【元動物看護師体験談】ウジ虫がわいたミニチュアダックスフンド

私は以前、動物看護師として動物病院に勤めていました。
長年勤めている間に体験した中でも、特に愛犬を大事にせずに酷い飼い方をしているなと感じ胸を痛めたケースをお話ししたいと思います。

ウジ虫がわいたミニチュアダックスフンド

ある日、動物病院にミニチュアダックスフンドを連れた飼い主さんが数年振りに来院されました。
「この子は庭に繋いで飼っているんだけど、最近夜中もずっと鳴いててうるさいから何とかして欲しい」 とのこと。

夏は猛暑、冬は雪の多い田舎の土地で、ミニチュアダックスフンドを外で飼っていることに違和感を感じながら、診察を始めました。
その子の身体にはたくさんの糞が付着していてとても不衛生な状態でした。
それだけではなく、身体にはウジ虫がわいていました。

動物病院にはウジ虫がわいている動物が来ることは年に数回あります。
そのほとんどは老いて寝たきりになってしまった外で飼われている動物で、床ずれの小さな傷口や、排泄物で汚れた身体にハエが集りウジ虫がわくケースがほとんどでした。

しかし、今回のミニチュアダックスフンドは寝たきりになるような年齢ではなく歩き回ったりも出来るような状態であったため、飼育環境のせいでウジ虫がわいたことが安易に想像がつきました。

夜中もずっと鳴いていたのは、ウジ虫がわいてずっと苦しく辛かったからだと飼い主さんに伝えました。愛犬家であれば、どんな思いでこの子が暮らしていたのかと想像すると胸が苦しくなります。
一体どんな飼育環境で飼っているのか、院長とスタッフで飼育環境の改善をするように注意をし、ウジ虫を退治するために適切な処置と治療を施しました。
幸い犬の体調は良好できちんと治療をすれば完治するケースでした。
飼い主さんに次回の来院日を伝えると、「お金持ってきてないから次回病院に来た時にまとめて払うから」と帰っていきました。

しかし、その来院日を過ぎてもその飼い主さんは現れることはありませんでした。
治療費の未払いのことももちろんですが、そのミニチュアダックスフンドのことがとても心配になり飼い主さんに何度電話をかけても適当な理由を付けて来院せず、手紙を送っても無視され続けました。

保健所の職員の方の訪問

ミニチュアダックスフンドの診察から数日後、保健所の職員の方が動物病院にいらっしゃいました。
そのミニチュアダックスフンドの飼い主さんについて話があるとのこと。
その飼い主さんの家は、庭で繋いで飼っているミニチュアダックスフンドの世話をほとんどしていなく、糞尿の始末をしないため周囲に悪臭が漂い近所では有名なお宅だったそうです。

飼育環境などの改善が見られなければ、動物虐待に値する、新しい飼い主さんを探す為に保健所や愛護団体に引き渡す等の話しになり動いています。

その後のミニチュアダックスフンドは経過観察中のため、現在の状況は動物病院では分からない状態ですが保健所の職員の方の話しだと、
「恐らく飼い主さんの様子からしてミニチュアダックスフンドを手放し保健所の方で引き取り、里親に出すことになるだろう。保健所では獣医師がいるので、ミニチュアダックスフンドの治療を優先し治療完了したら里親募集になる。」
とのことでした。

体調が悪くても動物病院で尻尾を振るとても可愛く性格の良い子だったので、元の飼い主さんのところで暮らすより新しい飼い主さんと暮らした方が幸せになれると思っています。
その田舎の土地は年に何度か保健所主催の里親募集が開かれ、新しい飼い主さんがたくさん決まっています。
そこで新しい飼い主さんが見つかることをスタッフ一同願いました。

不幸な動物を増やさないための対策

このようなことが起こらない為にはどうすればいいでしょうか？

• ブームや一時の感情で安易に飼わない。
• 生涯かかるエサ代や治療費やトリミング代などの費用が払える余裕があるのか。
• 家族に孫や赤ちゃんが生まれても最期まで飼えるのか。
• しつけ等の勉強を飼い主さん自身がきちんと学び実行出来るのか。
• 家族全員が動物を飼うことに賛成なのか。
• 責任持って最期まで飼えるのか。
• 身近に無責任に飼育している方を見つけたら行政に伝える。

あたり前のことばかりですが、これらのことが出来ずにいる方がいます。もう一度よく考え、踏みとどまってもらいたいと思います。また周囲にそのような方がいる場合は、周りがどんどん動くことが大切です。

まとめ

今回のミニチュアダックスフンドは、買い始めた時期からみても、ミニチュアダックスフンドのブームで安易に飼ったケースでした。
ブームで飼い、子犬の頃は可愛がりますが成犬になり飽きたので、室内飼育から外へ出して飼い始め以前のような愛情が注がれることがなくなってしまったようです。

動物は人間と同じように成長し、やがては老いていきます。その過程で病気や怪我をしたりもします。
そういうことも含めてきちんと最期まで責任持って飼うことが出来るのか、可愛いからと安易に買ってきてはいけません。
動物病院に来院される飼い主さんの中には「うちの犬はバカだから○○がきちんと出来ない」と言う方が非常に多いのですが、バカな動物なんていません。
どんな子もきちんとしつけをすれば出来るようになります。
学ばなければいけないのは飼い主さんなのです。
動物は飼い主さんを選べません。
飼い主さんの勝手な都合のシワ寄せを動物にしてはいけないのです。
今の時代はペットショップからお金を出せば簡単に動物が買えてしまうことが出来ます。
そんな時代だからこそ、もう一度きちんと動物を飼うということの意味を考え踏みとどまってもらいたいと思います。