「犬に名前をつける日」概要
(c)スモールホープベイプロダクション
ストーリー
愛犬のゴールデンレトリーバーを重い病気で亡くし、何をするにも気力が湧かなくなってしまったテレビディレクターの久野かなみ(小林聡美)が、大先輩の映画監督渋谷昶子さんに「悲しむ暇があるなら、犬の映画を撮れ」と励まされ、犬の命をテーマにした映画を撮り始める。
かなみは、センターで殺処分される犬猫や、2011年の東日本大震災後、福島の原発20キロ圏内に取り残された犬猫の姿を目の当たりにし、大きなショックを受けつつも、取材を重ねるうちに、過酷な状況から一頭でも多くの命を救おうとする人たちと出会う。
監督・脚本・プロデューサー
山田あかね
出演者
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小林聡美
上川隆也
青山美郷
今村沙緒里
渋谷昶子
藤井聡
ちばわん
犬猫みなしご救援隊
映画:『犬に名前をつける日』
2015年10月31日(土)からシネスイッチ銀座ほか全国順次公開
むっちゃんの幸せ〜福島の被災犬がたどった数奇な運命〜
「むっちゃんの幸せ〜福島の被災犬がたどった数奇な運命〜」は2014年9月にNHK総合にて放送された、この映画の監督による1時間程のドキュメンタリー番組。
山田あかね監督のブログによると、「むっちゃんの幸せ」のロングバージョンがこの映画という位置づけのようです。
この番組は、福島の被災犬むっちゃんの語りで、むっちゃんが福島原発20キロ圏内で保護されてから、シェルターでの生活を経て老人ホームで飼われることとなった顛末を追い、その中で保護犬に関わる人々とその活動を紹介しています。
先ほど「むっちゃんの幸せ」のロングバージョンが、映画「犬に名前をつける日」と紹介しましたが、全く同じ物語を繰り返している訳では無く、監督の1つの体験から2つの別の作品が出来たという事のようです。
愛犬を亡くした監督が、先輩の映画監督に促され犬の命をテーマに映画を作ろうと思ったことからすべてが始まり、保護活動をしている人々への取材は4年に渡り、撮りためた映像は200時間を超えたそうです。
この取材からまず生まれたのが、「むっちゃんの幸せ」。小林聡美さんはこの作品ではむっちゃんの声を担当しています。
そして次に生まれたのが、「犬に名前をつける日」。
「むっちゃんの幸せ」は犬のむっちゃんの語りでストーリーが展開していき、ストーリーの軸はむっちゃんの行く末。
対して「犬に名前をつける日」は実際のドキュメンタリー映像と並行して、取材する側=久野かなみのドラマが展開されるようです。
「犬に名前をつける日」の中で小林聡美さんが演じる久野かなみは、山田あかね監督自身の分身ですね。
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「むっちゃんの幸せ」の中でも保護犬たちの置かれた現実や、保護活動に携わる人々に触れた部分はあったのですが、どちらかというと、むっちゃんという一匹の犬の幸せが、たくさんの人々の手とやさしさにより支えられたものであったという事がメインの見せ方をしていました。
「犬に名前をつける日」では、取材する側の人間を主人公にしたことで、むっちゃんの語りでは出し切れなかった現実の厳しい部分や、それを取材した人の気持ちについてより詳しく触れられているのではないかと期待しています。
また、「むっちゃんの幸せ」の中ではむっちゃんがメインだったため、他の犬のエピソードはあまり多くなかったのですが、今回はいろんなわんちゃんが登場するみたいですね。
ではここで、「むっちゃんの幸せ」で私が一番心に残ったシーン、福島でおじいちゃんと一緒に暮らしていて保護された一匹の犬のエピソードを紹介します。
その犬は、おじいさんが仮設住宅暮らしの間は一緒に住むことが出来ず、やっとおじいさんがその犬と暮らすために家を建てたら、今度は体調を崩して入退院を繰り返すようになってしまい、やはり一緒に暮らす事が出来ずにいるのですが、シェルターで生活しながら定期的におじいさんの元をボランティアの人と一緒に訪ねていて、その際の犬とおじいさんのうれしそうな様子がとっても感動的でした。
また、保護活動とは新しい飼い主を見つける事だと思っていたのですが、こんな形の関わり方もあるという事は新鮮な驚きでした。
それぞれが出来る事をする
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まだ公開前のため、私もこの映画を見ていないのですが、興味を持った人みんなに是非実際に見てもらいたいと思っています。
実際に映画を見る、お金を払うという行為は、間接的に払った相手を応援することにもつながると思っているからです。すでに保護活動に関わっていたり、保護犬について知ることで何かを始める人もいるかもしれません。でもそこまではっきりとした大きな行動でなく、気になったから映画館へ足を運んでみたという事だって、選択の結果です。
「むっちゃんの幸せ」の中で、福島での保護活動に携わっている女性が言っていた、
『こんな時に犬猫かと非難を受ける可能性は覚悟している。
それでも自分たちは犬猫のような小動物であれば少しはうまく扱う事が出来るかもしれない。そして犬猫を救う事で、飼い主さんや人々の心を救う事につながるのではないか。人はそれぞれ出来る事をやるべきだ。』
という趣旨の言葉が強く心に残っています。
保護犬や、犬を飼うという事に興味を持っていても、具体的な行動までは、という人は多くいると思います。
そんな人々が興味を持ち、映画を見に映画館へ足を運ぶ事だって、多くの人が保護犬に対して関心を持っていると世間に伝える事につながると思うのです。
例えば、映画館も観客が多ければ上映期間を延ばしたりします。ロングランが続けばテレビ等でも紹介され、より多くの人の目に触れる機会にもなります。
そうしてこの映画を見た人の中から実際に何か行動を始める人がいるかもしれない。
また興味を持ってお金を払って、『この映画を見たい』という人が多くいるという現実が世間を動かすかもしれない。
かもしれない、かもしれない、ばかりになってしまいましたが、見たい映画を自分が見に行くことで、少しだけど世の中を良くする方向にしている、生きたお金の使い方をしている。そう考えるとわくわくしてきませんか?
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