チベタンマスティフの性格
物怖じせず勇ましい
チベタンマスティフは闘犬や軍用犬としても活躍した勇ましい性格が特徴です。どっしりと構えて物怖じしない、独特な雰囲気を持っています。勇敢な性格を気に入り、モンゴル帝国の初代皇帝チンギス・ハーンが、3万匹のチベタンマスティフを軍用犬として引き連れ遠征したとも言われています。チベタンマスティフは体の大きさに負けないだけの、度胸と勇ましさを持ち合わせた犬です。
忠誠心溢れる性格
飼い主への忠誠心が溢れているところも、チベタンマスティフの性格の大きな魅力です。飼い主や家族を守ろうという気持ちも強いため、護衛犬や番犬としても能力を発揮します。
チベットの人々はその忠誠心の強さから、チベタンマスティフを護衛犬として大切に扱ってきました。家畜の群れを移動させる際にはチベタンマスティフをテントに残し、女性や子ども、ヤギ、羊などをオオカミやユキヒョウから守らせていたそうです。
温和な性格
チベタンマスティフの外見や軍用犬として活躍したという歴史から、どう猛な犬種として思われがちですが、実はとても温和な性格です。飼い主に甘える一面も見せますし、愛情豊かで、家族みんなに友好的です。チベタンマスティフは自分の群れや家族を大切にする、心優しい性格の犬種です。
警戒心が強い
知らない人間への警戒心が非常に強い性格をしています。チベタンマスティフは、縄張り内に侵入者があると警戒心を一層強め、必要に応じて攻撃的になることもあります。警戒心の強さを生かし、チベットでは寺院の番犬としても活躍していました。
賢い
とても賢い犬で物事をすぐに覚えることができます。人間とも、他の犬ともコミュニケーションが上手にとれます。チベタンマスティフは護衛犬としての能力が高いため、侵入者だけを攻撃する賢さがあります。
独立心があり自己判断のできる犬なので、飼い主からの一方的な命令は簡単に受け入れない頑固さも持っています。そのため、しつけやトレーニングは一筋縄ではいかないことが多いようです。飼い主の指示が曖昧で、途中で指示を変えたり諦めたりを繰り返すと、信頼関係を損ねる場合もあります。
チベタンマスティフの特徴
大きさ(体重・体高)
体重 64~85キロ
体高 61~72センチ
チベタンマスティフは大型犬の中でも特別に大きく、超大型犬といわれています。体重を見ても人間の成人男性並ですし、体高も小さな子どもの身長くらいあることがわかります。その大きさや見た目から、熊やライオンに例えられることも多い犬種です。筋肉量も多く、骨太でがっしりとした体型です。
被毛(毛色・毛質)
チベタンマスティフの毛色はブラック、ブラウン、グレー、レッド、ブラックタンなどさまざまです。タンの入り方にも個性があり、胸にホワイトのスターがある個体もいるようです。
被毛は長くて厚いダブルコートです。オーバーコートは真っ直ぐの長い毛、アンダーコートは柔らかい毛がふわふわと密生しています。チベタンマスティフは首周りの毛に特徴があり、「獅子型」と「虎型」の2つのタイプに分類されます。「獅子型」は首周りがライオンのたてがみのような豊富な毛で覆われていますが、「虎型」はそれに比べ首周りの毛が短く少ないのが違うポイントです。
体の特徴
チベタンマスティフは頭蓋骨が大きく、首周りの被毛も豊富なので頭が大きく見えるという特徴があります。がっしりとした見た目通り、骨太で筋肉量が多く、力もかなり強いです。
しかし、体の割りに目は小さめで、垂れ目、垂れ耳のため、優しい雰囲気にも見えます。長い巻き毛の尻尾も特徴的で、中国ではこの尻尾を「菊の花」に例えるそうです。またチベタンマスティフは、大型犬特有の獣臭が比較的少ないとされています。
チベタンマスティフは日本で飼える?
