高齢者が大型犬を飼う「リスク」とは
皆さんの周りには、高齢者の方が大変な思いをして大型犬を飼っている方はいませんか?
私は大型犬に引っ張られながら必死に散歩をしている高齢者の方を時々見かけます。
大型犬はとても利口で素晴らしい犬です。しかし身体が大きな分、寝たきりになった時、きちんと介護を行えるか、経済的余裕があるのか、よく考えてから飼わなければいけません。
私は以前、動物看護師として動物病院に勤めていました。その頃に実際にあった体験談をお話ししたいと思います。
元動物看護師の私が遭遇した事例「石を食べるラブラドールレトリバー」
ある飼い主さんから病院に電話が来ました。
「うちの庭で繋いで飼っているラブラドールレトリバー、よく吐くし下痢が続いていて困っちゃって。石をよく食べるけど昔からだし…関係あるかしら?でも食べた石は便に出て来ているわ。タクシーで行こうと思ったら運転手さんに、大きな犬は困るって言われちゃってね。だから往診に来てくれないかしら?」
ということでした。
この飼い主さんは高齢者の方で、病院まで遠い所に住んでいましたが、車を持っていませんでした。
飼い主さんの家へ往診に行き、直接話しを聞きながら診察をしました。
庭のあちこちに下痢と吐いた跡があり、一目見ただけでも異常がわかる状態でした。さっそく事情を伺うと、様々な問題点が・・・
- 飼い主さんが足が悪いため散歩には行かず、ずっと庭に繋いだままの生活を送っていた。
- ドックフードが嫌いで食べないため、卵焼きや肉、ハムやちくわなど、人間用のご飯を何でも与えていた。
連絡があった時点で犬はとても痩せており、このままでは危険と判断し、詳しく検査をするため犬を預かり病院へと連れて戻りました。
検査の結果は…様々な問題点が浮き彫りに
犬が石を食べてしまう原因は様々あります。
- 「異食症」という食べ物ではない物を食べる癖がある
- お腹に寄生虫がいる
- 貧血
- 空腹や栄養不足
- ストレス
しかし、このラブラドールは、ほとんどの原因が当てはまっていました。
レントゲンを撮ると、胃や腸にたくさんの石が入っており、中には大きな石もありました。大きさから、自力で排泄するのは困難であると判断され、すぐに開腹手術が行われました。
手術後の悲劇…「愛犬を手放したい」
手術は無事成功し、きちんとした栄養管理、寄生虫の駆除、朝晩の散歩をし、ストレスのない生活を送ると、石を食べる癖は治まっていきました。
退院日、飼い主さんに来てもらうと、回復を喜ぶどころか信じられないことをお話しされました。
「自分自身、年を取り大きな犬の世話は厳しいものがある。年金生活を送っており、金銭的にも余裕がない。病院にも足がないから来れない。ペットショップからはラブラドールレトリバーは大人しいから年寄りでも飼えるって言われて飼ったけど、大変で。誰か欲しい人いないかしら…」
と言われました。
飼い主さんと病院側でたくさん話し合いをしました。
飼い主さんは足が悪いため、この先も散歩に連れて行けない。室内飼育はどうしても無理なため、外に繋いで飼うしかなく、そうするとまた石を食べてしまう可能性がある。
病気になっても手をかけてあげられない。などの理由から結果として新しく里親を探すことになりました。
新しい飼い主さんの元へ
運良く、私の勤めている病院へ通っている飼い主さんの中で、とてもラブラドールレトリバーを愛している方が寿命で愛犬を亡くしたばかりでした。
その方は、病院の張り紙を見て、是非飼いたい、その子を幸せにしたいと名乗り出てくれました。
今はそのラブラドールレトリバーは、その方の家で幸せに暮らしています。
高齢者の方へ…大型犬を飼う前に考えてほしい「5つのこと」
①愛犬の老後のお世話は出来ますか?
大型犬は寝たきりになってしまった場合、介護が人と同じくらい大変です。きちんと世話が出来るかよく考えてみましょう。
②愛犬のお世話や散歩、病気や怪我を考慮してますか?
毎日のお世話の他にも散歩の点や、病気や怪我をした時をイメージし、将来を考えて犬種を選びましょう。
③本当に飼育可能なサイズの犬種ですか?
いくらペットショップの人が勧めても、高齢者が大型犬を飼う事はリスクがる事を知っておきましょう。(年配の方はなるべく自分が世話のしやすい、抱っこが可能な中型犬以下のサイズを選ぶのが基本です)
④動物が病気や寝たきりになった場合の交通手段はありますか?
小型犬はキャリーケースに入れて電車やバス、タクシーなどの移動が可能ですが、大型犬は難しいです。キャリーケースに入れられない大型犬はタクシー会社から嫌がられてしまうため、自家用車が必須です。
⑤犬を飼うための経済的余裕はありますか?
大型犬は小型犬に比べて身体が大きな分、食事代や医療費も多くかかります。あなたが日常生活を送る中で、愛犬が幸せに暮らせるだけの経済力があるか考えてあげて下さい。
まとめ
大型犬を販売する前に、飼い主側の家族構成や年齢を考慮して販売するペットショップはそう多くないでしょう。
商売ですので、可愛さや飼いやすいなどメリットを伝え、いかに売るかが大切なのも分かりますが、それでは、わんちゃん達の幸せには繋がりません。もし、リスクが説明されていたとしても、目の前にいる子犬の可愛さに気分が上がってしまい、飼う側も、本当に大型犬を飼えるのか、判断を誤ってしまうかもしれません。
成犬時や約10年後の自分と犬のイメージをしていなかったり、飼うことの心構えをせずに簡単に飼ってしまうと、今回のエピソードのような悲劇が生まれてしまうかもしれません。
今回のラブラドールレトリバーのエピソードに関しては、犬を飼う知識が全くない年配の方に、大型犬を勧めたペットショップにも問題がありますが、何も考えずに安易に飼ってしまった飼い主さん自身にも問題があると私は考えます。
もし、読者の方の中でご年配の方や、年配の知人や親族が大型犬を飼おうと考えていたら、私がご紹介した「5つの事」を教えてあげて下さい。
大型犬に限らず、動物を飼うということは、本当に覚悟のいることです。
愛情もお金も時間も、本当にちゃんとかけてあげられるのか、もう一度きちんと考えてから飼って欲しいと思います。
ユーザーのコメント
40代 女性 匿名
病院でも年配の方が 大きなゴールデンやラブラドールを重たそうに抱えてくるのをたまに見かけます。
確かに性格は温厚な子が多く 飼いやすいかも知れませんが 大型犬だと 抱っこも一苦労だし、散歩時間も朝晩1時間は必要だし、食費もかかります。
ペットショップで販売する時にも 犬種の特性や、躾の仕方など きちんとした飼い方のアドバイスをしてあげないと 飼ってみたら思ってたものと違ってた などの理由から 身勝手にワンちゃんを手放すような飼い主さんが少なくなると思います。
女性 ゴン吉