犬が登場する小説のおすすめ5選
私の愛すべきものは「動物」と「読書」。上には上がいるので自慢にもならないですが、ひと月に読む本の冊数はおよそ10冊から15冊程度です。その中には「動物の出て来る本」もたくさんありました。
コミック、絵本、エッセイ、小説とジャンルは多岐に渡ります。様々な物語の中で「動物」は人間の良き伴侶として存在しています。
今日は私の読んだ本の中から、「犬」が出て来る素敵な本を紹介したいと思います。
愛犬を亡くしてしまったあなたへ。江國香織『デューク』
それなりに本を読む犬好きの方なら、結構な割合で手に取っているであろう1冊。読んだことはなくても、その物語の存在は知っているのではないでしょうか。
内容紹介
たくさんの愛情を注ぎ、共に生きてきた愛犬の"デューク"が死んでしまい、主人公の"わたし"は酷く絶望する。
デュークとの楽しかった日々を想い、子供のようにぼろぼろと泣くわたしの前に、ハンサムで不思議な少年が現れた。
デュークを愛おしいと思う気持ちが起こした、奇跡の一日の物語です。
『つめたいよるに』という、21編からなる短編集に収録されているお話の中のひとつです。この作品自体の人気度が高く『デューク』という単独作品の絵本も出版されています。
私自身も、逝ってしまった愛犬たちがもしも人間だったら一体どんな姿だったんだろう、と想像しながら読みました。
江國香織さんの文章は浮遊感があって、リアリストの私は正直ちょっと苦手です。その上、ファンタジーも好んで読むジャンルではありません。
しかしそんな私でも、何年経っても手放せないでいる物語。犬好きなら間違いなく心があたたかくなる1冊です。
犬があなたに伝えたいこととは?山口花『犬から聞いた素敵な話 涙あふれる14の物語』
前半は「飼い主から犬へのメッセージ」、後半は「犬から飼い主へのメッセージ」が7編づつ計14編が収録されたショートショート。
内容紹介
全体的に泣かせようという意図が見えるですが、判っていてもまんまと泣かされてしまいます。まさに犬と人間の絆の強さを感じることの出来る1冊。
人間とは違って、驚く程の早さで老いていく犬たち。
前半の「飼い主から犬へのメッセージ」の章を読んだ際には、共に過ごし、そして逝ってしまった愛犬たちを想い、後半の「犬から飼い主へのメッセージ」の章を読んだ時には、逝ってしまった愛犬たちもこんなふうに、私を想ってくれたのかな、と思い出を振り返りました。
ショートショートなので、正直それ程深い話ではなく、さらりと読めます。しかし、犬を愛し、犬に愛され、共に生きていくことの素晴らしさを確認出来る1冊です。
活字を読むのが苦手な人でも手に取りやすいと思います。第2弾として『あなたと暮らせてよかった―犬から聞いた素敵な話』があります。
犬との絆を再確認したいあなたへ。馳星周『ソウルメイト』
7犬種の犬が紡ぐ、愛の物語です。最初に著者を見てびっくり!暗黒社会を舞台にした『不夜城』で大ヒットを飛ばした馳星周さんではないですか。
そして中身を見て、二度びっくり!そこには涙あり、笑顔あり、感動あり。
犬に対する行いを後悔する人間と、それでも人間を見捨てずにいてくれる犬たちのやさしい物語が綴られていました。
内容紹介
それぞれのお話のタイトルが犬の種類になっています。第1章の「チワワ」では過去に家族を裏切ったことで、たった一人で妻を看取る罰を受ける男性とそれに寄り添うチワワの話。
「ボルゾイ」ではいじめられっこの少年が、新しい父親とその愛犬と本当の家族になるまでを描き、「柴」では自分の代わりに母親を守ってくれていた愛犬を被災地に探しにいく男性の絶望と希望を描いています。
他にも「ウェルシュ・コーギー・ペンブローク」、「ジャーマン・シェパード・ドッグ」、「ジャック・ラッセル・テリア」、「バーニーズ・マウンテン・ ドッグ」を題材にしたお話が収録されています。
その犬種の特徴や飼い方もしっかりと物語に組み込まれていて、安易に犬を飼うことがどれだけ愚かなことかも教えられます。
「かわいいから」「気に入ったから」「ペットショップで目が合った」……etc。
それぞれの犬種の特徴、掛かりやすい病気、その場合の対処法。全てを理解した上で飼っている正しい飼い主はどれだけいるのでしょう。私も例外ではありませんでした。
因みに「バーニーズ・マウンテン・ ドッグ」を題材にしたお話は著者の体験が軸になっていると思われます。この本では小説というカタチを取っていますが、『走ろうぜ、マージ』という作品では日記形式で愛犬・マージとの闘病生活が描かれていて、涙なしでは読めません。
『犬は人間の伴侶だ』と再確認したい方におすすめの1冊です。シリーズ続編として『陽だまりの天使たち ソウルメイトII』もおすすめします。
愛犬のためにも長生きしたいあなたへ。ポールオースター『ティンブクトゥ』
ミスター・ボーンという犬が主人公の、犬目線で語られる物語です。
内容紹介
ミスター・ボーンは主人のウィリーが大好きだが、彼の寿命が近々尽きることを知っています。ミスター・ボーンの世界はウィリーが全てだったのに。
ウィリーと別れ、生まれてはじめてたった一匹での大冒険。目的は新しい飼い主探し。しかし誰に愛情を貰っても、ウィリーといた時程、心を満たされることはなく…。
犬としての無垢さ、ひたむきさには純粋に胸を打たれます。でもそれだけではなく、ミスター・ボーンはとてもユーモアがあって知的。それなのに、時々、自虐的なところもあって愛おしい。
ミスター・ボーンが一心に向ける愛情が、我が家のペットたちとダブり、私はそれを受け取る資格があるのかと不意に考えてしまいました。
『私の願い』それはペットよりも長生きすること。ペットに寂しい思いをさせないこと。そしてミスター・ボーンがウィリーのいるティンブクトゥ(桃源郷。天国のような場所?)へ行けますように。
あなたも犬からのラブレターを受け取ってみませんか?
