犬の老化とは
飼い主さんにとって、愛犬にはいつまでも無邪気で元気に健康に生きてくれるのが願いですよね。しかし今までできていたことができなくなったり、好きだったものが嫌いになったり、行動や気持ちに変化があらわれます。これが「犬の老化」です。
近年では、犬の健康に対する飼い主さんの関心が高まっていること、獣医療の飛躍的な進歩、栄養バランスを考慮したペットフードの改良などによって、犬の寿命が延びています。とても喜ばしいことですが、それはつまり犬のシニア期間が長いということです。
一般的に、小型犬は9~11歳、中型犬は8~10歳、大型犬は7~8歳になると老犬とよばれます。犬種や生活環境、食事、性格、運動量などによって異なりますが、この年齢になると見た目や体調に老化のサインがあらわれます。
老犬とよばれる年齢になっても食事をもりもり食べたり、元気に散歩をしたり、元気ハツラツな様子を見せる子もいますが、油断禁物です。犬は「足が痛い」「体調が悪い」と声に出して助けを求めることができないので、今まで以上に日頃から愛犬の様子を観察しましょう。
飼い主さんは、老犬とよばれる年齢やいつから老化のサインがあらわれ始めたのかを、把握することが大切です。
犬の老化のサイン
トイレの失敗が増える
犬がトイレを失敗する原因は、トレーニング不足、マーキング、恐怖心や異常な興奮によるもの、病気やケガ、老化などいくつか考えられます。その中でも、下記のようなものがみられる場合は老化が原因かもしれません。
- 今までできていたのに急に失敗するようになる
- トイレの場所まで我慢できずに漏らす
- トイレの回数が増える
- トイレの失敗の回数が増える
- 興奮したときに漏らす
- 排泄に時間がかかる
- 便の状態が変わる(軟便、下痢、血便など)
これらは、腎臓や膀胱、前立腺などの泌尿器官の機能低下、視力低下や記憶力低下によってトイレの場所が分からなくなる、足の筋力低下によって排泄の姿勢がつらい、などが考えられます。とくに便の状態の変化に関しては病気を発症している可能性があるので、十分に観察することが大切となります。
食事量が減る、食事の好みが変わる
年をとると代謝が低下するため、食欲が減ったり、味の好みが変わることがあります。また嗅覚や味覚も衰え始めるので、お腹が空いたという欲求よりも、「食べても味がしない」「美味しくない」という意欲の薄れが勝り、食事をしなくなる場合があります。
また足や首の筋力低下によって寝てばかりいる子は、食事しようにも「立つのがしんどい」と感じ、自ら食事をとろうとしないことがあります。
逆に、食事をしたあとすぐに食事を要求する場合があります。老犬になって性格がワガママになるケースもあるので、何回も食事を要求することで飼い主さんに構ってもらおうとしているかもしれません。しかし、この行動で気を付けなければならないことがあります。それは「犬の認知症」です。食事をとったあと、異常に食事を要求する場合は認知症が疑われるので、獣医さんに相談しましょう。
歩くのが遅くなる、歩くのを嫌がる
歩くスピードが遅くなったり、散歩に行くのを嫌がるようになります。これは足の筋力低下により、足がすぐに疲れる、足を思うように動かせない、と立つことすらも億劫に感じ、寝てばかりの状態になってしまいます。
実は老犬のほとんどは、後ろ足から衰えてきます。犬の4本の足の運動量は均等ではなく、前足と後ろ足は7:3の割合といわれています。前足に体重をかけて歩いているため、後ろ足は知らず知らずのうちに筋力が低下しているのです。そうなると歩くスピードが遅くなったり、オスワリのときに後ろ足を横に流したりなどの仕草がみられます。
見た目に変化があらわれる
老化がすすむと、見た目にあらゆる症状が出始めます。
- 白い毛(白髪)が増える
- 鼻が乾燥する
- 体にイボができる
- 目が白くなる
- 運動量や筋力の低下により痩せる
- 歯周病により、歯が抜けたり口臭がきつくなる
- 辺りをキョロキョロする仕草がみられる
犬も人間と同じように、年をとると白髪が生え始めます。また犬の鼻は、嗅覚を正常に働かせるために、鼻の腺から分泌される液によって常に湿った状態です。しかし年をとると分泌が減り、鼻が乾燥してひび割れをしてしまう恐れもあります。痛みや細菌感染を防ぐために保湿クリームを塗ってあげましょう。
また最後に記した「辺りをキョロキョロする仕草」は、聴力が衰えていることから起きる仕草です。名前を呼んでも反応が遅い、もしくは反応がない場合は、耳が遠くなっているかもしれません。
犬の老化による病気
老化のサインは、病気の症状とよく似ています。これまでご紹介してきたサインの他に、足を痛がる、足をひきずっている、呼吸困難のような仕草をする、目がうつろ、など犬が辛そうな症状がみられたらすぐに動物病院で診てもらいましょう。老化のサインだからといって放置するのは禁物です。
