野良犬だった我が家の愛犬「フウちゃん」
先住犬のミニチュアダックスが1歳になり、遊びたい盛りだったのでもう一匹お迎えしたいと思ってはいましたが、「保護犬」どころか成犬は眼中に無く、小型犬のブリーダーさんを検索していました。その時たまたま見つけた『里親募集』のホームページで、保護犬活動されている方のブログにたどり着きました。
その方は、まだまだ野良犬がいる地方や離島の保健所から、殺処分を無くしたい思いで犬や猫を保護されていました。各地のボランティアさん達と協力しあって、空輸で受け入れをされています。
ちょうど離島の保健所から保護され、保健所の中で撮られた数頭の犬の写真の中に「フウちゃん」がいました。
保健所の檻の中で繋がれ、顔には大きなダニが付いていて不安そうな顔をしていました。
1歳位のその犬はどうやら母犬と兄妹犬と一緒に保護されたようです。その後どうなったのか何となく気になってブログを読むようになりました。兄妹犬はすぐにトライアルを経て、新しい飼い主さんが見つかったようです。
うちの子になるまで
新しい飼い主さんが見つかるまで、野良育ちの犬達はボランティアの一般家庭で一時預かりされます。人が怖くないことや、首輪やリードに慣れて散歩する事、他の犬との社会性などを経験させます。フウちゃんは一時預かりさんから、文月の7月から預かったので7月中に飼い主さんが見つかるよう「文くん」と名前をつけてもらっていました。
なぜか文くんが気になって気になって、毎日ブログを覗いてました。一時預かりさんは文くんをとても大切に可愛がって、近況も丁寧にブログでアップしていたのですが、写真の文くんはいつも無表情でした。どうやら母犬や兄妹犬と離れた事で不安だった様です。何度か里親希望の方々とのお見合い会もあった様ですが、文くんにはお声がかからなかったそうです。
そしてついに、気になって仕方のなかった文くんの近況を尋ねるために電話をかけました。すると「文くんは今、トライアル中です」とのご返答。母犬がトライアルに行ったご家庭へ、母犬を恋しがる文くんも一緒にトライアル中との事でした。
喜ばしい事だけれどちょっと残念…と思っていたら「でも文くんだけ返したい、と今日ご相談があったので、トライアル先に聞いてみます」と続きました。すぐにトライアル先から「今から連れて行きます」と連絡を頂き、その日の内に自宅で文くんとのお見合いが叶いました。
初めて会った文くんはガリガリで痛々しいほど腰骨が出ていて、やはり無表情でした。暫く家の中を歩き回り、先住犬のミニチュアダックスに追い回され、お漏らしをし、そして私の膝の上に顎を置いて上目遣いで私を見つめました。何だか泣きそうになってギュウギュウ抱きしめましたが、嫌がらずじっとしてくれていました。
そして3日後、初の『山の日』の祝日に我が家にお迎えし、「文くん」から「フウちゃん」になりました。
トライアル開始
保護犬をお迎えしても、すぐにその家庭の子になる訳ではありません。トライアル期間があります。トライアル期間は飼い主さん側から犬との相性を見るだけでなく、犬にとって良い環境なのか、この先終生愛情を持って最期までお世話出来る家庭なのかを確かめる期間です。
トライアル中や正式譲渡が決まった後でも返される犬もいれば、譲渡条件を守らない家庭からは返してもらう犬もたくさんいる様です。
- 飼い主さんや先住犬との相性が合わない
- 狂犬病予防ワクチン接種フィラリア予防をしない
- 避妊去勢手術をしない
- お留守番の時間が長すぎて、犬と遊ぶ時間がない
- 室内飼いの条件に反し、屋外で繋ぎ飼いしている
- 散歩をしない
- 飼い主さんのアレルギーや体調不良
- 迷子札を付けない
- トライアル中の状況報告が無い
など、厳しく思われる方もいますが、結果的には飼い主さんや保護犬のためになり、新しい飼い主さんにたどり着くまでお世話された、たくさんのボランティアさんの苦労を無駄にしない為でもあります。
トライアル期間は一応1ヶ月となってましたが、うちの場合は家庭環境や飼育状態を視察された結果、一週間後には正式譲渡して頂きました。
視察の際、一時預かりされていたボランティアさんも「文くんに会いたい!」と一緒に来られました。フウちゃんが保護されてからの写真をミニアルバムにして、手作りの犬用オヤツのプレゼントまでご持参いただき、「文くん良かったね、幸せになってね」とポロポロ嬉し泣きをされてました。
数時間いろんなお話をしている間、フウちゃんはボランティアさんや私の膝の上に交互に体を預け、甘えていました。一時預かりの間も愛情を注ぎ、新しい飼い主さんのところで可愛がられる様に大切に大切にお世話されていたんだなぁ、と温かい気持ちが伝わって、この思い以上にフウちゃんを大切にしよう、と改めて思いました。
フウちゃんが笑った日