もしも愛犬が小説を書いていたら!?町田康『スピンク日記』
芥川賞作家の町田康さんの家にはおよそ10匹の猫と、3匹の犬とが暮らしています。そんな町田さんは「あなたは猫を何匹飼っているのですか?」と聞かれると、答えに困ってしまうそうです。
なぜなら町田家は飼い猫の他に、保護団体から預かっている病気を患っている数匹の猫がいるからです。
もちろん分け隔てなく接しています。
だからこそ「猫を何匹飼っているのですか?」ではなく「おたくには何匹猫がいますか?」と聞いて欲しいそうです。同じような経緯で人間に捨てられた3匹の犬も飼っていらっしゃいます。
内容紹介
この本は町田家の飼い犬となったスピンクが、飼い主である町田さんのことを「ポチ」と呼び、スピンクの視点から日常を描く、言わば現代版『我が輩は犬である』です。
スピンクを通して、自分の変人っぷりを暴露している町田さん。スピンクはいかに町田さんがダメ人間かをおもしろおかしく語っていますが、町田さんはダメ人間なんかではありません。
人間に酷い目に合わされた動物たちを引き取り、愛情たっぷりに育てている慈悲深い人だと思います。
保護犬や捨て猫をかわいそうだとは思っても、実際に引き取り、共に生きるのは並大抵の覚悟では出来ません。そう言った意味でも、私は一人の動物愛好家として町田さんを尊敬します。
町田さんの独特の文体を「町田節」と言いますが、この本も町田節が効いています。慣れるまで読みにくいと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、一度そのリズムに慣れてしまうととても心地よいです。
「うちの犬もこんなことを思っているのかな?」と想像して、ほっこりしたい方におすすめの1冊です。
因みにこちらもシリーズ化しております。興味のある方は『スピンク』シリーズの他に、『猫にかまけて』シリーズを一緒に読むことをおすすめします。
命を預かる町田さんと奥様の真摯な姿勢に必ず胸を打たれます。
まとめ
今回は様々なカタチで、愛すべき犬たちが出て来る小説をご紹介させて頂きました。
人間の後ろ盾がなければ生きるのが難しい彼らは、いつの時代も人間の最高のパートナーとして、愛情や信頼と言った一番大切なものを私たちに捧げてくれるのです。
作家のアグネス・スライ・ターンボールは言いました。
「犬の一生は短い。欠点はただそれだけである」
私も同じ気持ちです。
あなたも大好きな犬を想って、ワンダフルな1冊を手に取ってみてはいかがでしょうか?
ユーザーのコメント
50代以上 女性 ミロ
犬が出てくるミステリーや映画のお勧めも見てみたいですね。個人的に猫も小鳥も可愛いと思うけど、とことん自然に気持ちが通じる犬はやっぱり特別な存在。あ、でも、感動話は泣いてしまうので遠慮です。
30代 女性 ちびまま
記事に載っている本はまだ一冊も読んでいません。(犬から聞いた素敵な話)は読みやすそうななので、こちらの本から読んでみたいと思います。
30代 女性 mika
しかし、犬を飼う私たちにはリアルな現実です。今まで読まず嫌いのように避けしまっていましたが、少し気になります。
40代 女性 まみ
私個人としては江國香織さんの作品は以前から好きなので、『デューク』を読んでみたいと思いました。
20代 女性 かねごん
亡くなった犬と人間のお話でありがちな文章だとは思ってはいますが、やはり私も飼ってた犬を亡くした経験がありますのでその時の気持ちとリンクしてうちのわんちゃんもこうやって思ってくれてたのかな?などと考えてしまうと涙が止まらなくなります。
大切なわんちゃんが亡くなるのはとても悲しいことです。私もペットロスになりかけていた時あえてこういったお話を読みたくさん泣きました。
30代 女性 xoxo
作家さんのエッセイなどを読むと、ペットの犬や猫とのやり取りがたまにあって、その方の背景を知れるとても好きなシーンです。そっか、この人は猫を飼っているからあの作品にもあの作品にも猫が出てくるんだな、とか。小説には、猫や犬がちょっとしたシーンに描かれていることが多くて、どうしても犬を飼っているとその情景を思い描いてしまいます。
犬が出てくる小説というと、「白い犬とワルツを」はいかがでしょうか。確か映画化もされていました。
女性 きなこ
女性 みかんぱん
犬が登場する映画などは良く観るのですが、犬が登場する本はそんなに読んだ事がないので面白そうですね。
基本的に小説は好んで読むのですがファンタジーなども好きですし、犬目線のお話だったり、愛犬を亡くした方のお話だったり。
〝デューク〟は、さっそくネットで注文しようと思いました。
愛犬を愛おしく思う気持ちは飼い主なら誰でもあるんじゃないかと思います。その気持ちが奇跡を起こすという、愛犬が人間だったらどんなんだろう?と私も思った事はあるので、ぜひ読んで見たいですね。
他の紹介されている小説もぜひ機会があれば読んでみたいです。
女性 きょん
40代 女性 R
最近すっかり涙もろくなった私としては、本の世界はワクワクドキドキ楽しい笑えるものが欲しい。
犬好きにおススメの、楽しくて笑える本を紹介して欲しかったです