チベタンマスティフは日本での飼育が難しいとされていますが、飼い主に責任と飼育能力があれば日本で飼うことも可能です。実際に2013年に4頭、2014年に11頭の犬がジャパンケネルクラブにも登録されていました。
チベタンマスティフを日本で飼いたいと思ったら、まず地域によってさまざまな犬に関する条例があることを知っておきましょう。条例で飼うことを禁止している地域もありますし、飼育はできても届出が必要な場合もあるので、事前にチェックしておきましょう。賠償保険に加入できないなどの問題が出てくる可能性もあります。
チベタンマスティフは超大型犬であるため、飼育環境を整える必要もあります。大きなケージや広い庭など、ストレスなく過ごせる環境が必要です。もともと標高の高い山脈地方で暮らしていたので、寒さに強く暑さには弱い犬種です。
チベタンマスティフの豊富な運動量と暑さに弱い気質をクリアできる場所は、日本国内では北海道、東北地方、中部地方など、寒冷地の山間部くらいしかないでしょう。
チベタンマスティフの子犬の価格
チベタンマスティフの子犬の販売価格は、80~1000万円の相場となっています。これだけの値段がつくのには2つ理由があります。
1つはチベタンマスティフは年に1度しか発情期がこないため、非常にブリーディングが難しい犬種であることです。また「古代犬種」であることから、その希少性も値段を上げている要因となっています。
もう1つは、中国の経済事情が関係します。2000年以降の中国が経済成長期に突入し、希少価値のあるチベタンマスティフを富の象徴として扱い、富裕層の人々が飼い出したことがきっかけとされています。富裕層の間で需要が高まったため値段が吊り上り、現在でも高額な値段で取引きされています。
チベタンマスティフをブリーダーから迎えるには
日本国内でチベタンマスティフのブリーダーを探すのは簡単ではありません。ごくまれに日本のブリーダーでも扱っているケースがありますが、子犬はすぐに予約されてしまうようです。根気強く探さないとチベタンマスティフは見つからないでしょう。
また日本で販売されているチベタンマスティフで、純血種をみつけるのは非常に困難です。純血のチベタンマスティフを飼いたいなら、海外のブリーダーから購入し輸入するという方法がよいでしょう。
チベタンマスティフの里親になるには
チベタンマスティフは、日本ではほとんど飼育されていない希少な犬種のため、里親募集していることも非常にまれです。里親募集はネットや愛好家を頼りに探せることもありますが、かなり珍しいためすぐに取り引きされてしまうのが現状でしょう。サイトを頻繁にチェックするしかないようです。
チベタンマスティフの飼い方
環境
超大型犬のチベタンマスティフを飼うには、まず広い住宅や庭など、飼育環境を確保することが重要です。屋内飼育でも屋外飼育でも構いませんが、逃げ出さないような柵が必要となります。周りをしっかり囲んでその中で自由に動き回れるようにしましょう。
ケージを用意する場合は、成犬になっても脚を伸ばして横になることができる幅と、前脚を伸ばして伏せることができる長さが必要です。ストレスを溜め込まないための十分なスペースを確保してあげましょう。
チベタンマスティフは大型犬のため、加齢に伴い筋肉量が落ちると重心を安定させることが難しくなります。関節に負担をかけることがないように、フローリングなどは避け、滑りにくい床にするか、カーペットや犬用マットなどを用意しましょう。大きな段差のない環境も理想的です。寝る場所にはクッション性の高い敷物を敷くことで、肘や関節部の床ずれやタコの予防にもつながります。
運動
チベタンマスティフはかなりの運動量を必要とします。自由に動き回れる場所があれば理想的ですが、そこまで広い場所が確保できないのであれば、毎日の散歩で補う必要があります。
ジャンプや走るなどの激しい運動は必要ありませんが、できるだけ長い時間をかけて散歩するようにしましょう。具体的には朝夕2回、それぞれ最低でも2時間ほどは確保してあげてください。
しつけ
一般的に子犬の頃のしつけが特に重要とされていますが、チベタンマスティフは他の犬種と比べて成長スピードがゆっくりで、子犬の期間が長い特徴があります。この期間に根気強くしつけを行いましょう。
体も大きく力も強いので、家の中だけでなく散歩や外出時にも飼い主の指示に従えるようにしておきましょう。身勝手な行動を取らないようにさせるなど、やるべきしつけは多いことを覚えておいてください。また吠えたときの声もとても大きいので、警戒心が高まる夜間に吠え癖がつかないようしっかりとしつけましょう。