老化によってかかりやすい病気として、白内障や糖尿病が挙げられます。白内障は、目の中の水晶体が白く濁ることで視力が低下し、進行すると失明に至る場合があります。視力の低下により壁や家具にぶつかることが多くなったり、少しの物音にもビックリするようになります。実は老犬だけでなく、遺伝的要因により6歳以下の若い犬も発症する恐ろしい病気です。
糖尿病は、食事で摂取した糖をエネルギーに変換するインスリンが正常に機能しないために血液中に糖が増え続け、高血糖になっている状態をいいます。症状が悪化すると白内障や腎不全などの病気を併発します。はっきりとした初期症状があらわれないため、動物病院で診てもらったときにはすでに症状が進行していたケースが多くみられます。
犬が老化するなかで気をつけたいこと
トイレの工夫
オシッコやウンチの状態は、体調の変化が顕著にあらわれます。トイレの回数や状態、量などをよく観察し、少しでも変化がみられたら獣医さんに相談しましょう。
トイレの場所まで我慢できずに漏らしてしまう場合や場所が分からなくなっている場合は、トイレの場所までの通路にマットを敷いて分かりやすくしたり、トイレの場所を再度確認させたり、トイレの場所を増やすのも良いでしょう。
また、後ろ足の筋力の低下によりふらつきやよろけるような仕草が見られる子は姿勢がつらいため、自力でトイレをすることができません。愛犬の後ろから腰を持ってトイレの姿勢をさせ、排尿を促しましょう。
老犬に合った食事とサポート
愛犬がシニア期に突入したら、低エネルギーの老犬用ペットフードに変更してあげましょう。老犬になっても食事による必要栄養量は変わりませんが、代謝低下や内臓機能の低下がみられる老犬にとって、今まで与えていた成犬用ペットフードは負担となってしまいます。
嗅覚や味覚の機能低下によって食事への意欲が薄れている子の場合は、嗜好性の高い食事を心がけましょう。しかし与えすぎると肥満になる恐れもあるので、毎回の食事ではなく数日に一度のペースがオススメです。また、ペットフードを人肌程度のお湯でふやかして香りを出すことで、嗅覚を刺激することができるので、食事への意欲や食欲が増すことも期待できます。
食事は健康のバロメーターといわれるほど重要なものなので、飼い主さんは常に愛犬の様子をチェックするようにしましょう。
散歩は欠かさない
「老犬に散歩は必要ない」と思われる方もいるかもしれませんが、実は散歩にはさまざまなメリットがあります。気分転換になったり、筋力の衰えを抑制したり、自然に触れることで探索欲求を満たしたり、血液循環を良くしたり、など。極端に嫌がらない場合や病気でない限りはお出かけしましょう。
老化が進むと、体内の運動機能や体温調節機能が低下します。散歩をする際には、老犬に適した時間帯や所要時間、コースを決めましょう。夏は早朝や夕方以降などの涼しい時間帯、冬は昼間などの気温が高い時間帯にし、季節によって変えていきましょう。
また交通量や人通りの多いコースは避けましょう。視力や聴力、筋力が低下している老犬は周囲への察知能力が衰えているため、ふらつきやよろけることでケガをする恐れがあります。常に愛犬の様子をチェックし、サポートしてあげましょう。
しかし、老犬は「運動したい!」と意欲的な日もあれば、「今日はなんだか動きたくないな…」と歩こうとしない日もあります。愛犬の様子を確認して、散歩の有無を決めましょう。
愛犬の急な変化に驚かない
今までイイコに過ごしてきた愛犬も、年齢を重ねるとともに問題行動が増えてきます。老犬になって飼い主さんを悩ませる問題行動として、多くが「無駄吠え」が挙げられます。今まで一切無駄吠えをしなかった子でも突然するようになったり、他の犬や人に対しても懐っこい子でも警戒心をあらわすようになります。
これは、「老犬の認知症」が原因として考えられます。
突然吠える原因として、
- 耳が遠いため、突然の音にビックリして吠える
- 目が悪いため、突然あらわれるものにビックリして吠える
- 慣れ親しんだ人やものに対しても、忘れてしまって吠える
- 体の不調を飼い主さんに伝えたいため、吠える
これらは犬の内臓機能の低下や心境の変化であるため、仕方のないことです。認知症の疑いがある場合は、獣医さんに相談してみましょう。
犬の老化対策
老化を止めることはできませんが、老化のスピードを緩和させることはできます。8歳を過ぎたあたりから老化スピードが早くなるため、老化を遅らせて健康で過ごせるためにできる対策は何でもしてあげましょう。
犬にとって散歩は運動するためのものだけでなく、内面の改善も望めます。空気や土、草花などの自然を感じて脳を活性化することで認知症を予防できたり、探索欲求も満たされてストレスも解消されます。歩くことが困難な場合は抱っこしたりベビーカーに乗せて、少しの時間でも外の世界に触れさせてあげてください。
