ドーベルマンが断耳と断尾する理由
生まれたてのドーベルマンは、垂れ耳で長いしっぽなのをご存じでしたか?立ち耳と短いしっぽのイメージが強く、日本では飼育頭数があまり多くないドーベルマンなので、知らない人も多いでしょう。ドーベルマンの断耳・断尾については世界でもさまざまな意見があり、ドーベルマンの発祥の国であるドイツやヨーロッパ諸国では禁止されています。
現在日本では断耳・断尾について禁止されていませんが、動物愛護の観点から反対する意見や、ドーベルマンのブリーダーのもとにも「断耳・断尾しないでほしい」という購入者が多いようです。では、なぜドーベルマンは断耳・断尾をするのでしょうか?それは、ドーベルマンの歴史が関係しています。
1890年ごろ、ドイツで税金の徴収をしていたカール・フリードリヒ・ルイス・ドーベルマン氏が、常に現金を持ち歩くという不安や危険性を払拭するため、「護衛犬として有能で、かつ外見も恐怖を与え、人を寄せ付けない犬」としてドーベルマンを作り出しました。その能力と威圧感や勇敢さが人気を集め、ドイツの警察犬として働き、第一次大戦でも軍用犬として活躍していました。
日本にも1930年ごろに大量のドーベルマンが軍用犬として輸入されています。このようにもともとは護衛犬であったため、立ち耳にすることで聴覚を鋭くし、しっぽを短くすることで少しでも傷つきやすい部分を少なくしたり、外見の印象に威圧感を持たせるために、断耳・断尾を行っていました。
また犬種標準(スタンダード)には、犬種ごとに決められた標準的な容姿、繁殖指針として犬のあるべき姿が定められています。見た目に関することが細かく決められており、ドーベルマンの耳やしっぽに関しては下記のように定められています。
- 耳:高位に付け根を有する耳は直立して維持され、かつ頭部に比例した長さに断耳されている。国で断耳が禁じられている限りでは、末断耳の耳も同様に承認される(ただし耳は中等の大きさで、前縁が頬に接していることがのぞましい。)
- 尾:尾は高位に付け根を有し、かつ短く断尾されており、その場合、尾椎骨2個は明白に維持されている。
断耳と断尾する犬種
断耳をする犬種
・シュナウザー
・ドーベルマンピンシャー
・ミニチュアピンシャー
・グレートデン
・ボクサー
・ボストンテリア
・マンチェスターテリア
・ナポリタンマスティフ
・ブリュッセルグリフォン
など
断尾をする犬種
・ヨークシャーテリア
・プードル
・シュナウザー
・ウェルシュコーギー
・ミニチュアピンシャー
・ジャックラッセルテリア
・コッカースパニエル
・ドーベルマン
・ボクサー
など
この犬種標準に合わせるためだけに、断耳・断尾をしている犬種がドーベルマンを始めとして多くいます。
ペットとして飼われている犬の場合、オオカミなどの敵に襲われたり、牛にしっぽを踏まれるなどの心配がないので、現在の多くの犬は断耳や断尾が必要ないといえます。
ヨーロッパ諸国では断耳や断尾は禁止されており、日本でも断耳断尾を反対するブリーダーや飼い主さんの希望により、たれ耳のドーベルマンやしっぽがあるコーギーを見かけるようになりましたが、まだ完全に無くなったわけではなくJKC(ジャパンケネルクラブ)は容認する姿勢をとっており、動物愛護法の中にも、禁止する条項は見当たりません。
上記の犬種を迎え入れる際は、犬種標準ではなく、断尾や断耳とはどのようなことをするのか?を具体的に知った上で、愛犬に本当に必要なのかをじっくりと考えたいものです。
ドーベルマンが断耳と断尾する時期
ドーベルマンの断耳とは
