犬は雑食?肉食?動物としての食性について解説

犬は雑食?肉食?動物としての食性について解説

犬の食性についてお話するとき、「犬は肉食じゃないの?」「犬は雑食じゃないの?」とどちらの質問も同じように受けます。ウェブで調べても、「犬は肉食です」と書かれている記事もあれば、「犬は雑食です」とする記事も見ます。いったいどっちなの?と混乱しませんか?

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記事の提供

  • 博物館アドバイザー(元自然史博物館学芸員)
  • 碇 京子
  • ( 博物館アドバイザー(元自然史博物館学芸員))

20年近く自然史博物館学芸員として恐竜をはじめとする古生物の展示に携わってきました。専門は古生物学と地質学で、博物館教育を通して化石生物とその進化に関する研究成果の普及に努めてまいりました。現在は個人で博物館などの恐竜・古生物展示のアドバイザーをしています。動物の体のしくみ、生態や行動に関する科学的知識をわかりやすく情報発信していきたいと考えています。

犬は雑食?肉食?混乱の理由①:「犬」に含まれる2つの意味

バンダナを巻いた犬

犬の食性について書かれた記事を見ると、「肉食」「雑食」どちらの立場も見かけます。本当は犬の食性っていったいどっちなのでしょう。

私自身、記事の中で犬の体の特徴についてお話しするとき、どう書くべきかちょっと迷うことがあります。犬には「原種としての犬(原種に近い犬)」、「ペットとしての犬」の2つの側面があって、どちらの話なのか、あるいは両方の話なのか文章中で表現が難しいことがあるからです。ペットとしての犬は家畜化されてから長いために、交配されてバリエーションも幅広いですし、原種であるオオカミが持っていた特徴と全く同じでありません。一言で犬といってしまうと、原種の特徴を話しているのか、ペットの犬について話しているのか分かりづらくなってしまうことがあります。

体の外見に比べて食性はそれほど大きく変化してはいませんが、それでも人間と生活していなかった原種とペットの犬とでは状況がちょっとちがいます。つまり話し手がどちらを意識しているかによって、食性が少し変わってきてしまうことがあるのです。

犬は雑食?肉食?混乱の理由②:分類学上の位置と実際の食性のちがい

肉を見つめる犬

犬は哺乳類の中の「食肉目」というグループに属する動物(共通の肉食の祖先から進化したという意味があります)です。現生の陸上脊椎動物の中で肉食動物(昆虫食を除く)はこのグループだけです。そういう意味で犬は肉食動物です。しかし、食肉目に属する肉食動物たちの「肉食の度合い」は実はけっこうバラバラで、例えばクマなんか木の実などの植物も食べる、雑食がかなり進んだ動物です。パンダはその最たるもので、食肉目なのにほとんど竹しか食べません(野生では多少の肉食もします)。
反対に猫やイタチはまったく植物を食べない「完全な肉食動物」です。
オオカミの場合、クマほど雑食はすすんでいませんが猫ほど完全な肉食動物ではありません。クマに比べれば肉食で、猫に比べれば雑食です。このようなあいまいな感じが肉食か雑食かはっきりしないところなのでしょう。

犬の祖先「オオカミ」は雑食?肉食?

群れで行動するオオカミ

おそらく犬の原種であるオオカミを完全な肉食と思っているかたも多いと思いますが、実は雑食もする肉食です。確かに歯の構造からすると完全肉食の猫と違い、オオカミは(ペットの犬も)臼状の臼歯を上あごに4本、下あごに2本もっています。また、体長に対する腸の長さの比率は(植物を食べる動物ほど腸が長い)、猫よりも大きいので、猫より植物食に対する適応性は高いといえます。
実際、オオカミは大型の哺乳類から小型の哺乳類、腐肉、無脊椎動物(昆虫など)、植物、残飯など幅広い食べ物を食べています。オオカミが北極圏から熱帯に至るまで地球上に広く分布するのは、何でも食べられる適応性の高さによるものでしょう。

ペットの犬は雑食?肉食?

