犬の色覚について解説!犬は2色までしか識別できない?

犬の色覚について解説!犬は2色までしか識別できない?

犬の色覚は2色型と言われていて、青は青に見えますが、赤は黒っぽく、緑が黄色っぽくなって見えます。つまり犬の見ている世界は、青や黄の世界です。一方私たち人間の色覚は3色型で、魚類、両生類、爬虫類は4色型です。同じ脊椎動物の中でどうしてそのような違いがおきたのでしょう。どうして犬は2色型なのでしょう。その不思議にせまります。

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記事の提供

  • 博物館アドバイザー(元自然史博物館学芸員)
  • 碇 京子
  • ( 博物館アドバイザー(元自然史博物館学芸員))

20年近く自然史博物館学芸員として恐竜をはじめとする古生物の展示に携わってきました。専門は古生物学と地質学で、博物館教育を通して化石生物とその進化に関する研究成果の普及に努めてまいりました。現在は個人で博物館などの恐竜・古生物展示のアドバイザーをしています。動物の体のしくみ、生態や行動に関する科学的知識をわかりやすく情報発信していきたいと考えています。

犬の色覚やそもそも色覚って?

犬の眼球アップ

犬の色覚は2色型といわれ、犬は青や黄色の世界に生きています。犬の色覚が2色型になった理由はどこにあるのでしょうか。そもそも色覚って何なのでしょう。

ちょっと回りくどくなってすみませんが、犬の世界を正しく理解するために色覚について先にお話ししたいと思います。
実はこの世に「色」というものは存在しません。光とは電磁波でもあり、波長が2n㎜(ナノミリメートル)~1㎜のものを光といいます。波長の短いほうから紫外線、可視光線(青から赤まで)、赤外線となります。これらの波長の違いを脳が色として認識しているわけです。

色覚は錐体細胞の種類で決まる

この波長の違いを捕らえるのが、眼球の奥にある網膜という層の中にある視細胞です。さらにその視細胞の中の、錐体細胞が色の認識に特に関係しています。錐体細胞には、光の波長に対する感受性の違いによっていくつかの種類があり、例えば人間は3色型ですが、波長の長い赤、中間の緑、短い青に対して反応する3種類の錐体細胞を持っています。

この意味は、私たちが赤と緑と青しか見えないということではありません。テレビモニターと一緒で、3種類の錐体細胞の反応の比率、組み合わせによってたくさんの色が認識できます。

犬には緑の錐体細胞がない

一方、犬は2色型で中間波長の緑がなく、赤と青の錐体細胞しか持っていません。2色だけのセンサーで色を認識するので、組み合わせの数は3色型よりもぐっと少なくなり、認識できる色も少なくなります。犬の2色型の場合、赤はグレーがかって見え、緑は黄色っぽくなって犬の世界は青系、黄色系の世界と言えるのです。

脊椎動物のほとんどは4色型色覚

動物たち

色覚は、おそらく脊椎動物の歴史の中で、魚だった時期につくられたのではないかと考えられています。水の中は、陸上よりもずっと複雑な光の環境があります。水が乱反射して明暗だけだと物の輪郭がよくみえません。そのため、明暗に左右されない色覚を発達させたとされています。魚は色覚が非常に発達した動物で、4色型の錐体細胞を持っています。

4色型には赤、青、緑に加え、もっと波長の短い紫外線の錐体細胞もあります。紫外線も見えちゃうなんてどんな世界なのでしょうね。この4色型は、時代を経るにつれて魚類から両生類(※)へ、両生類から爬虫類へ、爬虫類から鳥類へと引き継がれていきました。つまり脊椎動物の多くが4色型なのです。ところが犬は2色型。あれ?減っています。どうして減ってしまったのでしょうか。

※両生類は緑の錐体細胞はまだ見つかっておらず、有る無しの確認がとれていません。

犬はどうして2色型?

リードを咥える犬

実は2色型は哺乳類にとってはあたりまえのことで、霊長類以外のほとんどの哺乳類が2色型です。私たち人間を含む霊長類は3色型ですが、それでも4色型ではありません。どうして哺乳類で色覚は減ってしまったのでしょうか。

哺乳類は恐竜時代に色覚を2色失った

その理由は恐竜時代に遡ります。私たち哺乳類の祖先と恐竜は、今から2億3000万年前、ほぼ同時期に地球上に表れました。恐竜たちは、その祖先の時代から二足歩行でスタスタ歩くことができ、すでに繁栄への道を歩んでいました。

その繁栄を引き継いだ恐竜はますます発展していきました。一方誕生したばかりの哺乳類の祖先は、どんどん多様化する恐竜たちに押され、居場所を奪われていきます。私たちの祖先は、恐竜が闊歩する昼間は地下や木のウロに潜み、夜に活動するようになったのです。夜行性となった哺乳類にとって、色覚はそれほど重要でなくなり、2色型となったと考えられています。それを現在の哺乳類たちは受け継いでいるというわけです。

2色型はサバンナで有利?

