犬はニオイ以外でも飼い主を認識できる!
犬の嗅覚は人間に比べると遥かに高い性能を持っているということは、多くの方がご存じでしょう。人間と比べてどれくらいの嗅覚を持っているかと言いますと、年齢、臭いの種類などによって違うため、ハッキリと何倍と言うことは出来ませんが、刺激臭であれば人間の約1億倍の嗅覚であることがわかっています。
1億倍と聞くと、今まで知らなかった人は驚いたという人も多いのではないでしょうか。実際、犬は他人と自分の飼い主を比較する際に、ニオイを嗅ぐことで区別しています。
しかし、犬が飼い主を認識する際、重要視している五感は嗅覚だけではありません。嗅覚で識別することに加え、視覚や聴覚などを駆使した上でしっかりと飼い主を認識しているのです。では、嗅覚以外にも視覚や聴覚を使い、犬は具体的にどのような点を重視しているのでしょうか。
"顔"を見て認識している
まずは犬が嗅覚以外に視覚を使って飼い主を認識していることについてご紹介します。犬は人間に比べて嗅覚が発達していますが、反対に視力は人間に比べると劣っていると言われています。
近視ではなく遠視気味の犬が多いという結果も出ており、人間の視力を1.0とすると、犬の視力は約0.27と言われているのです。そう考えると、犬の視力はお世辞にも良いとは言えません。
しかし、見えていないということではないため、視力を使って飼い主を認識している犬が多いのも事実です。
イタリアで行われた顔の認識に関する実験
イタリアにあるパドヴァ大学の研究者によって、1歳半以上の60頭もの犬を対象にしたある実験が行われました。実験対象となる犬の前を飼い主と見知らぬ人物が交互に通ることで、その時の犬の視線に関する実験を行ったのです。
この実験では上記でも記したように、飼い主と見知らぬ人を交互に見せ、さらに2人を別のドアから出すことで、犬がどちらのドアに近寄っていくのかを確かめたのです。
その結果、当たり前のように対象となった犬は、2人が行き来している間は終始飼い主を見つめ、その後飼い主が出て行ったドアに近づくという結果になりました。
しかしこれでは、視覚が大いに関係しているかどうかはわかりません。したがって、次に行われた実験は、状況は上記と同様ですが、飼い主と見知らぬ人物にマスクを被せ、顔が見えない状態に変えて実験が行われました。
その結果、2人の人物が行き来している間は、先ほどよりも飼い主を見ている時間が減り、さらにドアから出て行った飼い主を追いかける犬も減ってしまったのです。これら2つの実験結果から、犬が視覚も少なからず使って飼い主を認識しているということがわかるのです。
シニアになるとさらに驚くべき結果が!
シニア犬と呼ばれ始めるのは、7歳頃が一般的です。シニア犬は普通の成犬に比べると衰えが見え始め、それは視覚にも現れ始めます。そこで上記の実験を成犬とシニア犬に分けて行ったのです。
すると、先ほど紹介した成犬の実験結果と比べ、シニア犬は飼い主の顔が見えている段階でも見つめている時間が短い上、飼い主がドアから出て行った後も追いかけない犬が多くなったのです。
したがって、犬も人間と同じように視覚を使用して人を区別していることは勿論、加齢に伴って視覚が弱くなってしまうという点も実験によって明らかになったのです。
人間社会に適応するために生まれた能力
しかし、そもそも最初にお話ししたとおり、犬は元々、人間と比べても視力が悪い動物です。野生の犬は仲間同士のシグナルや匂い等で区別しているのに、なぜペットとして飼われている犬は視力を頻繁に使用しているのでしょう。
その疑問に対しては、ある1つの説が立っています。犬は多くの方がご存じのとおり、動物の中でも人間と暮らしてきた歴史がとても長い動物です。そのため、長い時間をかけて人間の顔を観察する能力が備わったのではないかと言われています。
長い歴史の中で最初は顔を確認することが出来る程度だった能力が、次第に人間の表情など細かい部分も確認できるようになり、今のような人間のベストパートナーとなったのです。
"声"を聞いて認識している
犬が人間よりも聴覚が優れているという話は有名ですが、具体的にはどのくらい人間よりも優れているのでしょうか。
皆さんも聴力テストを1度は受けたことがあるのではないでしょうか。高い音が鳴ったり、低い音が鳴ることで、その音を聞き取り、「音が聞こえたら手を挙げてくださいね」というものです。
人間の聴力は約20~20,000ヘルツと言われています。それに対して犬の聴力は約40~65,000ヘルツと言われており、人間よりも遥かに高い音を聴き取ることが出来るのです。
これは犬が野生で生活していく上で、獲物となる小さな動物の鳴き声を聞き漏らさないようにするため、ここまで聴力が発達したとされています。
このように聴力も優れている犬は、人の声によってもしっかりと飼い主を認識しています。
京都大学で行われた声と姿の実験
日本にある京都大学の研究グループが、犬に関するある実験を行いました。対象となる犬の前にスクリーンを置き、その方向から飼い主、または飼い主以外の人物の声を流します。その後、スクリーン上に飼い主、または飼い主以外の人物の顔を映し出すという実験です。