また、状況によっては興奮して攻撃的になる場合もあります。チベタンマスティフは遊んでいるつもりでも、力が強いため飼い主が抑制しないとトラブルや事件の要因になりますので注意しましょう。
餌
チベタンマスティフが1日あたりに食べる量は600~800グラムです。体もひときわ大きいチベタンマスティフですから、食べる量も他の大型犬に比べても非常に多いです。また空腹時には、気性も荒くなりがちですので、食事の頻度を1日3~4回に分けるとよいでしょう。
さらに、大型犬がかかりやすい関節の病気予防のために、体重管理も必要となります。肥満にならないように、高たんぱくで低脂肪の食事を心がけ、軟骨の健康維持に必要なグルコサミンやコンドロイチンなどを補えるフードを選ぶとよいでしょう。
お手入れ
チベタンマスティフは体が大きいので、基本的にお手入れは2人がかりで行えるといいかもしれません。また寝そべってお手入れできるようにしつけておくと、チベタンマスティフにも飼い主にも負担が軽くてすむでしょう。
厚いダブルコートの被毛を持つことから、ブラッシングが主なお手入れになります。ブラッシングは、最低でも週に2~3回は行いましょう。特に年に2回の換毛期には、大きな体から被毛が大量に抜け落ちます。表面の長い毛は抜けやすいのですが、アンダーコートは細くて短い毛が密に生えていますので、かたいブラシを使ってしっかりと除去しましょう。
必要に応じてシャンプーで汚れを落とすことも大切です。自宅でシャンプーする場合には、洗うのも乾かすのも時間がかかりますので、ヒーターや送風機などを使ったりしてなるべく短時間で行う工夫をするとよいでしょう。
耳は垂れ耳なので、週に1度は耳掃除をし清潔に保つことが必要です。帰宅時の耳のチェックを習慣づけることで外耳炎などの病気予防にもつながります。また汚れやすい目の周りや口の周りの毛も、まめに拭いてあげることで皮膚病の予防にもなるでしょう。
チベタンマスティフの飼育にかかる費用
チベタンマスティフは購入金額も高額ですが、超大型犬のため飼育するために必要な費用も高額です。チベタンマスティフに生涯かかる合計費用は720~840万円といわれています。一般的な大型犬の生涯費用である350万円と比べると、2倍もの費用がかかることがわかります。なぜそれほどまでに高額になるのでしょうか。
大きな理由はチベタンマスティフが大食漢であることです。1日の食事量も多いため1ヶ月の食費は約4万円になります。一般的な大型犬の1ヶ月の食費は約1万円のため、食費だけで4倍にもなっていることがわかります。
また、ワクチン接種やトリミング費用、医療費、身の回り用品にかかる費用など、全てにおいて比較的高額になる傾向があります。それらの理由が相まって、チベタンマスティフの生涯費用はこれほど高額になってしまうのです。
チベタンマスティフの寿命
チベタンマスティフの寿命は10~12年といわれています。長生きといわれる小型犬と比べると、その寿命は短い印象がありますが、短命というほどではありません。チベタンマスティフと同じ超大型犬のグレートデーンの寿命が6~8年、セントバーナードの寿命が8年ということを考えれば、十分に長生きできる犬種といえます。
チベタンマスティフがかかりやすい病気
股関節形成不全
チベタンマスティフは大型犬特有の股関節形成不全を先天的に患っている場合があります。股関節の形が先天的に異常な形になっている病気です。生後60日の間に急激に体重が増加することで、股関節へストレスがかかりやすいことが原因と考えられています。
遺伝もありますが、栄養過多や過度な運動でも発症します。チベタンマスティフは体が大きいことから発症すると悪化するケースも多く、寝たきりや歩行困難に陥るケースもあります。腰を振りながら歩いたり、うさぎのように跳ねながら歩く様子が見られたりしたら注意が必要です。
皮膚炎
被毛と皮膚との摩擦によって皮膚が炎症を起こす病気です。分厚い被毛を持つチベタンマスティフはチベットの乾燥地域原産の犬なので、高温多湿な環境は体質的に馴染まず皮膚トラブルを起こすことが多々あります。
定期的なシャンプーで皮膚を清潔に保ち、湿気を溜め込まないように毎日のブラッシングで換気してあげましょう。ブラッシングは病気の早期発見にもつながりますし、飼い主との信頼関係を深めるコミュニケーションにもなります。
外耳炎
チベタンマスティフは垂れ耳なので外耳炎にかかりやすい犬種です。細菌やダニ、異物が耳に入ることが原因となって炎症を起こすことが多く見られます。
定期的な耳の掃除で、耳の中を清潔に保つことが必要です。シャンプーや水などが耳に入ってしまうことも原因に繋がりますので、シャンプー後に耳の内部を軽く拭き取ってあげましょう。耳垢の臭いに異変を感じたり、耳や首などを掻く行為が見られたりしたら注意が必要です。