しかし、2色型だから劣っているというわけではなく、2色型は例えばサバンナなどで生活をするとき、木陰に潜むカモフラージュ色の獲物や天敵を見つけやすい、ということを示唆する研究があります。2色型のほうが、色柄に惑わされずに物の輪郭がわかるからです。犬の祖先はかつて平原で生活していたので、2色型のほうが有利に働いたのでしょう。

ちなみに霊長類は、恐竜が絶滅してから森で生活をはじめ、森の緑と主食である果実の熟れ具合を遠くからでも確かめられるように、色覚を1つ取り戻したとされています。

まとめ

遊ぶ犬

色覚には紆余曲折の歴史があったのです。私たちはつい、多いほうが良いくて、進化しているほうが良いものを持っていると考えがちですが、進化とは単純にその時々の環境にどう適応したかの結果であり、優劣ではないのです。犬を代表とする2色型の色覚がそれを私たちに教えてくれています。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    40代 女性 RYUCH

    「犬の見る世界は青っぽい」「全体がモノトーン」というのを聞いたことがあったのですが、きちんとこういう分類があったのですね。色彩というものが一体どういうものなのか、犬や動物にとって色がどういう意味合いを持つものなのか、ということを考え始めるとなかなか興味深い話ですね。そもそもどうして犬と人と両生類や鳥類などが持つ色覚が違ってくるんだろう。生きる場所が、例えば空と海と地上で違うとか何か明確な理由があればわかるけど、進化というのはおもしろいものですね。進化の過程は知ることができないけど、色々と想像力を働かせて考えると不思議がいっぱいながら非常におもしろい。一応理由は解説してくださってますが、なぜ犬は2色型に進んだんだろう。時間がある時に調べてみたいと思います。
  • 投稿者

    40代 女性 モカ

    犬の見る世界を考えると私たち人間にとっては考えつかないような不便と苦痛を強いられているように思えてしまいますよね。それでも犬にとっては普通の事で生まれたときから世界は青だったり黄色だったり想像すると面白い、人間の見ている色の世界が正しいわけではないという事がよくわかります。それでは犬にとって人の顔はどのように見えているのでしょう?一度大きなドッグランに行ったとき遠くから呼び戻して沢山他の飼い主さんたちがいる中で本当の飼い主がすぐわかるか実験したことがあります。まず和一声名前を呼んで耳から入って次は目が頼り、それでもうちのわんこは一目散に迷いなく私のもとにやってきました。まぎれることなく形と色できちんと認識できている事がわかりますよね。同じような色の建物が立ち並ぶ現代ですが案外区別しやすい色彩かもしれませんね。
  • 投稿者

    30代 女性 ひまわり

    とても興味深い記事でした!人よりも少ない色覚だと知らなかったので、今まで買ってきたカラフルなおもちゃも全然違う色に見えていたのか…と少し残念な気持ちになりました(^_^;)でも、もし犬の色覚で見る景色がどんな世界なのかとても気になります♪
  • 投稿者

    女性 タルト

    これはいつ書かれた記事でしょうか。
    ちょっと前に犬は意外と色が見えているかも、みたいな記事をニュースサイトで読んだ記憶があるのですが、勘違いだったのかな。その記事を読んで、確かにうちの犬は強いピンクのおもちゃが大好きなので、色の違いが少しはわかっているんだなと思ったんです。
  • 投稿者

    女性 たけのこ

    たしか2色だけでなく、意外ともっと見えているみたいという記事を昨年サイエンスニュースで見ました。でも、人間よりは色覚は劣っていることに間違いなさそうです。うちの犬は濃い水色が大好きなので、この色がどのように見えているのかが気になります。
  • 投稿者

    女性 もふころ

    犬の視界はモノクロの世界、というのは聞いたことがありますが、最近ではもう少し色の判断ができると言われていますよね。我が家の愛犬も、自分の器の色は何となく認識しているような感じが見て取れます。
  • 投稿者

    40代 男性 老眼

    二色とは言っても、単純に青、黄色だけの世界ではなく、光の明暗もわかるので各色の微妙な差は感じるようですね。あと暗闇でも人よりしっかり見えるようなので、実際は想像よりもっと機能的なのかも。
    紫外線も見えるという近年の研究結果もあるようですし、いったいどのように見えるのか興味ありますね。
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