ドーベルマンの断耳は外科手術によって耳の一部を切り、直立耳を作り出します。「子犬の時期に手術による苦痛を与えるなんてかわいそう」と思われる方も多いでしょうが、慣れた獣医さんが行うと短時間で終わる手術です。
生まれたてのドーベルマンは垂れ耳ですが、生後7~10週齢のときに断耳の手術を行います。これは耳の軟骨が固くなり始める時期が生後7~10週齢だからです。手術をしたあとはイヤーパッドで真っ直ぐに立った状態に固定し、軟骨を固まらせます。固定中は毎日のケアと定期的なイヤーパッドの交換が必要となります。2~3ヵ月間固定し続けることで、ピンッと立った耳を作ることができるのです。断耳は、手術そのものは短時間で終わりますが、この固定するためのアフターケアに長い時間と飼い主さんと犬両方への負担が必要となります。
やはりピンッと立った耳のイメージが強いからか、垂れ耳のまま成長したドーベルマンを見ても、ドーベルマンだと認識する人が少ないといわれています。垂れ耳のドーベルマンは優しい雰囲気と可愛らしさがあり、こんなにも印象が変わるものかと驚きます。
ドーベルマンの断尾とは
ドーベルマンの断尾は、生後3~7日に外科手術によってスタンダードで決められている位置で切ることで、短いしっぽを作り出しています。
ドーベルマンの断耳と断尾をするメリットとデメリット
断耳・断尾のメリット
一部の人は「断耳することで感染症(耳の中がむれて虫や雑菌が繁殖する)を予防」したり、「犬の聴覚を高める」と主張しているようですが、これには明確な統計や医学的な根拠がないとされています。
断尾は、現在でも狩猟や牧羊に従事する犬にはメリットかもしれませんが、ペットとして飼われる犬にはメリットや必要性はありません。
断耳・断尾のデメリット
犬のしっぽは、体のバランスをとったり、方向を変える際に舵の役割などの面があります。 しかし断尾をした犬の場合、しっぽのかわりに腰を使って補おうとする結果、腰に負担がかかり、椎間板ヘルニアなどのリスクがあるといわれています。
また、犬にとってしっぽや耳は自分の気持ちや意思を表す役割もあります。しっぽがなければ犬同士のコミュニケーションにも支障がでることが考えられます。
耳もしっぽもどちらも体に傷をつけることになるので、痛みや出血、細菌による感染症のリスクもあります。
ドーベルマンの断耳と断尾は必要?
日本では飼育頭数が少ないドーベルマンですが、意外とみなさんの周りに断耳・断尾をしている犬種は多いのではないでしょうか。とくに断尾に関しては、家族として迎えたときにはすでに手術が行われているため、「もともとしっぽが短い犬種だと思っていた」と思い込んでいた飼い主さんも多いといわれています。ドーベルマンの断耳・断尾については、さまざまな意見があります。
断耳・断尾をする意見
- 垂れ耳を立ち耳にすることで耳の中が蒸れず、病気を予防できる
- • 垂れ耳を立ち耳にすることで、さらに聴覚を鋭くすることができる
- 軍用犬として仕事をする上で、弱点となる部分を少しでも無くす(外傷や凍傷を負いやすい部分を減らす)
- 軍用犬として仕事をする上で、外敵にしっぽを踏まれるのを防ぐ
- 犬種標準に合わせることで、あるべき姿としての美しさと完全性を見出せる
などが挙げられます。もともとはケガや病気をしないように、予防として断耳・断尾をしていたと考えられます。ドーベルマンという犬種に惚れ込み、誰よりも身近にいて愛情深く接しているブリーダーさんからしてみれば、ドーベルマンの歴史やあるべき姿を守り続けようと努力していることも確かです。
断耳・断尾を反対する意見
- 家庭犬として飼っているドーベルマンに、断耳断尾の必要性を感じない