そのため、この実験では「飼い主の声&飼い主の姿」「飼い主の声&飼い主以外の人物の姿」「飼い主以外の人物の声&飼い主の姿」「飼い主以外の人物の声&飼い主以外の人物の姿」の4つのパターンの実験を行いました。
この実験は28頭の犬を対象に行われましたが、姿と声が一致していないパターンの実験を行った際、姿と声が一致しているパターンに比べ、犬がスクリーンを不思議そうに見つめる時間が長かったことがわかったのです。
つまり、犬は飼い主の姿だけではなく、飼い主の声もしっかりと認識しており、その姿と声が異なったがために「何か違うぞ?」と不思議に感じていたのです。
声で性別を区別できる
さらに京都大学の研究チームは、犬が声で性別を区別できているのかを実験で確かめました。この実験も先ほどと同じ方法で行われ、「男性の声&男性の顔」「男性の声&女性の顔」「女性の声&男性の顔」「女性の声&男性の声」の4とおりの実験を行いました。
この実験には27頭の犬が参加しており、この実験でスクリーンに映し出され、流される声の男性、女性は飼い主ではなく、犬たちが知らない人物を使用しての実験です。
この実験を行った結果、先ほどの実験と同様に異なる性別のパターンの方が、顔と声が一致しているパターンに比べて見つめている時間が長かったのです。したがって、犬も声の高さなどによって、人間の性別を区別している可能性があることがわかったのです。
ビクターのロゴマーク「ニッパー」
ちなみに世界の有名な犬に「ニッパー」という犬がいます。この犬は日本ビクター社のロゴマークとして使用されており、蓄音機に向かって耳を傾けている姿が印象的です。一度は見たことがあるという人も多いのではないでしょうか。
このニッパーは、亡くなってしまった自分の飼い主の声が蓄音機から流れたため、不思議そうに蓄音機を見つめ、耳を傾けていたという実話が残されています。
その姿に感動した画家によって描かれた絵が「His Master's Voice(彼のご主人の声)」という題名を付けられ、その後ビクター社のロゴになったとされています。
上記の実話からもわかる通り、犬はしっかりと飼い主の声を認識していることがわかります。
"足音"でも認識できる
飼い主が帰ってくる際、飼い主の足音を聞いて玄関まで犬が走って行く様子を撮影した動画をインターネット上やテレビなどで見たことがあるという方も多いのではないでしょうか。
声を認識しているということは先ほどお話ししましたが、その聴覚で犬の中には飼い主の足音を聞き分け、認識している子もいるのです。
犬と飼い主の足音にまつわる実験
先ほどご紹介した京都大学で行われた実験の中に、犬は飼い主の歩き方の癖などを音で聞き分けているのではないかという趣旨の実験があります。
この実験では、知らない人の足音を2往復分聞かせた後、知らない人が入ってくるパターン、飼い主が入ってくるパターンを観察するというものです。さらにその後、飼い主の足音を聞かせた後、同様に飼い主が入ってくるパターンと知らない人が入ってくるパターンも行われました。
するとやはり自分が思っている足音と違う人が入ってきた「知らない人の足音を聞いた後に飼い主が入ってくるパターン」の時の方が、一致しているときに比べるとジッと見つめている時間が長かったのです。
したがって、個体差はあるものの、犬は飼い主の足音を聞き分けている可能性があることがわかったのです。
皆さんが家に帰ってきた際、すでに玄関の前で待っていた、またはサークルの中で立ち上がって待っていたということはありませんか?もしかすると、あなたの愛犬も足音を聞き分けているのかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。上記で紹介したとおり、犬は嗅覚だけでなく、視覚や聴覚も使いすべての情報をまとめた上で飼い主として認識しています。
「犬は目が悪いって聞くから、私の顔はわかっていないのかも」と思っていた方も少なくなかったのではないでしょうか。しかし、あなたの愛犬はしっかり飼い主の顔を把握しています。さらに表情を読み解く力も備わっていますので、なるべく笑顔で接してあげましょう。
ユーザーのコメント
50代以上 女性 匿名
40代 女性 キュアパパ
犬の年齢に関係なくオヤツやご飯に1日一本程度 生でも温野菜でも 緑内障や白内障にかかった犬でも回復します。
50代以上 男性 ミュウタント
50代以上 男性 腹巻親父
自宅への最後の曲がり角。 距離にして60メートル程度を曲がった所から、寝ていたわんこ2頭共に
起き上がり、耳を「ピン」とさせて確認作業中。車庫前にて車をバックさせてている最中には、
これでもかの「お帰りなさい大コール」。車の音でもわかるみたいです。
50代以上 男性 匿名
首を持ち上げて起き上がります。なぜ熟睡してるのに自宅を感知するんでしょうか?当たりはずれはありません。きっと頭の中に
素晴らしいGPSがあるのですね。でも家内の車はハイブリッドで排気音がほとんどしませんが家内が帰宅しても帰宅に気が付かないときがあります。でも小生の軽自動車はすぐわかる様で玄関で待ていてくれます。犬でも得意なことと不得意があるのかもしれません。