄養素と言われています。ここからはこの三大栄養素を中心に犬と猫の必要な栄養素の違いについて説明します。※1)
- タンパク質
- 脂質
- 炭水化物
- タウリン
- アルギニン
猫は人と暮らしてきましたが、肉食の暮らしを維持してきました。そのため犬よりも多くのタンパク質を必要とします。
脂質は猫よりも犬の方が多く必要としますが、それほど差はありません。
炭水化物は犬の方が多く必要としています。猫の食事に含まれる炭水化物が全体の45%に対して、犬は60%と大きく差があります。
タウリンは目の障害や心臓の疾患予防に必要な栄養素です。犬はアミノ酸からタウリンを作ることができますが、猫にはできません。そのため、猫は食事からタウリンを摂取する必要があります。
猫はエネルギーを産み出すためにタンパク質を常に消費し、その過程でアンモニアを発生させます。このアンモニアを分解する栄養素がアルギニンです。犬もアルギニンは必要ですが、猫のように常にタンパク質を消費しません。そのため猫ほどはアルギニンを必要としません。
※1)参照資料 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/petfood_guide/pdf/4.pdf
犬がキャットフードを食べることで起こるリスク
犬がキャットフードを食べても、少量なら問題はありません。ただし毎日食事替わりやおやつとして食べたり、一度に大量に食べたりすると身体に異変が現れます。
ここでは犬がキャットフードを日常的に食べた場合に起こるリスクについて、いくつか紹介します。
タンパク質の過剰摂取による結石
キャットフードはドッグフードに比べてタンパク質をたくさん含んでいます。そのため犬が日常的にキャットフードを食べていると、タンパク質の過剰摂取となり通常より多くのシュウ酸が発生します。
シュウ酸は基本的に体外へ排出されますが、過剰に作られたことで体内に余ったシュウ酸がカルシウムと結びつき、結石ができます。結石ができると排尿痛や排尿自体ができなくなることがあり尿毒症で死亡することもあります。
タウリンの過剰摂取による心筋症・免疫不全
猫はタウリンを体内で生成できないため、キャットフードにはタウリンが含まれています。タウリンが不足すると目や心臓に障害がでてしまいます。
一方、犬は体内でタウリンを生成できるため、キャットフードを食べると体内に使い切れないほどのタウリンが残ります。尿から排出もされますが、残ったタウリンが心筋症や免疫不全を引き起こすリスクがあります。
塩分の過剰摂取による腎臓疾患
1日に必要な塩分は犬が0.18gに対して猫は0.33gで、なんと1.8倍もの差があります(体重5㎏の場合)※2)。そのため、キャットフードはドッグフードよりも塩分が多めに作られてます。
犬がキャットフードを食べ過ぎると塩分過多になり、塩分中毒になり下痢・嘔吐といった症状を引き起こします。また腎臓や心臓にも負担がかかり、最悪の場合心不全となって死亡することもあります。
※2)参考資料 https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/poster08.pdf
栄養過多による肥満
キャットフードの方がドッグフードよりもタンパク質が多く含まれており、犬がキャットフードを日常的に食べるとカロリーの摂取しすぎとなります。
カロリーオーバーの状態が続くと肥満となり、心臓への負担も増えます。また、肥満が進行すると足腰の関節への負荷がかかり、さらに糖尿病のリスクも高まります。
ドッグフードを食べなくなる
これまで説明してきた通り、キャットフードの方が栄養価が高く塩分も多く含まれています。そのため、犬にとってキャットフードはとっても美味しいご飯と認識されてしまいます。
キャットフードに慣れてしまうと、ドッグフードが味気なく感じてしまい、もう食べなくなってしまうこともあります。一度偏食になると、元に戻すのは難しいものです。試しとはいえ意図的にキャットフードを与えるということはやめましょう。
犬にとってキャットフードが魅力的な理由
食いしん坊の犬は、そこに食べ物があると何でも食べ尽くしてしまいます。キャットフードはドッグフードよりも美味しくできていますので、目の前に置いてあれば当然食べるでしょう。
キャットフードは美味しい
猫と犬の体の大きさの違いはそれほどありません。エネルギーを必要とする量も大差がないことから、ペットフードメーカーのキャットフードの開発は、その重点が「味付け」の多様化に向かいました。
猫は食事に対して、好き嫌いがとても激しい動物と言われています。嫌いなものはお腹がどんなに減っていても、食べないことがよくあります。そこでペットフードメーカーは、嗜好性を高めることに努力を払い、味付けの異なる製品の開発が進められました。
ドッグフードも様々な味がありますが、キャットフードの種類は、それをはるかに上回っています。何でも食べてしまう犬と比べて、猫はなかなか食べてくれないので、より美味しくできているのです。
味には、甘味、酸味、苦味、塩味の4つの基本味と旨味がありますが、犬は甘味が大好きです。旨味の他、動物の内臓のような若干の苦味や適度な塩味、酸味も好みます。
犬にキャットフードの獣医療法食は食べさせてはいけない
獣医療法食は、病気や障害・症状を持つ犬や猫に対して、獣医師の指導により与えるフードです。
栄養過多による肥満や食物性アレルギーなどに対して、直接の効果が期待される「療法食」と、内科的、または外科的治療と並行して、症状の進行を緩和したり回復を早めたりする目的で与える「処方食」とに分かれます。
原料や栄養成分が調整されているので、健康な犬が食べると体調を壊す場合があるため、食べさせないようにしましょう
まとめ
犬がキャットフードを食べてしまっても、栄養素的な問題は余程食べ続けない限りないでしょう。しかし、それとは別に悪いことはあります。
犬と猫を一緒に飼っているお家の場合、猫のご飯を食べてしまう犬は、その時すでに自分のご飯は食べてしまっているはずです。猫はご飯を一気に食べずに、少しずつ食べます。犬はそれをいつも狙っているはずです。必要なご飯の量を食べた後にプラスして猫のご飯を食べるということは、つまり食べ過ぎになっています。
その結果待っているのは肥満です。肥満は様々な病気の原因になります。
飼い主さんが、犬や猫の食べるご飯をしっかり管理してあげることが重要です。人間は自分で体重管理ができますが、ペットはそれができません。犬がキャットフードを食べないように、食事管理はしっかりやりましょう。
ユーザーのコメント
女性 アール
というのも私の責任ですが、買った缶詰が猫用だったことに気付かず(笑)
どうりで食い付きが良かったはずです。
確かに缶を空けてとても美味しそうだなーと人間の私が思うぐらいですから、ワンコもぺろっと食べるはずです。シーチキンですよねあれは(笑)
で、確かに慌てました、犬が食べて大丈夫か??と。かかりつけの獣医さんに問い合わせたところ問題はないということで安心しました。
今回の場合は完全に私の責任ですが、ワンコとネコちゃんを一緒に飼っているおうちではお互いのフード(ネコちゃんはないかな?)を食べることは考えられますよね。
ネコちゃんのフードは量が少ない分、栄養素(カロリー)がかなり高めですし、味も濃いですからワンコには不向きです。
間違いぐらいであれば問題ないですが、ワンコがこれなら食べてくれるから~とキャットフードを与えるのは絶対に良くないと思います。
特に、ワンコとネコちゃんを一緒に飼っているお家は要注意ですね。