私は現在、動物看護師として動物病院に働いています。毎日色んな種類のワンちゃんが来院し、体格も小型犬から大型犬まで様々です。
その中でも特に小型犬の飼育率が高く、お家での事故や怪我で来院するケースが少なくありません。また力の加減ひとつで思わぬ事故を引き起こし、命に関わってくる事もあります。
今回は飼、い主によって命を奪われた子犬のチワワについてお話したいと思います。
突然死した子犬のチワワ
以前、若い男性の飼い主さんが子犬のチワワのワンちゃんを飼いはじめたとの事で、何度か動物病院に来院していました。
チワワは世界最小の犬種ともいわれており、まだ成長時期の子犬ともあってそのワンちゃんはとても体が小さかったのを覚えています。私たちスタッフに対しても自ら歩みよってくるなど、とても人懐っこくて可愛いワンちゃんでした。
しかしある日の休診時間に、その若い男性の飼い主さんが血だらけになっているチワワのワンちゃんを連れて来院してきました。
私はすぐに獣医師を呼び、診察をはじめました。改めてチワワのワンちゃんを診てみると、ぐったりした状態ではなく、完全に呼吸が止まっていました。
口元を中心に顔中血だらけでひどい状況。すぐに気管挿管をし心臓マッサージをおこないましたが、虚しく残念ながらチワワのワンちゃんはそのまま目覚めることはできませんでした。
何度か来院しており特に先天的な病気も症状もなかったのに、なぜ突然血を吐いて亡くなってしまったのかと理解できませんでした。また、亡くなってしまったことに対して、飼い主の素っ気ない反応がとても冷たく感じました。
体を押さえつけたと証言した飼い主に絶句
獣医師が飼い主さんに命を助けれなかったことを伝え、改めてなぜこんな状態になったのか、何か前兆があったのか聞きました。
私も含め、スタッフ全員が言葉を失いました。私たち人間よりもはるかに体が小さく、まだ体が未熟な子犬の時期は特にほんの些細な衝撃でも大怪我する危険性が高い。
そして犬種が一番最小のチワワであること。まして力が強い男性が手加減なしで体を押さえつけたりしたら、命に直結することもあります。
スタッフの誰もが若い男性の飼い主さんに問いただすことはできませんでしたが、話の内容や状態からみると、子犬のチワワのワンちゃんは飼い主さんによって亡くなってしまったと考えられました。
言い方を変えれば虐待死と匹敵する亡くなり方です。
また命が亡くなったことに対して悲しまず、何の悪気もない様子で平然と話す飼い主さんが全く理解できないどころか、恐怖さえ感じました。
自分の手で一つの命が奪われたことに全く気づこうともせず、胸が苦しくなりました。
まるで物のような扱いで代わりに似た子犬のチワワを飼いはじめる
翌日、その若い男性の飼い主さんから電話がかかってきました。
今まで動物病院で働いてきた中で、死亡したことについての診断書を書いてほしいと言われたことが一度もなく、かつ亡くなった翌日ということもあってなぜ診断書が必要なのか聞いてみました。
反省の色がないどころか自分は全く悪くなく、ペットショップ側に問題があると主張してきたのです。
獣医師と話し合い病気による突然死とは考えられず難しいと伝えましたが、診断書を書けとの一点張りでした。そのため獣医師は当時の状況などを書き、飼い主さんに渡しました。
あの事故から1ヶ月経たない頃に、その若い男性の飼い主さんが新たに子犬のチワワを連れて動物病院に来院してきました。飼い始めた時期を聞くと、あの事故でチワワのワンちゃんが亡くなってからわずか数日後の事でした。恐らく書いて渡したものをペットショップに出し、新たに子犬のチワワとひきかえたのだろうと思いました。
命を何だと思っているのか?私たちと同じたった一つの命で物ではない。悲しみから怒りの気持ちへと込みあげました。
まとめ
その後、若い男性の飼い主さんと新たに飼い始めたチワワのワンちゃんは、一度も来院していません。何事もなければいいのですがどうしているのか、元気に幸せで暮らしているのかと不安に思ってしまいます。
今回はチワワのお話をしましたが体格が小さい小型犬は、たとえ手加減したつもりでも、ほんの些細な衝撃で骨折したり大怪我するケースが多くみられます。
また躾を超えて殴る、蹴るといった虐待によるトラブルも未だに数多く発生しており後を絶ちません。奪われた命は、もう二度と戻ることはできません。
人間によって深く傷つけられた、心も治るまでとても長い時間がかかります。
私たちは犬を選ぶことができますが、逆に犬は飼い主を選ぶことはできません。この悲しい出来事が二度と起こらないためにも命の重さを感じてほしいとそう思います。
そして犬とともに生きるという意味や責任を、改めて自覚し見つめ直してほしいです。