犬の狼爪について
犬の足をよく見た時に、足の指から少し離れた部分に「何かが生えている!」と、驚いたことはありませんか?これは「狼爪」というもので、読み方は「ろうそう」です。狼爪は犬の前足や後ろ足の内側についていて、地面と接触しないのですが、これは犬の親指です。
狼爪は、犬が狼だった頃の名残であるといわれており、シベリアンハスキーやグレートピレニーズなど、狼に比較的近い犬種に見られることが多いようです。一般的に室内で飼われているチワワなどの犬種でも、狼爪が生えている犬もいます。
ボクサーように、退化したために後ろ足の狼爪がない犬種もあります。狼爪は猫にも見られますが、猫は基本的に前足にしかありません。
犬の狼爪の役割
狼爪は、犬が先祖から受け継いだ体の特徴で、異常や奇形ではありません。しかし現代は、先祖からの名残にすぎず、特に必要がないと判断されることが多いようです。ケガ予防などの観点から、生まれてすぐに狼爪を切除するブリーダーさんも多く、ペットショップで犬を購入した場合、狼爪を見たことのない飼い主さんもいるかもしれません。
一方で前足の狼爪は、走る時のクッション機能になっているのではとないかと言われています。前足の狼爪がない場合、アジリティ中にケガをするリスクが1.9倍に高まるという研究発表もされました。狼爪を切除すると他の指に負荷がかかり、それによってケガを負いやすくなるのではないかと考えられています。
後ろ足の狼爪は、歩行にはほぼ役に立っていません。後ろ足の狼爪は退化して無いことがほとんどですが、あっても自然に取れてしまうことが多いとされています。
犬の狼爪における注意点
狼爪を伸ばしすぎない
狼爪は他の爪と違って地面に接することがないので、普段の生活で削れることがありません。爪が伸びたままにしておくと、ケガをしたり爪を噛む原因に繋がったりするため、手入れが必要です。
狼爪が伸びすぎて巻き爪のようになってしまうと、爪が肉に食い込んでしまい、刺さった部分が腫れ出血することもあります。他にも狼爪をカーペットに引っ掛けて根元から折れてしまい、犬が大ケガをしたというケースもありました。
狼爪を切りすぎない
前足の狼爪は、骨や筋肉とつながっており、神経や血管なども通っています。このため、深く爪を切りすぎてしまうと血管切りをしてしまい、愛犬に出血や痛みを伴わせてしまいます。狼爪を切る際は、神経や血管のある層を傷つけないようにケアすることが大切です。
犬の狼爪の爪切り方法
自宅で狼爪の爪切りをする方法
狼爪の爪切りは月に1度を目安にします。人間用の爪切りではなく、犬用の道具を揃えましょう。爪切りは、ハサミタイプよりも、ギロチンタイプの方が使いやすくおすすめです。爪を削るヤスリや、万が一出血した時に備えてガーゼやハンカチ、止血剤も用意しておくと安心です。
慣れないうちは、保定する人とカットする人の2人がかりで行うことをおすすめします。保定は犬が嫌がらなければ抱っこの姿勢でもよいでしょう。カットする人は利き手で爪切りを持ち、逆の手で狼爪の根元を固定します。
白い爪の場合、血管のある部分とない部分の色の境目がわかりますので、血管の手前まで切るとよいでしょう。あまりギリギリのところで切ると、ヤスリがけをした時に出血をしたり、歩いている時に爪が欠けたりしますので、長さには余裕を持たせて切るようにします。切る時は、血管のない部分の角を落とすように、三方向から切っていきます。
黒い爪の場合は、どこまで血管が伸びているのか見えません。爪の断面を見ながら、白い爪と同じ切り方で先から少しずつ切ってください。爪の断面に、色の違う組織が見えたら近くに血管がありますので、切るのをストップします。
爪の角は、飼い主さんが抱っこをする時にケガをしないためにも、ヤスリでなるべく丸く仕上げます。
自宅で狼爪をきっている際に誤って出血させてしまった時は、爪の先にガーゼやハンカチなどを押し当て、圧迫止血します。圧迫止血をしても血が止まらない時は、止血剤を使いましょう。
止血剤は即効性もあり効果も高いのですが、犬にとっては痛みを感じるため、使用の是非が問われています。止血剤がない場合の緊急処置として、小麦粉を代用することもできます。止血をしても出血が止まらない場合は動物病院で診察を受けましょう。
自宅で狼爪の爪切りが難しい場合
狼爪が伸びすぎて巻き爪になってしまった、爪切りを嫌がる、飼い主さんが爪の手入れに自信がないといった場合は、無理をせず、動物病院やペットサロンで切ってもらうことをおすすめします。
