パブロフの犬とはどんな意味?実験の内容やわかりやすい例えとは

パブロフの犬とはどんな意味?実験の内容やわかりやすい例えとは

『ベルの音を聞いた犬がよだれを垂らす』といった行動は、『パブロフの犬』と呼ばれる現象です。犬のしつけはもちろん、させたい、やめさせたい行動や習慣に応用できます。今回は、パブロフの犬について詳しく解説します。

『パブロフの犬』とはどんな意味?

よだれを垂らす犬

『ベルを鳴らしただけで、犬がよだれを垂らす』この条件反射は、『パブロフの犬』として周知されています。しかし、犬はベルの音に対し無条件でよだれを垂らすわけではありません。ベルの音だけでよだれを垂らすようになるには、条件があります。

ここからは、条件反射と『パブロフの犬』の言葉の由来について、わかりやすく説明します。

訓練や経験で獲得する『条件反射』を指す言葉

条件反射とは、ある経験や訓練を学習し、後天的に獲得する反射行動をいいます。対して、無条件反射は生まれつき備わっている自分でコントロールしにくい行動です。

条件反射の例は、『梅干しを見るとつばが出る』などが知られています。しかし、『梅干しがすっぱい』と感じる経験をしていないと、梅干しを見ただけでつばは出ません。

無条件反射の例は、熱いものに触れたら手を引っ込めるなど、過去に経験がなくても無意識で行動してしまうでしょう。

特定の犬種や犬の名前を意味する言葉ではない

心理学で、条件反射の代名詞として使われている言葉がパブロフの犬です。この名前の由来になった実験があります。

条件反射の実験を行ったイワン・パブロフが、実験中に用いた複数の犬をまとめた名称がパブロフの犬です。特定の1匹の犬を表しているわけでも、イワン・パブロフの飼っている犬の名前でもありません。

さまざまな施設で、パブロフの犬の実験の様子が展示されていますが、施設ごとに犬種が違います。たとえば、ロシア国内のリャザンとモスクワでは、違う犬種がパブロフの犬として展示されています。

『パブロフの犬』の意味の由来となった実験内容

パブロフの犬の説明イラスト

パブロフの犬の由来になった実験は、旧ソビエト連邦の生理学者イワン・パブロフが行いました。

ある日、『犬が飼育係の足音を聞くだけで、よだれを垂らす』ことに彼は気付いたからです。そして彼は、犬が餌と飼育係を結びつけていると推測し、実験を開始します。

彼は実験結果を『条件反射』・『無条件反射』としてまとめ、1904年ロシア人初のノーベル生理学・医学賞を受賞しました。

実験の手順

  • 1.犬は餌(無条件刺激)に対し、よだれをたらしている
  • 2.犬はベルの音(条件刺激の候補)に対し、よだれをたらさない
  • 3.犬にベルの音(条件刺激の候補)を聞かせてから、餌(無条件刺激)を与える
  • 4.『3』を何度も繰り返す
  • 5.ベルの音(条件刺激)が鳴るだけで、餌(無条件刺激)がなくても、犬はよだれを垂らすようになった

実験は条件刺激の候補の後、無条件刺激を与えます。その後、条件刺激の候補が条件刺激に変化し、条件反射を引き起こしています。つまり、犬にとって何でも無かった刺激が、餌と同じくらい本能を刺激するものに変化したのです。

実験にあたり、犬の頬に手術で管を通しよだれの量を数値で測れるようにしました。実験の一連の流れは、古典的条件付けと呼ばれています。別名は、『パブロフ型条件付け』や『レスポンデント条件付け』です。

条件刺激の後、無条件刺激を与えると、条件反射を獲得できる

無条件刺激とは、経験や訓練をしなくても無条件反射を引き起こす刺激。条件刺激は、経験や訓練によって条件反射を引き起こす刺激です。

条件刺激の候補(ベルの音)のみでは、条件反射は起こりません。条件刺激の候補(ベルの音)の後、無条件刺激(餌)を犬に与えなければ、ベルの音は条件刺激にならないのです。

条件刺激はベルの音に限りません。ベルの音のかわりに、笛の音や『ごはん』という人間が発する台詞でも、条件刺激になりえます。

パブロフの犬は、人間にも当てはまると実験で証明された

人間に対しても、パブロフの犬と似た実験を1920年レイナーとワトソンが連名で行いました。『アルバート坊や』の実験と言われています。

実験対象は、名前がアルバートである乳児です。実験により乳児はパブロフの犬状態になりました。

乳児に白ネズミを見せてから、鉄棒をハンマーで叩いて音を鳴らします。この行動を繰り返すと、乳児は白ネズミを見ただけで怖がるようになりました。

実験では、白ネズミ(条件刺激の候補)を乳児に見せ、鉄棒をハンマーで叩く(無条件刺激)と乳児は怖がります(無条件反射)。その後、白ネズミが条件刺激に変化しました。白ネズミを見せるだけで怖がる(無条件刺激)反応を、乳児は引き起こすようになったのです。

しかし、乳児は白ネズミだけでなく特徴が似たものに対しても恐怖をいだくようになりました。たとえば、動物のぬいぐるみや毛皮のコートなどです。

非人道的であるアルバート坊やの実験が行われたのは1900年代前半。今ほど実験に関する倫理規定もありませんでした。

犬のしつけで例える『パブロフの犬』の意味の使い方

トレーニング中の犬

パブロフの犬における、古典的条件付けは犬のしつけに応用可能です。

古典的条件付けは順番が大切です。条件刺激(ベルの音)を与えてから、無条件刺激(餌)を与えると古典的条件付けが成立しやすいとされています。つまり、刺激の順番が逆、または同時では成立しにくいと考えられています。

