思いっきり泣きたい時
デューク
①「つめたいよるに」江國香織(著)
②江國香織(著)山本容子(画)
もともとは江國香織さんの短編集「つめたいよるに」の中の一編で、その後山本容子さんの挿絵付きで一冊の本としても出版されました。
愛犬デュークが死んでしまった翌日、飼い主の女の子に起きた不思議な出来事。
話自体はとっても短く、読んでいる途中でなんとなくオチが見えてきてしまったりもするのですが、分かっていても、最後は泣きそうになるし、読み終わったあと優しい気持ちになるし、いつまでも心に残る本です。
デュークを思い出す描写の細部を大切にしている感じがとってもいいです。個人的には最初は挿絵なしで呼んだほうが、文章の良さが染みるというか、情景が頭に浮かんで良いと思います。その上で挿絵入りも読んでみると、やっぱりまた違う気づきがあるかもしれません。
さよなら、アルマ
水野宗徳(著)
戦時下で軍犬として出征した飼い犬がいたという史実を基にしたフィクション。
小さな頃から犬が好きで、また不思議と犬に好かれる事から犬一とあだ名されるようになった主人公太一が、近所の人に頼まれ立派なシェパードのアルマを預かる事になる。アルマの能力の高さに夢中になる太一だが、戦時下で学生の彼には、アルマに満足な餌を与える余裕も無い。一度は手放す事も考えたものの、軍用犬にすれば軍から肉の支給がある事を知り、軍用犬試験を受けるべく訓練を始める。急成長するアルマへの興奮と、軍用犬にすることへの戸惑い、そんな中でアルマは試験に合格し、出征していく。そして戦地でアルマに待っていた運命は…。
戦時下という特殊な状況で泣かせるのはずるいと思うのですが、ひどい状態の中でも犬を思う気持ちに涙が出ます。
犬の消えた日
井上こみち(著)
先の「さよなら、アルマ」は軍用犬についての話ですが、こちらは戦時下での犬の供出を題材にした話です。
戦時中、絵本「かわいそうなぞう」でも描かれている、全国の動物園の猛獣が空襲などで暴れるのを恐れ殺された後、供出という名目で一般家庭の飼い犬も殺されたのです。
この本では、主人公の女の子が飼い犬を供出命令に従い、指定の警察署まで連れて行く顛末と、犬の殺戮に立合った警察官の話も収められています。この本を読むまで飼い犬がこんな形で殺されたという事実を知らなかった私にとって、とても衝撃的な内容でした。かなり辛い内容ですが、あまり知られていない史実となってしまっている今だからこそ、多くの人に読んでもらいたいと思います。
元気になりたい時
マーリー―世界一おバカな犬が教えてくれたこと
マーリー―世界一おバカな犬が教えてくれたこと (ハヤカワ文庫NF)
ジョングローガン(著),古草秀子(翻訳)
新婚カップルのジョンとジェニーが飼うことになった、頭がいいと言われるラブラドール・レトリーバーの子犬。大きくたくましく育ってやんちゃなバカ犬に……。陽気でお気楽、人や犬を見れば嬉しくて飼い主をひきずってでも飛びついていき、ヨダレとキスの嵐をお見舞い。そんなマーリーとのドタバタ生活を、新聞のコラムニストでもある著者が綴ったエッセイ。映画化もされました。
タイトル中に「世界一おバカな犬」とありますが、決してマーリーのバカっぷりだけを取り上げた本ではありません。マーリーのやんちゃっぷりと、飼い主の”とほほ”な感じに何度も笑わせられますが、(著者が新聞のコラムニストだからでしょうか?やや客観的な”とほほ”な感じがとっても上手いです。)マーリーと著者が過ごした13年間の間に、新婚だった著者には子供が生まれ、成長し、転職、引っ越しとさまざまな事があって、その事情も垣間見れる内容です。
犬の一生は短いと言うけれど、10年強の時間って後から振り返ると、何だかんだと色々あり、結構長いですよね?!そんなちょっぴり人生についても考えさせられちゃうところもある本です。ドタバタに笑って元気が出ます。そして著者家族や、またマーリー死後の新聞読者のエピソードからも元気をもらえます。
ヒトのオスは飼わないの?
