どうしてトラのように大きなイヌのなかまはいないの?

どうしてトラのように大きなイヌのなかまはいないの?

お気に入りに追加

犬を飼っている方は、カラーを選ぶにも、フードを選ぶにも、愛犬の体の大きさを意識する場面が多いと思います。現在国際畜犬連盟では約340ほどの犬種が公認されていて、チワワなどの超小型の種類から、グレートデーンのようなビッグサイズの種類もいます。これだけバリエーションが豊富な犬ですが、実はイヌ科動物全体で最も体の大きなオオカミでも、ネコ科の最大種トラやライオンにはまったくおよびません。どうしてトラのように大きなイヌ科動物はいないのでしょうか。

3824view

SupervisorImage

記事の提供

  • 博物館アドバイザー(元自然史博物館学芸員)
  • 碇 京子
  • ( 博物館アドバイザー(元自然史博物館学芸員))

20年近く自然史博物館学芸員として恐竜をはじめとする古生物の展示に携わってきました。専門は古生物学と地質学で、博物館教育を通して化石生物とその進化に関する研究成果の普及に努めてまいりました。現在は個人で博物館などの恐竜・古生物展示のアドバイザーをしています。動物の体のしくみ、生態や行動に関する科学的知識をわかりやすく情報発信していきたいと考えています。

※ここでは、漢字表記の「犬」「猫」はペットの犬猫を表し、カタカナ表記は犬猫を含めた野生種の科学的なグループを表します。

イヌ科動物とネコ科動物の大きさ比べ

アムールトラ

どうして、イヌのなかまには、トラのようなサイズのものがいないのでしょうか。

イヌのなかまとネコのなかまはもともと同じ祖先から発生した動物ですが、それぞれ異なる歴史をたどり、別の捕食動物へと進化しました。身体的にも生態的にも異なるところはたくさんありますが、単純に大きさもちがいます。基本的にネコ科動物のほうがバリエーションが豊富で、最大種もネコ科に軍配があがります。

古今東西、イヌ科の最大種とされるのはダイアウルフという、13万~1万年前に北米に生息していたオオカミのなかまです。体高80㎝、頭胴長130㎝と、体格は今のオオカミとそれほどかわりませんが、体重は70㎏程度と大型亜種のオオカミの平均よりも10㎏程重いといわれています。

いっぽう、ネコ科の最大種は現生のアムールトラで、体高120cm、頭胴長250cmとオオカミよりもずっと大きく、体重も300㎏をゆうに超えます。また、ネコ科にはそれほど大きくはなくても、オオカミより大きな種類はけっこういます。

食肉目を代表する捕食者同士、どうしてこのような体格差がうまれたのでしょうか。

狩りの方法の違いが体格差を生んだ?

待ち伏せ

ネコのなかまは、もともと森林の木陰に潜んで、やってきた獲物に一瞬で飛びかかって仕留める、待ち伏せ型の狩りを行います。この狩りに必要なのは瞬発力と獲物を力づくで抑え込むためのパワーです。瞬発力やパワーは基本的に筋肉(瞬発力を生み出す種類の筋肉)の量が多くなれば増加するため、体が大きくなったほうが、獲物を捕らえやすくなります。また、体が重ければ獲物を抑え込むのにも有利に。そのため、体の大きな種類が現れるようになったと考えられています。もちろん、捕食者として成功したために、多様化が進んだという面もあります。

イヌはどうでしょう。イヌのなかまは、長い間獲物を追跡して、獲物が疲れてきたところを襲う、追跡型の狩りをします。この狩りの方法には、瞬発力よりも持久力が求められます。体が大きくなって体重が増えれば、持久力が落ちてしまいますし、ネコのように相手を力づくで捕まえる必要がないため、体の重さが狩りに有利には働きません。そのため、イヌはネコほどは大きな体にはなりませんでした。持久力が必要なマラソンランナーに、ボルト選手のようなムキムキで大柄の選手がいないのはそのためでもあります。

ちなみに陸上最大の哺乳類は、肉食動物ではなく、草食動物であるゾウです。植物をエネルギーに変換するには大量に食べる必要があり、消化するには長い腸が必要なため、草食動物の体は大きくなる傾向があります。また、体が大きいほうが捕食者に狙われることが少なくなるメリットもあります。そのため、一般に陸上動物では草食動物のほうがより体の大きな種類が多く現れます。

ペットだったら、猫のほうがずっと小さい

犬と猫

ペットの犬猫の体のサイズを決定するのは、主に人為的な交配です。犬はさまざまな用途・目的にあわせてさまざまな犬種がつくられ、そのなかで超大型犬も生まれました。いっぽう、猫の使役目的はネズミ捕りくらいです。ネズミを捕るためにしても、むしろ大型でないほうがよく、そのために犬のように大きな種類はつくられませんでした。また、捕食者としての殺傷能力や命令に従わない性質を考えれば、巨大なサイズの猫はどんなに家畜化していようと、犬に比べてずっと危険にちがいありません。それを考えれば猫の大型種はつくらないほうが身のためということなのでしょう。

まとめ

動物

動物の体のサイズには、意外とちゃんとした理由があったのですね。野生の場合、イヌのほうが種類が少なく、体も小さいのですが、ペットだと種類も豊富でサイズも大きいというのは面白いことだと思います。犬が人にとっていかに役立ってきたかを表しているのでしょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事をシェアする
LINExわんちゃんホンポ(友達に追加する)
この記事を読んだあなたにおすすめ
合わせて読みたい

あなたが知っている情報をぜひ教えてください!

※他の飼い主さんの参考になるよう、この記事のテーマに沿った書き込みをお願いいたします。

年齢を選択
性別を選択
写真を付ける
書き込みに関する注意点
この書き込み機能は「他の犬の飼い主さんの為にもなる情報や体験談等をみんなで共有し、犬と人の生活をより豊かにしていく」ために作られた機能です。従って、下記の内容にあたる悪質と捉えられる文章を投稿した際は、投稿の削除や該当する箇所の削除、又はブロック処理をさせていただきます。予めご了承の上、節度ある書き込みをお願い致します。

・過度と捉えられる批判的な書き込み
・誹謗中傷にあたる過度な書き込み
・ライター個人を誹謗中傷するような書き込み
・荒らし行為
・宣伝行為
・その他悪質と捉えられる全ての行為

※android版アプリは画像の投稿に対応しておりません。