金沢のタクシー会社が盲導犬の乗車拒否で行政処分に その背景にあるのは

金沢のタクシー会社が盲導犬の乗車拒否で行政処分に その背景にあるのは

北陸新幹線開業から1年。多くの観光客でにぎわう金沢で、タクシーが盲導犬の乗車を拒否するという事態が起こりました。その背景には何があるのでしょうか。詳しく解説していきます。

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金沢市で起きた乗車拒否について

石川県金沢市内の交差点付近で、盲導犬を連れた60代の視覚障害者の男性がタクシーに乗ろうとしたところ、タクシーの運転手から、「盲導犬を乗せると車内が汚れるからだめだ」などと言われ、乗車を拒否されました。

男性から苦情を受けたタクシー会社や石川県タクシー協会が事実を確認し、報告を受けた北陸信越運輸局石川運輸支局は、この運転手が所属する金沢市内のタクシー会社に車両停止の行政処分を科す方針を固めました。

犬1

法と認識の大きな隔たり

法律の整備などにより、これほど盲導犬の存在が世の中に認知されてきたと感じる昨今においても、このような事態が起きてしまいました。
今回の問題で明らかになったのは、法律とその運用・認識の大きな隔たりでした。

法律と縦割り行政

実は今回の件で行政処分の対象となるのは、あくまでも「正当な理由なしに乗車を拒否してはならない」という道路運送法に反した「乗車拒否」に関してのものです。
道路運送法の所管は国土交通省です。

一方、盲導犬のタクシーやバスの原則乗車を定めた身体障害者補助犬法の所管は厚生労働省で、こちらの法律の規定では、盲導犬の原則乗車は努力義務となるため、違反しても事業所に対して「改善を求める」ことしかできません。
「盲導犬の乗車拒否」という1つの法律違反に対して、「盲導犬」「乗車拒否」という2つの対応と解釈があるのは、縦割り行政の弊害としか言いようがありません。

改善の兆し

このように、盲導犬の乗車拒否に関して現在は道路運送法と身体障害者補助犬法の適用となっていますが、今年(2016年)4月から新たに「障害者差別解消法」が施行されます。
これにより、「盲導犬の乗車拒否」をした事業者に対して、厚生労働省が指導や勧告の行政措置を行えるようになります。

行政処分に比べてまだまだ甘い対応ですが、改善の兆しの表れではあります。

事業者の認識

今回問題となったタクシー会社では過去に、盲導犬を乗せた際、座席などに大量の毛が付着し、後から乗った乗客から苦情を受けたことがあるそうで、運転手はそのことを理由に挙げて乗車を拒否したということです。
当然このような理由は乗車拒否の正当な理由にはなりません。また、同様に盲導犬受け入れに関する問題はタクシーに限らず、他の公共交通機関や宿泊施設でも起きており、日本盲導犬協会には常に相談が寄せられています。
前述したように、まだまだ欠けるところはあるというものの、法の整備は進んでいます。
それなのになぜこういった問題が後を絶たないのでしょうか。

上層部と現場の認識の隔たり

法律の整備に伴い各事業者でもその理解は浸透し始めており、事業者としては盲導犬の受け入れを推進しているように見えます。
しかし実際にはこのように問題が起きています。
それは上層部で法律の理解が進んでいるというだけで、末端である現場に即した運用や指導がされていないということです。

犬は被毛で覆われており、当然毛は抜けます。
今回の件で言えば、盲導犬が乗車した後、次の乗客を乗せる前に掃除はしなかったのでしょうか。

あらかじめ、ハンディタイプの掃除機や掃除用の粘着シートなどを車内に常備しておけば難しいことではないはずです。

準備をしていなかったのなら、それは盲導犬を乗せることがあるという、当たり前の前提がなされていなかったということです。
つまり、現場の最先端で働く運転手に、苦情が来るほど大量の毛を車内に残したまま営業させた、車内の清掃を徹底させなかった、清掃の準備や時間を与えなかったタクシー会社の責任です。
言うまでもなく、運転手に盲導犬の乗車拒否をさせてしまったのも会社の責任です。

犬2

まとめ

テレビなどでときどき特集がなされるなど、盲導犬の認知度はすでに低くはないでしょう。
しかし、私たちは本当に盲導犬のことを理解しているでしょうか。

「人の言うことを聞いてえらいね」
「人の役に立っておりこうさんだね」

実はそのような認識しか持ち合わせていないのかもしれません。

そもそも盲導犬のような使役犬は、とても厳しい訓練を受けています。
したがって、たとえば排泄物で公共交通機関や宿泊施設を汚すなどということはあり得ないわけです。
きちんと理解がされていないために、今回のような盲導犬の乗車拒否という事態が起こるのです。

これはタクシー運転手一個人だけの問題ではありません。
一個人が責められる問題ではなく、社会全体で考えていかなければならない問題なのです。

今回の一件は、男性の申し出により発覚しました。
そのおかげで社会に一石が投じられた結果となりましたが、もうこのような事態が起こらないよう、私たちは真剣に考えていかなければなりません。

法律の整備も当然必要ですがそれだけで解決するわけではありません。
それだけで満足していてはいけないのです。

社会で生きるすべての人が、平等に権利を享受できる世の中でなくてはなりません。
世の中を動かすのは私たち一人ひとりの力なのです。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    40代 男性 レガリテリベルテフラテルニテ

    上層部がわかってないよ。
    今日盲導犬の客が乗ってきました。
    私は身体障害者補助犬法を知らないです。
    道交法では動物はゲージに入ってる場合でしか法律で載せる事は出来ないのです。
    ですのでその場で会社に電話して所長に尋ねたのです、そしてこのような答えが返ってきました。
    “そういう場合は運転手の裁量に任せてるんだ。”という答えでした。
    運行管理者もこの程度で、知らない事を知らないと言えないほどのレベルです。
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