ペットショップで販売されている犬猫(他ハムスターなどの小動物)は、皆さんの家に迎え入れられるまでどのようにして生活しているかを考えたことはありますか?
今回は私が動物病院勤務時代にみてきた、ペットショップで販売されている子犬たちの現状と、とてもつらかった体験をお伝えしようと思います。
このお話を読んでいただいた飼い主さんが、少しでもペットの命について考えていただける機会になればと思います。
ペットショップで販売される犬猫の健康管理
私がいた動物病院は大きなペットショップと提携しており、そこで販売された子犬の初めての健康診断を行っていました。
その中で様々な子犬や子猫を診察し、体調の悪くなった子犬の入院管理も経験しました。
体の小さな仔犬が母犬から離れてもみんな元気でいられれば良いのですが、残念ながら体調が悪くなることも多いのです。
感染症の恐怖
ペットショップの中で、ジステンパーや犬パルボウイルス感染症などに感染して運ばれる子犬もたくさんいました。
小さな体で感染症にかかった場合、子犬の体力にもよりますが亡くなってしまうこともあります。流通が増えれば増えるほど亡くなる子犬をたくさん見てきました。
家に迎え入れた子犬が感染症に
今回お話しするチワワの子犬は、ちょうど購入から1週間後での初健康診断での来院でした。
今もチワワの子犬はかなりの高額で売られており、その時の飼い主さんのお話しで、ローンを組んで子犬を購入したとのこと。
飼い主さんいわく、
「家に連れて帰ってからずっと元気だったが、つい一昨日ぐらいから便が緩く、元気も食欲もないです」とのこと。診察してすぐに、便の様子から犬パルボウイルス感染症の疑いで入院となりました。
劇的な回復!がんばったチワワ
そのチワワの子犬はあまりごはんを食べていなかった様子で、本当に元気がなくすぐに点滴治療が始まりました。
吐き気がない限り、日夜スタッフでミルクをあげて汚れたお尻をふく、の繰り返し。
体も小さいし無理かな?と思いましたが、懸命な治療の甲斐もあって無事に回復し退院できることになりました。
犬パルボウイルス感染症にかかった場合、大きな犬でもかなり体力が消耗します。下痢や嘔吐が続き、死を避けられないことも多いのですが、そのチワワはとても頑張りました。
飼い主さんがさっそくお迎えに来た時には、嬉しそうに尻尾をふってチワワ自身も再会を喜んでいるようでした。
不可解な返品
その数日後、ペットショップからの連絡で衝撃の事実を知りました。
実は、連れて帰った飼い主さんが「感染症を患ったチワワを家族として迎えることに抵抗を感じ、返品された」と言います。その事実を聞いたときスタッフ一同絶句しました。
重い症状を何とか乗り越えて、新しい家族のもとに尻尾をふりながら戻っていったチワワが返品された…。
コロコロと環境がまた変わり、体調を崩すことも考えられます。病気をしたからといって返品します、というその感覚が私には理解できませんでした。
チワワのその後
悲しい返品事件から少しして、受付で問診をしていると見慣れたチワワが来院しました。
入院中、ずっと看てきたスタッフは一目でわかります。「返品されてしまったあのチワワ」が、新しい家族と初めての健康診断に来院したんです。
機嫌よく、スタッフに愛想を振りまく様子が、目に焼き付いています。新しい飼い主さんはとっても優しそう!
幸せになるんだな、幸せになってね!と心の中でスタッフはみんな思っていました。
まとめ
今回の体験談は、私が動物病院に勤めていたころのエピソードの中でも特につらい体験でした。でも新しい飼い主さんができて幸せに暮らしていると想像できるから、まだ心がわずかに救われていた気がします。
「一度犬を家に迎え入れたのであれば、すでに家族の一員ではないのでしょうか?」責任感をもって最後まで見届ける飼い主さんが多い中、不可解な理由で手放す人も中にはいます。
ペットショップで販売されている犬猫は、お父さんお母さんと生後間もないうちに離されて、新しい家族のもとへやってきます。自分が飼い主になったとき、お父さんやお母さんになったつもりで接してみてください。
都合が悪ければ交換するなんて思えるでしょうか?人と犬猫は、命の重みが違うのですか?生きているものすべてに尊い命があることを意識して、生き物と接していただきたい。心よりそう願います。