また、コミュニケーションを密にとることも大切です。激しい運動は避け、家の中で頭の運動になるようなオモチャを与えましょう。心が満たされるだけでなく、脳を使うことで刺激となって老化防止が見込めます。
まとめ
犬の成長は本当に早いもので、あっという間に成犬になり、老犬になります。今までできていたことができなくなり、失敗が増え、飼い主さんは不安や戸惑いを感じることが多くなるでしょう。しかしそれは犬自身が一番感じていることで、飼い主さんはそれをサポートするよう努めなければなりません。
ここでとても大切なのが、決して叱らないことです。
犬は飼い主さんの不安や戸惑い、イライラなどの感情を読み取ることができる動物なので、「飼い主さんがイライラしている」「叱られないようにしなきゃ」と萎縮してしまいます。
トイレの失敗、食べ物の好き嫌い、うまく食事ができないこと、うまく歩けないことは老化によって起きてしまうことなので、飼い主さんは、老化現象とはこういうことと受け入れることが大切です。
ユーザーのコメント
20代 女性 ろく
女性 匿名
散歩は大好きで朝晩行きますが、少し足りないようです。
歯の健康が気になっています。歯磨きウォーターと歯磨きガムを食べているのですが、歯磨きを嫌がるので歯垢が付いてしまいました。
遊びはほとんどしません、誘ってみます。
女性 ReiMeria
全ての飼い主様が、わんちゃんの一生を大切に幸せにしてくださる事を願っています。
40代 女性 み〜
40代 女性 匿名
記事にもあるように、家でずっと寝ていては刺激もないですし、外に連れて行きお日様に当たるとビタミンDも吸収して骨も強くなるかと思います。少しの距離でも他の犬のニオイを嗅いでストレス解消させたり、歩くことで筋力のアップにもなるのでゆっくりとでも続けたいと思っています。我が家の例ですが、肉球が擦れて痛そうに歩いていることがあったのですが、その事を可哀想だからと出なくなってはどんどん衰えてしまうので、擦れた足だけ犬用の靴下を履かせて(写真有)歩かせてみたら、痛くなくて調子良く歩いてくれました。何かあった時には工夫しながら散歩させるのも大事かと思いました。
40代 女性 SUSU
記事にもありましたが、老化を防止するには人間と同じように脳の刺激が大事なのだと痛感しています。
我が家では、時間のとれる日の日中でよく晴れた日は、家のテラスで日向ぼっこに誘うようにしています。真夏は短時間ですが、それでもお日様に当たれることがとても嬉しいようで誘うと尻尾フリフリ喜んでついてきてくれます。人間と同じように、歳を取ると冷えやすくなるようでお日様で温まると元気になっておもちゃで遊びだすことも多いように思います。
また、食後にオヤツをあげる際には、ラバーボールでおやつを入れられるようになっているおもちゃを使ってオヤツをいれて渡したり、愛犬の見ている前で空き箱におやつを入れてガムテープで密閉して取ってみてくれる?と声をかけてから渡すようにしています。
おもちゃや空き箱をブンブン振り回しながらどうやったら開けられるか、考えて開けているようです。
その他、家族と散歩に出るときには、○○に一緒にお散歩しよう!って誘ってくれる?と話しかけたり、お友達のワンコとお散歩中にそのワンコが止まってしまった時には迎えに行こうか?と伝えることも心がけています。日常の何でもない出来事ですが、状況と飼い主が話しかけた言葉を理解して行動すること、これはとても頭を使うことであり、脳への刺激になると思います。飼い主とのコミュニケーションの質も上がります。
友人が愛犬と同じ年齢で同じ犬種の女の子と暮らしていますが、1年程前に歯周病から全体の1/3の量を抜歯しました。経過は良好ですが、友人曰く、老化のスピードが早まってしまったように思うとのことでした。人間でも物を噛めなくなると一気に歳を取ってしまうという話はよく耳にしますが、ワンコも同じなのかもしれません。
愛犬も歯磨きは決して好きなわけではありませんが、抜歯せずに過ごせています。歯磨きガムはその効果に疑問があったり、成分を不安視する声もありますが、ガムだけでなくロープや軍手など歯石が取れやすいものをおもちゃにしたり、いろいろと工夫しているのも功を奏しているのかもしれません。
私達も歳を取ります。愛犬が老いてもそれでも宝物であることには変わりはないのですが、出来るだけ長く一緒にいられるよう、出来ることは何でもしていきたいと思っています。
女性 MAHE
早めてしまう行動は、誰もが勘違いしそうなことだと思います。特に一番目のお
散歩について、行くのを止めたり回数を減らしたりしている人が多そうです。