チベタンマスティフの歴史
チベタンマスティフは世界最古の犬種の一つで、さまざまな犬種の始祖犬と考えられています。中国で発見されたチベタンマスティフの原種の頭蓋骨は、紀元前1100年頃と推測されていますが、その祖先や来訪については不明な点が多いようです。
また全てのマスティフと呼ばれる犬種のルーツとも考えられています。日本の土佐犬も、別名ジャパニーズマスティフとも呼ばれ、チベタンマスティフの子孫犬の1つです。
もともとはチベットを中心とするヒマラヤ山脈で、遊牧民と暮らしてきました。牧羊犬や番犬としてその役割を果たし、体の大きさを生かして軍用犬としても活躍した歴史があります。
海外進出の歴史は浅く、19世紀半ばにイギリスへと渡りました。しかしさまざまな理由が重なり一時は絶滅状態に陥ります。現在はこの絶滅状態は脱出できましたが、純血種は大変希少で、中国では国家第二類保護動物に指定されました。そんな中、中国の富裕層が富の象徴として飼いだしたことで一大ブームを巻き起こします。
まとめ
チベタンマスティフは、世界最古の犬種の一つとされる、歴史ある希少犬です。その堂々とした勇ましい姿や、ライオンのたてがみのような美しい毛並みは、多くの人々を魅了してきました。一方で、愛情豊かな心優しい一面もあるため、家族の一員として立派な役割を果たしてくれるでしょう。
また、しつけの難しさを理解し、飼育環境や費用を整えられることを前提に、迎え入れる必要があります。これからチベタンマスティフを飼おうと思っている方は、飼うための事前準備をしっかり行って、責任感をもって大切に育ててあげてくださいね。
ユーザーのコメント
30代 女性 TIKI
20代 女性 小夏
30代 女性 Chappy
30代 女性 もこじ
大型犬、超大型犬は特にしつけを怠ると危険動物になってしまうので、飼う方はそれなりの覚悟、責任を持たなければいけませんね。チベタンマフティス…いつか日本でも見るようになるんでしょうかね?見てみたいけど、やっぱりちょっと怖い。
20代 女性 きい
1億円で落札されたとあってもう犬という部類ではないんじゃないかと思いました(笑)世界にはこのようなわんちゃんがいるんだと知れてとてもおもしろかったです。
30代 女性 ロン
海外で超大型犬のグレート・デーンを連れている人を見たことがあるのですが、一瞬仔馬を連れているのかと思いました。チベタンマスティフはライオンに見えそうですね。
でも、2億円で落札されたというエピソードには、複雑な思いがわきます。おそらくお金持ちのステータス・シンボルとして迎えられたのでしょうが、適切な飼育がされているか心配です。
富豪の中には猛獣を飼育することで、自分の財産や権力を誇示する人がいますが、トラやライオンをペットにするのはいかがなものかと思います。
チベタンマスティフは原種の特徴をとどめているでしょうから、しつけも難しいでしょうし、上級者向けの犬種と言えるでしょう。どうか幸せに暮らしていますように……。
女性 ミルク
女性 aoi
日本では2014年に11頭の登録がありますが、希少犬なのでお目にかかったことはありません。一度見てみたいですが、大きさに圧倒されてしまいそうです。
しつけをしっかりしておかないと、人の命にも関わる事故も起きてしまいます。実際起きているようですし。トラに勝つこともあるチベタン・マスティフなので番犬としてはこれ以上ないくらいの働きをみせてくれそうです。
飼うからにはしっかりした環境があるかどうかも重要ですね。日本の都心のように少々狭い空間で飼うのは無理があるのではないかと思います。力があるので家の中を破壊されてしまうこともあります。飼う場所も選ばなくてはならない犬種ですね。
またケージやサークル、器のサイズも桁違いです。そもそも入れるケージはあるのでしょうか。
2億円もしたチベタン・マスティフですが、飼うにも破格の金額が必要になりそうです。
女性 ムツコ
にしても、画像がかわいすぎます。(かわいいと表現すると怒られそうですが。)まさに、ライオンの犬バージョンですね。希少価値もあり、大切に守っていただきたい犬種ですが2億円にはびっくりです。とても強い犬種なだけにしつけや飼育環境の準備も大変だと思いますが、これからも長く残っていってほしいです。そして、いつか生で見れる機会がありますように。
女性 しおり
40代 女性 なな
人間の勝手な都合で振り回されて本当に可哀想です。
女性 シナモン
車に住まいに、ステイタスを誇示するにはそこらへんにしてもらって、犬でステイタスを語るのはちょっと犬にとっては迷惑な話かもしれませんね。