米原万里(著)
元ロシア語会議通訳で、作家であった米原真理さんの犬猫多数との生活を綴ったエッセイ。
タイトルの由来は、最初の章で紹介されている。「一昨年の猫二匹に続いて、昨年は仕事先で出会った野良犬一匹、連れ帰ってしまいました。ますます人生を複雑にしています」と書かれた年賀状を受け取った恩師が、「ネコイヌもいいけどねえ、君、そんなことより、早くヒトのオスを飼いなさい、ヒトのオスを!!」と元旦早々電話をしてきたそうだ。
上記のエピソードに既にこの本の面白さがにじみ出ている。文章も行動もハッキリ、キッパリの著者の文章は読みやすく、本の中に登場する人々もなかなか変わり者揃い。犬猫もそれぞれ性格の違いが読者でも理解できる程際立って書かれています。で、なんでもスッキリいくかというと、動物相手にはなかなかそうはいかない。それぞれの問題にきちんと向き合って一つ一つ解決していく過程に元気をもらえます。
ほっこりしたい時
SayHello!あのこによろしく。
Say Hello! あのこによろしく。 (ほぼ日ブックス)
イワサキユキオ(著)
糸井重里さんが主宰するWebサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」にて連載されたコンテンツを単行本用に再構成したもの。たくさんの写真と文章で、著者の飼い犬の生んだ3匹の子犬の、産まれてからそれぞれの飼い主の元へ巣立っていくまでが収められています。
まず、写真の密着っぷりがすごいんです。生まれた翌日から子犬にへばりついて撮ったと思われる写真が可愛くて可愛くてほっこりします。最初は見分けもつかなかった3匹がそれぞれ個性を見せ始め、成長していく様が丁寧に丁寧に綴られています。
ここまで小さい子犬を見る機会はそうあるわけじゃないって点からもおすすめですし、目も開かない子犬を育てるって母犬は大変だなぁから家族をちょっと思い出したり、ってところもあったりして、あったかい気持ちになれること間違いなしです。
飼ってはいけない!
小倉智昭(著)
フジテレビ「とくダネ!」のメインキャスターの小倉智昭さんが書いた犬の本。ジャンルはなんて説明すれば良いのかちょっと迷ってしまいます。帯によると、汗と涙と笑いでつづる「格言な絵本」との事。読んだ感想は、飼い犬への愛があふれる犬バカ本です。
おもな12章は、偉人の格言で始まり、「小倉の呟き」「妻の証言」「ミレの本音」が会話形式になっています。その合間に、ジャックラッセルテリアって?とか、あなたはジャックラッセルテリアを飼えるか!?とかジャックラッセルテリアのグッズコレクションが挟まっています。
ジャックラッセルテリアを飼っている人なら、共感し、面白がってもらえること請け合いの内容です。かなり楽しんで作っている本なのが各ページからも溢れているので、他の犬種の飼い主さんでもそこを面白がれる人ならきっとほっこりしてもらえると思います。
まとめ
気分別の犬の本の紹介はいかがでしたでしょうか?
私にはなんか犬の本が読みたいな~って気分の時があります。さらにこんな気分の犬の本が読みたいな~って選択できたら、とっても贅沢ですよね?!
少しでも興味を持った本があれば是非読んでみてください。どれもおすすめの一冊です。
ユーザーのコメント
女性 S-ya
40代 女性 こたママ
女性 いんこ
犬と暮らしていると、そんなこといまさら言われなくたっていいよ、お涙頂戴ものはお腹いっぱい、と思ってしまうのですが、どうやら世の中の愛犬家の方たちはそういったものを呼んで涙するのがお好きなようで、これでもかってくらいSNSでシェアされまくりで驚きます。
愛犬が元気なうちは、そんな悲しいことに気を取られているよりは今をもっと楽しめばいいのに、と思ってしまうのですが、悲しいことを想像するからこそ今この時をもっと楽しめる的な発想なのでしょうか。わかりませんが。
なので、犬が脇役でいい働きをする、くらいの物語が読みたいです。