古来から人間の手助けをするために様々な役割を担ってきた犬ですが、現在でも介助犬や警察犬、盲導犬、麻薬探知犬など多くの場で活躍している犬がいます。今回はそんな中でも介助犬の一種である「糖尿病予知犬」について紹介します。
糖尿病とは?
人間の血液中には”ブドウ糖(血糖)”というエネルギー源が存在しています。人間の体は食事をすることで、このブドウ糖を体内に蓄え、エネルギー源として使うことができます。この時にブドウ糖を体内に取り込む動きをしてくれるのが、すい臓の「インスリン」という物質です。
糖尿病はこのインスリンがうまく動作せずに、血液中のブドウ糖を体内へ取り込めなくなってしまう病気です。ブドウ糖を体内へうまく取り込めないことで、血液中のブドウ糖の割合が高くなり(高血糖)、時には命に関わるような合併症を引き起こしてしまいます。
糖尿予知犬とは?
前述したとおり、糖尿病にかかると血糖値が上がり高血糖になります。高血糖になると長期的には合併症を引き起こすだけでなく、高血糖が原因で昏睡状態となる可能性があります。この危険な状態から脱すためには常に血糖値の上下を意識し、場合によってはインスリンを注射する必要があります。
「糖尿病予知犬」と呼ばれる介助犬は、この血糖値の上下を嗅覚で察知し、鳴き声や決められたポーズ(揺り動かす、前脚をあげる等)でお知らせするように訓練された犬のことです。
実際に犬が何の物質を嗅ぎ取って反応しているかというのは解明されていません。しかし、何らかの物質に反応していることは確かなため、イギリスやアメリカでは研究が進められると同時に予知犬の育成が進められています。
糖尿病予知犬の活躍
実際にイギリスやアメリカでは既にこの「糖尿病予知犬」が活躍しています。
アメリカでは8キロも離れた場所にいる女の子の血糖値の臭いをかぎ分け、母親に危険を知らせた糖尿病予知犬(ラブラドールレトリーバーのヒーロー)がいたり、イギリスでは飼っていた犬(ラブラドールレトリーバーのメイシー)が血糖値の上下に反応することが分かり、糖尿病予知犬となったケースがあります。
また、最近アメリカの男性が糖尿病予知犬(シナトラ)と一緒に高校の卒業式へ出席したことも感動を呼び、話題となりました。このシナトラは血糖値を測る機械よりも男性の血糖値の上下を素早く的確に察知してくれるそうです。
訓練を受けていない飼い犬においても、飼い主に低血糖や高血糖の症状が現れた際に”揺り起こす、吠えて知らせる、うろうろと落ち着かない様子を見せる、他の家族を呼びに行く”といった普段とは違った行動がみられています。
まとめ
血糖値の検査では毎回、指先に針を刺して血を調べる必要があり、これらの検査は大人でもつらいものです。これらが犬の嗅覚で察知できるとなると、数多くの人が救われます。
また、犬の嗅覚を持ってすれば、糖尿病以外にも心臓病やてんかん等の発作を予知し、警告することが可能だといわれています。
しかし、残念なことに日本ではまだこれらの介助犬があまり知られていないのも現状です。ペット大国でありながら、いまだに殺処分もなかなか減らない日本。これらの介助犬の存在が広まり、犬の役割が少しでも増えることは、こういった悲しい殺処分を減らすことにも繋がります。
犬は古来から人間の役に立つことが生きがいとなるように改良されてきた歴史もあります。
だからこそペットとしてだけでなく、人間と共生できる方法を見つけるのも人間の役割だと思います。
なお、この介助犬たちは無理やり厳しいしつけを受けているわけではなく、特性や性格、互いの絆や愛情があってこそ成り立っています。信頼関係を築き、共生する方法の一つとして日本でも介助犬が広がっていけばいいなと願っています。
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女性 じん