飼われている犬

では、ペットとしての犬はどうでしょう。1990年代の終わりに、犬のDNAとオオカミのDNAを調べると、0.2%しか違わなかったという研究結果が出ました。この結果は、欧米において犬のフードはオオカミと同じものがよい、例えば犬には生肉食が良いといった考えを後押ししました。しかしその後、犬とオオカミの違いについての研究も進むと、犬はオオカミより雑食化(デンプンが豊富な食べ物への適応)されたことがわかってきました。確かに家畜化の歴史も1万年(または3万年)以上と長いですし、犬は「オオカミより雑食が進んだ肉食」と考えられます。

まとめ

ご飯を食べる犬

オオカミが祖先だから犬にもオオカミと似たフードを、という考え方もありますが、犬は家畜化の過程で雑食化も進んでいますし、なにより種類が幅広く、要求されるエネルギーも違えば、代謝や栄養素も異なります。もちろんベースは肉食ですが、雑食も考慮に入れ、さらに愛犬の犬種、そして年齢にあったフードを選ぶことが大切だと思います。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    40代 女性 RYUCH

    確かに雑食化が進んでいなければ、こんなにドッグフードが主流になっていないでしょうし、犬も健康を害することになりますよね。あ、でも猫は完全肉食といっているけど穀物が入っているキャットフードもたくさんありますよね?どちらにしても穀物はそんなに必要ないけど少しは食べてもいいという感じなんでしょうか。その「食べても大丈夫な量」が犬の方が多いという感じなんでしょうか。食事は年齢に合わせて変えていかないといけないなと思ってますし、肉をややプラスしたりしつつ、バランスよく上げようと思います。それにしても犬とオオカミのDNAが0.2%しか変わらないというのに驚きました!確かに犬の祖先はオオカミと思っていましたが、それほど進化の過程で変化がないんですね。
  • 投稿者

    40代 女性 モカ

    おっしゃるように今のドッグフード一つとってもお肉風味の物から魚、野菜と様々な食材でできているものが多いですね。最近では増えつつあるアレルギー体質のワン子たちのためにロハスな食材を使ったドッグフードが沢山あります。わんこの祖先である狼も環境に対応しつつもしかしたら変わっていったのかもしれませんね。生きとし生けるものすべてに言えるのかもしれませんが、現在の温暖化など含めて地球環境が変わる中、上手に対応能力を発揮して生きるすべを身に付けてきた表れなのかもしれません。その過程でわんこたちにとってベストな食を少しづつ変わりながら現在に至ったのかもしれませんね。
  • 投稿者

    20代 女性 キウイ

    手作り食を導入しはじめた数年前から、色々な書籍や獣医さんのお話を聞いていますが
    犬は「肉食系の雑食」という捉え方が一番フィットするかな?と思います。
    しかし、この塩梅がドッグフードメーカーや、獣医さんによってマチマチでもあります。
    穀物4・肉4・野菜等2ぐらいをベストする考え方もあれば、動物性タンパク質8・その他2をよしとする考え方もあります。我が家の愛犬はあいにく穀物アレルギー持ちなので、どうしても穀物を避ける食事になりがちですが、肉や魚を多目、野菜や海藻、たまに果物という食事ばかりだと、健康のバロメーターとされるうんちの量や具合がイマイチになりがちで、アレルゲンではない芋や豆といった穀物を数日に1度は摂らせるようにすることで、体調を整えています。

    年齢、犬種の違いをはじめ、犬の持つアレルギーや疾患の問題もあるので、どれが良いと一概に言えないからこそ、選択肢もたくさんあるのだろうと捉えています。それぞれの愛犬の健康状態をしっかり見極めて、栄養があって美味しい食事を摂らせたいものですね。
  • 投稿者

    女性 Kaeko

    アメリカに住んでいたことがあるのですが、飼い主さんが肉も魚も食べないベジタリアンやヴィーガンというスタイルをとっている場合、そのワンちゃんたちも肉を与えないで育てているようです。実際ヴィーガン犬を見たことがありますが、特にやせ細っていて不健康という感じではありませんでした。我が家では愛犬にはお肉とドライフードを混ぜたものを与えています。どちらが良いのかということを白黒付けることは難しいですが、食生活は飼い主さんによりますね。
  • 投稿者

    女性 ゴン吉

    肉食というのはしっくりきませんね。最近のフードでも使われている肉の種類が本当に豊富になったと思います。肉によってはアレルギーがあり食べられない子もいますよね。そう考えると肉食というのは微妙ですね。
    手作り食の本を読むと、今は犬にも適度な野菜が必要だとあります。やはり肉多めの雑食なのかなと思います。
  • 投稿者

    女性 コロ

    犬の食も多様化してきたので、雑食ぎみではあると思います。犬用ケーキやおせちなど、段々と人間と同じようなものを食べるようになってきましたしね。
    ただ犬にとって肉は大事だと思います。年齢や体質に合わせて合う肉を与えたいです。
  • 投稿者

    女性 匿名

    ウチの仔はトマトやレタスが大好きで 豆腐やナスもおねだりします。
    切ない声で 小さく鳴きながらお座りして伏せして貰えるのを待ちます。勿論、基本肉食なのでササミの茹でたものでも同じ反応はします。カリカリに混ざってない時はエッ??って顔で私を2度見してます。
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