普段は大人しい犬でも、自宅で無理に爪切りをしようとすると、恐怖心から噛み付いたり吠えたりすることもあります。また怖い思いや痛い思いをすると、爪を切らせてくれなくなることもあるので、無理は禁物です。予防薬の処方や耳掃除などで病院に行く機会があれば、一緒にお願いしてもいいでしょう。
犬の狼爪の切除
狼爪の切除には賛否両論があります。現在は、生まれてすぐに狼爪を切除しているブリーダーも多いようです。生まれたばかりの犬は骨が柔らかく切除が比較的簡単にできるという理由から、生後2~7日頃に無麻酔で切除手術が行われます。
子犬の狼爪切除は、将来のケガを防止するという予防医学の面から行われることが多いのですが、一方で「見た目」の問題から切除することもあります。
ドッグショーに出す犬の場合、狼爪があることで「犬種基準」からはずれてしまう時は切除します。また、子犬は狼爪があると奇形ととらえられてしまい販売するときの価値が下がることもあるため、それを避けるために切除することもあります。
狼爪を温存している場合、定期的に爪の手入れをしているにも関わらずケガをくり返したり、日常生活に大きく影響が出たりしているようならば、切除手術を検討しましょう。ある程度成長している犬の狼爪切除手術は、全身麻酔が必要となります。全身麻酔はリスクを伴うため、避妊手術などの手術と一緒に行うことが一般的です。
狼爪の手術は、狼爪を付け根の部分から切り落として皮膚を1~2針縫うというもので、費用は5千~1万円ぐらいが相場です。難しい手術ではありませんが、犬にとって強い痛みとストレスを感じるものではあります。犬自身が意思表示することはできませんので、飼い主さんの判断が必要となります。
まとめ
狼爪は、狼から現代の犬になるまでの長い歴史の名残とも言えるものなので、犬にとって狼爪があるということは自然なことです。ケガの予防や見た目に関する問題から、狼爪を早期に切除した方がいいという考え方もあります。逆に自然のままを大切にし、こまめにケアをして温存したほうがよいという考え方もあります。
どちらも、愛犬を大切に思うからこその判断ではありますが、どちらを選択するかは飼い主さん次第です。この記事をきっかけに、わんちゃんの狼爪をどうするかについて、家族で話してみてはいかがでしょうか。
ユーザーのコメント
20代 女性 スー
30代 女性 ペーた
この間、家の愛犬の後ろ脚を見ていて人間は、足に5本の指があるのにわんこさんは4本の指しかないのに疑問を持って愛犬の足の裏を暫くの間眺めていました。狼爪の認知度が低いがために奇形と思われてしまうという事を知ると悲しい気持ちになりました。
30代 女性 チャッキー
包帯の圧で爪の下の皮膚が赤くなるし、そこにある理由がわかりませんでした。でも、記事で若いうちなら柔らかいので取りやすいと知って、もっと早く知っていればと後悔しました。痛い思いせずわずらわしいものを取れるなら早めに決断した方がいいですね。
30代 女性 ハッピー☆
ちなみに愛犬にはありませんでした。
メリット、デメリットそれぞれありますが、狼爪があるワンちゃんて奇形とか思われる方もいるのかもしれませんが、私はなんだか貴重だなって思いました。
でも、爪に引っ掻けて痛いのも可哀想ですし、手術での痛みも可哀想ですし、ワンちゃんにとっていい方法が見つかればいいですよね。
30代 女性 ぐーみん
狼爪を手術する考えも飼い主として責任持った良い判断だと思います。どちらの考えも飼い主がちゃんと考えて決めたことなら犬は受け入れてくれるでしょうね。
女性 雀3号
私は断尾や断耳と同じで、特に切除する必要はないように思います。ただ狼爪があることで日常や体調に障害を生じてしまうなら切る必要はあるとは思います。
グレート・ピレニーズは2本の狼爪がなければならないと基準があるので、切ってはいけません。
犬種標準に狼爪切除規定があるせいで不要な手術を行うのも如何なものかと思います。あって正常ならあえて異常にしなくてもよいのでは?というのが個人的な見解です。
温存することでのデメリットは、飼い主が注意すれば十分予防できることです。
初めから持って生まれたものを、大きな問題もないのに切除はしたくないです。
50代以上 男性 中西 B輔
昔飼っていた柴犬にもあり狼爪を知らなく伸びすぎて後ろ足に刺さってしまった苦い経験もあります。
その経験を繰り返さない為にも爪切りを忘れない様に❗
女性 いちぼ
40代 男性 タケダ
女性 タマ