犬にびわを食べさせても大丈夫です
びわはバラ科の植物でりんごやいちご、桃、さくらんぼ等が同じバラ科の果物です。濃い黄橙色(だいだいいろ)が鮮やかで、優しい甘味が特徴の人気がある果物です。びわの旬は5~6月ごろで、市場に多く出回るようになります。
そんなびわは、昔から様々な薬効で知られ「大薬王樹(だいやくおうじゅ)」という別名を持つほどです。古くは聖武天皇の后であった光明皇后が創設した治療院でびわの葉療法を採用していたという記録もあります。
犬の味覚は甘みを強く感じるため、びわの優しい甘さを喜ぶ子も多いでしょう。びわの果肉に含まれる栄養素も犬の体に良い影響を与えるものもあります。
ただし、果肉以外の種や葉などを利用した製品には注意しなければいけない点もあります。
犬にびわを与えることで期待できる効果効能
β-カロテンで皮膚や粘膜を健康に
びわはβ-カロテンやβ-クリプトキサンチンが豊富な果物として知られています。
犬の体がこれらの成分を摂取すると、体内で酵素が働き必要に応じてビタミンAに変換されます。ビタミンAは網膜にある細胞に含まれるロドプシンという物を見るときに必要な物質になります。他にも皮膚細胞の成長を助けたり、皮脂の分泌量を調節する役割も担っています。
ビタミンAは皮膚がターンオーバーする(入れ替わる)ためには大切な栄養素で、ミネラルの中の亜鉛や、アミノ酸などと協力して役割を発揮してくれます。
また、β-カロテンを始めとするカロテノイドは、抗酸化作用を持つ成分としても知られ、人の分野では発癌予防の研究が進められています。
クロロゲン酸で体の酸化を防止
クロロゲン酸はポリフェノールの一種です。ポリフェノールは細胞膜やDNAを保護する役割を持ち、発癌予防物質としても期待される成分です。
また酸化(老化)してしまう体にかかるストレスを減らしてくれる効果もあります。シニア期にさしかかる犬や、病気を抱えている犬は酸化ストレスも大きくかかることが多いので、抗酸化成分は取っておいて損はありません。
たっぷり含まれる水分で脱水予防
びわは約90%が水分でできています。びわが出回る5~6月の時期にはだんだん気温も上がり始め、水分摂取量が増えてくる時期でもあります。
老犬などで脱水が心配な子がいるお家で、
- 元々水をあまり飲みに行かない
- 寝たきりや足腰の弱りで自分から動けない、動きづらい
といったなかなか飲水量を確保できない場合には、びわを水分摂取のきっかけ作りに利用してみてもいいかもしれません。
少しつぶして水と混ぜてあげてみたり、果肉を切ったものを少なめに水を張ったお皿に入れてみて、飲水のきっかけにしてみましょう。
びわの医療的効果は?
びわの葉エキスやびわ茶を始めとした葉の部分を使った療法が有名です。飲む以外にもびわの葉温灸といった皮膚表面からアプローチする医療法も昔から行われてきました。
びわの葉を体に取り入れることでアミグダリンによる癌に対する効果がうたわれていますが、現時点では科学的的根拠はなく、治療として動物病院で行われることはほぼありません。犬の癌に対する効果も判明していないため、気になる方は実体験ブログなどを探してみてもいいかもしれませんね。
犬にびわを与える際の注意点
びわの種や葉は避ける
びわの種や葉にはアミグダリンという成分が含まれ、薬効成分として使われています。これは未成熟なびわにも含まれている成分です。
このアミグダリンは、犬のの体内に入った時に酵素の働きによってシアン化水素という青酸に変わり、中毒症状を引き起こすリスクを持っています。
これは植物が持つ自然毒として考えられ、健康に悪影響を与える危険があるとして、農林水産省から注意喚起が出ています。
また、種を丸飲みしてしまった場合、小型犬はとくに消化管に詰まるリスクもあります。
せっかくおいしいびわを食べるのに、体に被害が出ては飼い主さんも愛犬も悲しい結果になってしまいますよね。愛犬に与えるときには熟した食べ頃の果肉部分だけあげるようにしましょう。
体格に合わせてあげる量を調節
メインで食べているごはんのほかにに果物をあげる場合、おやつをあげることとほぼ同じ意味を持ちます。カロリーを追加で摂取することになるので小型犬や肥満気味の犬にとっては飼い主さんが思う以上のカロリー摂取になってしまうのです。
また、甘くておいしい果物は糖分も多く食べ過ぎは肥満の元です。
びわは1個(可食部35g)あたり14kcalです。
果物の中ではカロリーは控えめですが、たくさん食べることで水分量が増えすぎたり、消化不良や下痢を起こすこともあるので、少しずつあげてみてください。
平均的なおやつ(果物も含む)の総量は、愛犬が普段摂取しているカロリーの10%程度に収まるように計算してみましょう。
アレルギーの交差性に要注意
花粉などの環境アレルゲンに過敏に反応するタイプの犬の場合、原因となるアレルゲンの構造が似ていることからアレルギー症状が出ることがあります。
人では口腔アレルギー症候群として知られていて、花粉を吸いこんだわけではないのに、果物を食べてのどがイガイガしたり、口周りの腫れやかゆみを引き起こします。
特にバラ科の果物で出ることが多く、びわもりんごやいちご、さくらんぼなどと同じバラ科の植物です。シラカバやハンノキなどのカバノキ科のアレルギーを持っている場合は、犬でも注意してあげたほうが良いでしょう。
びわは傷みやすい果物
びわはちょっとした衝撃が表面に加わると傷みやすいため、取り扱う時には爪を立てたり落とさないように注意しましょう。
傷んだ食べ物を体が頑張って消化しようとすると、愛犬の胃腸に負担をかけてしまいます。新鮮なものを選んで早く食べきることが大切です。
びわが新鮮かどうかを見るときには、
- ヘタがしっかりしている
- 表面にハリがあって卵型(型崩れしていない)
- 見た目の全体が黄橙色(色ムラがない)
- 表面に産毛がついていればなお良し(新鮮な証拠)
といった点をチェックしてみましょう。
暖かい地域で育つびわにとって、低温になる長時間の冷蔵保存はダメージを促してしまう元になります。涼しく暗い場所で保管し、2日以内に食べきりましょう。冷やして食べたい場合は、食べる2時間ほど前に冷蔵庫に入れるとひんやりとした食感で食べられますよ。
愛犬と初夏の果物びわを楽しもう
種や葉に気をつけて果肉を楽しむなら、びわは犬も人もおいしく楽しめる果物です。ドッグフードや栄養バランスが整った手作り食のほかに、時には季節を感じる果物を愛犬と食べるのも毎日の暮らしの中でちょっとした楽しみになるでしょう。
愛犬の健康管理に気をつけながら「おいしいね!」と楽しめる食事をすることは心の健康にもつながります。愛犬にびわをあげたいなと思ったら与え方に注意して少しずつ楽しんでみてくださいね。