感情がわからない
成犬、しかも人と暮らした経験のなかった「保護犬」と生活するのは初めてです。ボランティアさん宅で人馴れしたとは言っても、すぐに心は開いてくれていません。正直1ヶ月もすれば打ち解けるだろうと甘く考えていました。フウちゃんはとても大人しくていい子です。
吠えない、唸らない、抱っこさせてくれる、シャンプーもドライヤーもさせてくれる、どこでも触らせてくれる、散歩も行ってくれる。何でもさせてくれるのです。が、本当は感情が表に出せなかったんです。「嫌」も「嬉しい」も「楽しい」もわかりません。いつも無表情です。
オモチャで誘っても遊びません。一人遊びもしないし、先住犬ともじゃれ合いしません。尻尾も振りません。いつも床に丸くなって寝ているか、ペッチャンコに伏せて無表情でこちらを上目遣いで見ていました。
そしてとても怖がりで、誰かが動くたびにビクッと起き上がり、散歩中は人や車とすれ違ったり音がするたびに腰が下がり後退りました…。
覚悟はしていましたが、どんどん自信がなくなって「うちに来ない方が良かったのではないか。もっと相性の良い家庭があったのではないだろうか。この子はボラティアさん宅へ帰りたがっているかもしれない。」と落ち込んだりもしました。
精一杯の感情表現
それでもご飯の時は近寄って来てウルウル目になりますし、私がいつも座っている座布団の上を定位置にしていて、私が座ると足の間に入って来てそっと顎を乗せて来ます。
噛んだり暴れたり逃げ出そうとしたりする保護犬も多い中、フウちゃんは本当に頑張っていました。今のフウちゃんに出来る精一杯の甘え方なんだ、フウちゃんは頑張ってるんだ、と心を開くまで気長に待とうと思う様になりました。
うちに来て1ヶ月過ぎる頃は、だんだんと先住犬ともじゃれ合いを始め、散歩中に他のワンちゃんを見つけて「キュンキュン」と鼻を鳴らすようになりなりました。犬同士なら打ち解け合えるのでは、と思いドッグランに連れて行ってみました。
やっと見られた笑顔
ドッグランに着くとフウちゃんは他のワンちゃんと遊ぶわけではなく、ただただ匂いを嗅ぎ回って歩き回っているだけでした。怖くも楽しくも無い様子でしたが、主人に監視をお願いして私がおトイレに行こうとランから出ようとした時、なんと!フウちゃんがダッシュで走り寄って来ました!
出口の数メートル先で立ち止まり、こちらをジッと見ているフウちゃんに「待っててね」と言ってトイレに向かいましたが、嬉しくてニヤニヤしてしまいました。
トイレから戻るとさらにビックリです。フウちゃんが先ほどの所で待っていて、私を見つけると尻尾をフリフリ笑いながら迎えに来てくれました。こんなきっかけでフウちゃんの笑顔を見る事が出来た上に、私を頼っていてくれたんだと気付き、何かが吹っ切れたように思いました。
現在のフウちゃん
フウちゃんを迎えて、8ヶ月目です。
現在のフウちゃんは、尻尾フリフリ笑顔満開でよく遊びます。仔犬返りしたかのようにイタズラしたり、帰宅した時は全身で喜びを表しますし、寝室で一緒に寝るようにもなりました。
それでもまだまだ怖い事が多く、お互いにどう接して良いのか悩む状況が多々あります。
先住犬にはガッツリ向き合えるような事がフウちゃんには遠慮して出来ない事がまだあります。そんな雰囲気を察してしまうのか、フウちゃんも遠くから様子を伺っていたり、目を合わせない事もあります。それでも、来た当時はまん丸になって全身で警戒しながら寝ていたフウちゃんが、体を伸び伸びさせながら無防備に寝ている姿を見ると愛しくてたまりません。
もっともっとフウちゃんが喜ぶ姿が見たい、楽しい事を見つけてあげたい、笑顔を見たいと思います。
まとめ
これからもずっと一緒に
最近は保護活動の事をメディアなどで知り、ペットショップからではなく「保護犬」を家族に迎える方も増えて来たようです。
成犬はそれまでの育ってきた環境で吠えグセがついていたり、動くものを追いかけ回したり、人をなかなか受け入れない子もいると聞きます。
私はフウちゃんを譲り受ける時に、こう言われました。
「この子との生活が無理だ、と思ったら我慢せずに返してください。それはこの子の為です。飼い主さんもワンちゃんも我慢したり何かを犠牲にしながら生活しても疲れてしまいます。せっかく家族になるのだから幸せになって欲しいんです。」
フウちゃんは今、幸せかな?と考える時があります。まだ自信がない事もあります。でもフウちゃんがいない生活はもう考えられません。フウちゃんもそう思っていてくれると嬉しいです。フウちゃんと出会えるきっかけを作ってくださった保護施設の方々に感謝し、多くの保護犬が新しい飼い主さんに出会えるのを願っています。
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10代 女性 ぽめくる