本項目で解説するのは、

  • 犬を自分の元に呼び寄せたい
  • 犬をリラックスさせたい
  • 犬に特定の行動を止めさせたい

上記の例を理解すれば、愛犬のしつけのヒントになるでしょう。

犬を自分の元に呼び寄せたい

  • 無条件刺激は餌やおやつ
  • 条件刺激を『おいで』や『犬の名前』

に設定します。

犬の名前を呼んだ後に、おやつをあげるのを繰り返します。古典的条件付けがされた結果、犬の名前を呼んだだけでおやつがなくてもあなたの元へくるようになります。

怖がる犬をリラックスにさせたい

雷の音、救急車の音を怖がる犬はかなりいます。放っておくと、ストレスにより犬は異常行動を起こすようになるでしょう。

犬のストレスを忘れさせてあげるような条件反射を設定してみてください。

  • 無条件刺激を犬が楽しいと思うもの(おもちゃなど)
  • 条件刺激を『犬を撫でる』『大丈夫だよ』のような言葉

に設定します。

たとえば、『犬を撫でてから、犬の好きなおもちゃを与える』を繰り返したとしましょう。結果、犬を撫でただけで犬は楽しい気持ちになります。雷が鳴ったとき、あなたが犬を撫でると怖い気持ちよりも楽しい気持ちが犬に生まれるでしょう。

犬に特定の行動を止めさせたい

無駄吠えなど、犬に特定の行動を止めさせたい場合でも、古典的条件付けが使えます。

  • 無条件刺激を犬が不快に思うもの(放置やビターアップルの香り等)
  • 条件刺激を『ダメ』や『ノー』の言葉

に設定します。

たとえば、犬が無駄吠えをしていたら『ダメ、の後に放置』を繰り返します。ダメの後には放置がくると犬は認識します。放置や無視は犬にとって本能的に辛いものです。すると、ダメの後に放置されると犬は学習します。結果、無駄吠え中にダメとあなたが発すると犬は無駄吠えをしなくなるでしょう。

人間の心理で例える『パブロフの犬』の意味の使い方

眠る犬

パブロフの犬の古典的条件付けを使うと、あなたがしたい行動を習慣化したり、悪癖を止めたりする確率をあげてくれるでしょう。古典的条件付けの意味さえわかるとあなた自身で応用も可能です。

本項目では、パブロフの犬の応用で、

  • 喫煙を止める
  • 寝つきがよくなる
  • 運動や勉強を習慣にする

を例として解説します。

自分で応用する場合も、条件刺激→無条件刺激の順番を必ず守りましょう。

喫煙を止める

タバコを吸ったら、あなたが本能的に嫌と感じる出来事が起こるようにしましょう。無条件刺激を他人から与えてもらうと、より効果的です。自分で自分に対し、不快な出来事を起こすのは、難しいからです。

  • 無条件刺激をあなたにとって不快な感情が生まれる行動や出来事
  • 条件刺激を喫煙

に設定します。

コツは本能的に不快と思う感情が、何をしたら生まれるのかをあなたが自覚しておくことです。

タバコを吸ったら、いつもあなたにとって不快な出来事が起こるのが繰り返されます。やがてタバコを吸うだけでネガティブな気持ちになり、タバコを吸わなくなるでしょう。

寝つきがよくなる

  • 無条件刺激を眠気
  • 条件刺激をラベンダーの香りをかぐ

に設定します。

眠気(無条件刺激)がきたら、睡眠(無条件反射)がくるでしょう。眠気を意図的に起こすのは難しいので、『ラベンダーの香りをかいで寝床に入る』を繰り返します。

やがてラベンダーの香りと眠気が結び付き、寝つきがよくなるでしょう。芳香療法として知られている方法です。

日によっては、1日の中で起きたネガティブな出来事が頭から離れず寝られない夜もありますよね?上記の古典的条件付けをしておくことで、ネガティブな考えから解放され質の良い睡眠が得られるでしょう。

運動や勉強を習慣にする

  • 無条件刺激をあなたにとってのご褒美(おやつ、飲みに行く、ゲーム)
  • 条件刺激を勉強や運動

に設定。

『勉強した後は飲みに行ってもいい』行動を繰り返すと、飲みに行かなくても勉強するようになるでしょう。勉強だけで飲みに行くのと同じくらい幸福感を感じるからです。

まとめ

よだれを垂らす犬

パブロフの犬とは、『ベルを鳴らし犬に餌を与える』を繰り返すとベルの音を聞くだけで犬がよだれを垂らす現象です。古典的条件付けとも呼ばれる実験は、旧ソビエト連邦のイワン・パブロフにより『条件反射』・『無条件反射』を有名な言葉にしました。

条件反射を起こすために必要なのが、古典的条件付けです。古典的条件付けは犬のしつけにも応用できます。

具体的には、

  • 犬を自分の元に呼び寄せたい
  • 犬をリラックスさせたい
  • 犬に特定の行動を止めさせたい

犬だけではなく、人間にも古典的条件付けは起こります。つまり、古典的条件付けを活かすと、私達が自分の意思の強さやモチベーションに左右されずにアクションを起こせるようになります。

ぜひ本記事の情報を愛犬のしつけだけでなく、あなたにも役立ててください。

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