犬は噛む動物
犬はもともと「噛む」動物です。食事をする際はもちろん、じゃれあう際にも噛みつくことがあります。その習性を利用して犬に役割を与え、人間の仕事の手伝いをさせてきた歴史もあります。そのため犬種によって噛むことが強化されている犬もいます。もちろん同じ犬種でも個体によってその性格は異なりますが、同じ犬種であれば似た傾向を持ちます。
犬が噛みつくと、人間は思わぬ大けがをしてしまうこともあるため、噛みつく犬は「危険な犬」だとみなされてしまうことが多くあります。また、犬が「突然」噛んだなんていう人がいますが、実際には犬の習性を知らないがために犬が噛む前に見せるサインを見逃していた、なんてことがほとんどです。
犬が噛みつく習性を知って噛まれないように人間が気を付けること、人間と暮らす上で犬が噛まないようにしつけること。これらは私たち人間が意識していきたいですよね。
犬種ごとの噛みグセの傾向
個体によっても噛むことに対する傾向は異なりますが、大きく分けると犬種によって似た傾向を持ちます。今回は犬種ごとにその噛みつきの傾向をみてみましょう。
小型犬/愛玩犬
代表的な犬種
- チワワ
- シーズー
- トイプードル
- ポメラニアン
- ヨークシャテリア
- パピヨン
- フレンチブルドッグ
愛玩犬とも呼ばれるコンパニオンドックの多くは、その多くが室内で飼育される小型犬です。これらの愛玩犬は基本的には友好な性格が多いといわれますが、中には自分の居場所を守るために警戒心が強い傾向の犬種もいます。
愛玩犬は飼い主と触れ合うことが何よりの喜びとなる犬種が多いですが、それらが不足していたり、社会化が不足している場合も見知らぬ相手への警戒心が高まります。そのため来客や見知らぬ相手へ噛みつくといった場合があります。これらは不安や恐怖、自分のテリトリーを守ろうとするがための噛みつきだと考えられます。
愛玩犬だからといって、友好的だとは限りません。 子犬の頃から社会と接する機会を作り、安心できる居場所を与えてあげましょう。
狩猟犬
代表的な犬種
- ラブラドールレトリーバー
- ゴールデンレトリーバー
- セッター
- ポインター
- アメリカンコッカースパニエル
- ダックスフンド
- プードル
- ビーグル
人間のパートナーとして、狩猟の手伝いをする役割を与えられてきた狩猟犬。獲物を追いかける、獲物の場所を知らせる、獲物を回収するなどといったように狩猟の内容によっても細かく役割が与えられてきました。基本的にはチームで働くため、協調性が高く、友好的だといわれます。
しかし、獲物を回収するような役割を与えられてきたレトリーバー系の犬種は、甘噛みなどのイタズラが多い場合があります。これらは習性の一つでもあるため、噛んだら離すといったトレーニングを意識的にするようにしましょう。
牧畜犬、牧羊犬
代表的な犬種
- コーギー
- コリー
- シェットランドシープドッグ
- ジャーマンシェパード
- マスティフ
牧畜犬や牧羊犬も人間のパートナーとして、牛や羊のお世話の手伝いをしてきました。家畜を追いかけたり吠えることで誘導、外敵には噛みついて家畜を守る働きをしてきました。そのため動くものを追いかける性質を持つため、走る子供や走る小動物、自転車等を見かけると追いかけてしまう可能性があります。また、習性で吠えかかったり、噛みついたりといったことも考えられます。
普段から運動をさせてストレスを発散させること、追いかけても良いものと悪いものをきちんとしつける必要があります。
テリア種
代表的な犬種
- ジャック・ラッセル・テリア
- スコティッシュ・テリア
- ケアーン・テリア
- ノーフォーク・テリア
テリア種と呼ばれる犬種は小動物を追いかけることで、人間の手伝いをしてきた犬種です。そのため動くものに対して反応し、興奮して追いかけ、口にくわえるといった習性があります。子犬の頃に甘噛みが許されてしまうと、成犬になっても癖が抜けないため、甘噛みの段階でしっかりとしつけを行いましょう。
日本犬
代表的な犬種
- 秋田犬
- 甲斐犬
- 紀州犬
- 柴犬
- 四国犬
- 北海道犬
日本犬は猟犬として活躍してきましたが、欧米の猟犬とは異なり、チームでの狩りではなく飼い主と1対1での狩りをしてきました。そのため飼い主には忠実ですが、見知らぬ相手へは強い警戒心を持ちます。警戒心で噛みつくことは十分に考えられるため、むやみやたらと手を出すことはやめましょう。また、日本犬を飼育する際は、飼い主がしっかりとした知識を身に着け、人間や他の犬と関わる上での社会化を促してあげましょう。
対策
犬はもともと噛む動物です。そのために牙を持ち、攻撃をする際は噛むという習性を見せます。まずは犬が噛むのは自然の行為であることを理解しましょう。そのうえで、人間社会で暮らすためのトレーニングが必要です。犬が噛みつかないようにしつけることは、犬を飼育する人間の義務でもあるのです。
子犬の甘噛みだからといって許すことも、成犬になった時の噛み癖を助長します。子犬の時は許されたことが、成犬になって突然禁止になっても犬には理解ができません。
また、ほとんどの場合、犬は噛みつく前にサインを出します。「唸る」「吠える」「鼻を舐めている」「尻尾を高く上げる」これらの警戒しているサインが出ている場合、むやみに近づかないようにしましょう。犬も不安や恐怖で噛みついているのです。人間が犬のサインを見逃さないことも大切です。
まとめ
「遊び」「テリトリーへ侵入された」「ストレスでイライラしていた」「目の前を何かが素早く通った」「身体を傷めている」「家族や仲間を守るため」…犬が噛むことには様々な理由があります。
犬が噛みついた時、最悪の場合は危険な犬だと判断されて保健所などに送られるということがあります。しかし、噛みつく犬にしてしまったことも、犬に噛みつかせてしまったことも、人間がそうさせた結果なのです。
犬の習性を良く知り、噛みつかない、噛まれない対策をしっかりとすることで、不幸な犬が出ないことを願っています。