- 犬種標準に合わせるために断耳・断尾をするのは、動物虐待
などが挙げられます。家庭犬として飼っているのに、断耳・断尾をする必要がないという意見が目立ちます。今もなお、実際に警察犬として活躍しているドーベルマンだけでなく、猟犬として飼い主さんと一緒に獲物を狩る犬種、家畜を統率するための働く犬種などが予防として断耳・断尾をしているのは分かりますが、家庭犬として飼われているドーベルマンに果たして断耳・断尾は必要なのか?という疑問の声も上がっています。
ドーベルマンの断耳と断尾に必要な費用
断尾に関しては、生後数日で行われます。動物病院によって異なりますが、費用はおよそ2~3万円となっています。断耳に関しては行うことができる獣医さんが少なく、通うまでの費用や受診料を考えると、動物病院によって異なりますが費用はおよそ5~15万円となるでしょう。
まとめ
「ドーベルマンはピンッと立った耳がかっこいい」「断耳・断尾は動物虐待だ」など、ドーベルマンに限らずですが断耳・断尾について賛否両論です。飼い主さんの趣向、ドーベルマンへの想い、断耳・断尾への考え方などが人によって全く違うので、難しいところです。
結果、断耳・断尾をしようがしまいが、飼い主さんと愛犬が幸せならどちらでもいいのかなとも思います。もしドーベルマンを飼うとしたら、あなたはどちらのドーベルマンを選びますか?ピンッと立った耳と短いしっぽを持つ、ドーベルマンとしてのイメージが強い子か。ドーベルマンのイメージとは違う、垂れ耳が可愛らしい本来の姿か。正直、悩んでしまうところではないでしょうか。
ユーザーのコメント
30代 女性 Chappy
もともとはドーベルマンは使役犬だったかもしれませんが、今は一般家庭で飼われているワンちゃんをなぜ断耳、断尾をしなければならないのかがわかりません。ワンちゃんが痛い思いをするだけですよね。
昔からの歴史などもわかりますが、私はやるべきではないと思いました。
40代 女性 Haru
社会も人の意識も進化してきています。かつては常識だったことが現代では非常識となったり、誰かや何かを傷つけるものであれば、伝統であっても捨てねばならないこともあります。
さて、以前、TVにもよく出演しておられた有名な獣医さんの本には、ドーベルマンの断尾、断耳は飼い主と犬とが共に乗り越える大切な儀式であり、これによって本当に絆が強まる、というようなことが書かれていたのを読んだことがあります。賛否はともあれ、そういう考え方もあるのか、と思いました。
いっぽう、断尾した犬はしっぽの付け根が常に緊張して固くなりがちであったり、幻肢痛のようなものを感じているという説もあります。
過去の歴史に基づいて、ではなく様々な要素を総合して考えるべきことだと思います。
20代 女性 すず
わたしはわんちゃんは家族として一緒に生活するだけなので全く必要のないことなのです。わんちゃんがどうやって生きていくのかにより必要なわんちゃんもいると思いますが大好きなわんちゃんがそういったことをされている子もいると思うと胸が痛みます。
50代以上 女性 小桃のかあやん
しかし、それは人間によって作られた姿であり、ドーベルマン本来の姿ではありません。
断耳や断尾が、その犬種独特の病気などを防ぐという意味があるならともかく、人間の都合で犬を傷つけ、形をかえてしまうのはいかがなものでしょうか。
今、ペットとして飼育されている犬は、人間と同じ環境で暮らし、使役されることはありません。そして、特に必要もないのにわが子(ペット)に傷をつける飼い主がどのくらいいるでしょうか。おそらく、皆さんは自分の大怪我より、ペットの小さな傷の方が心配なくらいではないですか?
こんな時代に断耳や断尾は不必要です。
20代 男性 go
女性 シューバート
30代 女性 はなぽん
50代以上 女性 匿名
私のドーベルマンのイメージは断尾・断耳を施した外見が強いです。
それもその犬種の特徴と言えるのではないかと_。
男性 匿名
使役犬としての歴史的背景からの外見を重視するのか、生まれたままの姿で構わないと思うのか、
どちらの言い分も明らかな間違いとは言えず、現にEU圏内でも断耳、断尾を禁じていない国からドーベルマンを輸入したり、そういう国で手術をする例があるようですし、
断耳、断尾を禁じたことでドーベルマン人気が低迷したという話も耳にします。
これはあまりに極論かもしれませんが断耳、断尾をすることイコール虐待と定義付けしてしまうのも些か幼稚な感情論に思えてしまう場合もあります。
現に断耳、断尾されてなくとも虐待されている犬は存在しますから…
私としては断耳、断尾を施そうと施すまいと、飼い主が持てる愛情の全てを注いでいるかどうかが犬にとっての一番の幸せではないかと思います。
女性 福ちゃん
女性 バニラ
でも垂れ耳のド―ベルマンもとってもかわいいです。
断耳、断尾は賛否ありますが、やはり飼い主さんが考えて決めることだと思います。
私は犬と飼い主さん家族が幸せならどちらでもいいと思います。
女性 ゴン吉
ですが実際に警備など現場に置く場合は、見た目も大事になるでしょうからそれは飼い主さんの判断ですね。
女性 コロ
外見重視では犬の中身を見ていない気がしています。
30代 女性 はな
私はてっきり、そうしなければ重大な病気になるのだと思ってTVなどを観てました。
慣習で言いにくい雰囲気がある…というだけで今も反対意見をオズオズ言わないといけないなんて。
「賛否両論」なのがおかしな話です。
ブリーダーが麻酔を行わず切り落とす(最もお金がかからない方法)のを
虐待といわずして、なにを虐待と呼べばいいんでしょう。
必要があるから生えてるものを切り落す人こそ、究極の過激派です。
「人気が廃れるかもしれない」
…それで不利益をこうむるのは、その犬種を売り物にして商売をしている
ブリーダーやペットショップで…犬自身ではありません。
かえって、無理な繁殖で不幸になる犬がいなくなるくらいでしょう。
生きものに人気やブームというのが、そもそもオカシイ。
犬自身は、終生愛情をもって育てられればそれが1番幸せです。
女性 もふころ
ドーベルマンのあの見た目が良いとされる方がいるのもわかりますが、整形のように人工的に作られた見た目だとわかっているのかなと思います。産まれたままでいいと思います。
30代 男性 プログラマー
20代 女性 いつかドベを飼える日を夢見る人
立ち耳や尻尾が人為的に切られていると知った時はとてもショックでした。
人間のエゴで切られていると言っても過言ではありません。
ですが私は立ち耳のドーベルマンが好きで、自分の気持ちを否定できないとも感じました。
「見た目重視で中身を見ていない」と思う気持ちは分からなくもないですが、
実際に一緒に暮らしてみないと、その子個人の性格なんて分からないと思います。
保健所にはお迎えを待っている沢山の犬がいる中、犬種や血統にこだわって
お金を払って買っている時点で、それも人間のエゴだと思います。
だからと言って断耳・断尾という苦痛を与えていい理由にはなりませんが、
少なくともそうすることによって、その子の性格がどうであれ自分が与えられる全ての愛情を
生涯その子に注げられるという自信が生まれるのであれば、
断耳・断尾は虐待だから反対と一概には言い切れないのではと思いました。
50代以上 女性 ももとめいのおかあさん
30代 男性 K.W
他の例。アメリカ合衆国以下ステイツの警察犬にはジャーマンシェパードだけでなくドーベルマン、ロットワイラー、マリノアいます。そこのドーベルマンは断耳、断尾はされてます。バイオハザード、英語でResident evil…レジデントエビルにゾンビドック出ますが断耳したドーベルマンです。
垂れ耳の長い尻尾は訓練の妨げになります。いざ犯人と対峙する際に大怪我防ぐ。コマンド聞きやすくする為には断耳、断尾は要るってのがあちらの警察の考えです。それは虐待では無いはず。活用してます。
ちなみに…ステイツの公衆トイレのドアは上下の隙間空いてます。怪しい動き見たら通報出来る様に。銃刀法も厳しくなって来た州もあるけどニューヨークの歌舞伎町みたいな場所じゃストリートファイトあるみたいです。白熱した犯人、ファイターを制圧する際にも立耳、尾の短いドーベルマンの出番って事ですね。
カナダも一応断耳、断尾は合法です。