犬が山椒を食べても大丈夫?
愛犬が山椒を口にしてしまったら、人とは体の仕組みが違う犬のことなので、何か毒性がありはしないかと心配になるでしょう。
しかし、結論から言えば犬が山椒を食べてしまったとしても、大きな緊急性がある事態になることはほぼありません。
もしも一度に大量に食べてしまうことがあれば、さすがに山椒独特の刺激から犬が元気をなくしてしまう可能性もあります。しかし、少量で中毒症状を示したという報告はなく、そもそも犬が大量に山椒を好んで食べることは少ないと言えます。
とは言え、山椒自体は犬にとって良い食べ物とは言えないため、うっかり口にしてしまわないように注意してあげましょう!
犬に山椒を与えてはいけない理由
山椒を与えないほうが良い理由を知るには。まずは山椒がどんな食べ物かを知るとより納得できます。山椒の成分と食べ物としての効果を知って、愛犬にどんな影響が起きる可能性があるかを考えてみましょう。
山椒ってどんな食べ物?
山椒の原産国は日本で、海外では「Japanese Pepper(ジャパニーズ・ペッパー)」として知られる香辛料です。
うなぎの上に山椒の実の皮を粉末状にしたものをかけたり、煮魚と一緒に実を入れたりと、何気なく日本人の食卓に多く登場して日頃から食べている植物です。小粒ながら1粒食べただけでも独特の辛味を感じ、その強い香りから食欲が刺激されます。そのため、山椒だけで食べたがる犬はあまりいないでしょう。
強い匂いに反応することが多い犬だとしても、どちらかと言えば刺激臭のある胡椒や山椒のような匂いは苦手だと言われています。しかし、ちりめんじゃこと一緒に煮て食べる「ちりめん山椒」や、調理の脇役としてたびたび登場するため、食卓のおいしそうなごはんにつられて一緒に食べてしまうリスクは高い食材です。
山椒の種類と使い方
山椒にはたくさんの品種があり、日本国内で栽培されているものから、自然に自生しているものまで様々です。
山椒の葉
山椒の若葉として知られる木の芽は、独特の香りとほろ苦さを楽しむため、和食の焼き物や煮物で活用されています。香りづけや、鮮やかな緑の彩りがお皿を美しくする食材として使われ、時には味噌と混ぜて田楽で楽しむこともあります。
山椒の花
若葉の後のわずかな期間に楽しめる貴重な食材として、山椒の花を漬けた「花山椒」として食されています。実のような辛味はありません。
未熟な実
「青山椒」「実山椒」と呼ばれ、香りや辛味が最も強いこの時期ならではの使い方をされます。主に魚の煮物や肉料理のスパイスとして少量を楽しんだり、ちりめん山椒をはじめとした佃煮で活用されています。
粉山椒
熟した実の皮は乾燥させて魚の臭み消しや七味唐辛子の材料として使われています。独特の香りとピリッとした刺激が、脂の多い食材でもすっきりと食べさせてくれるため好んでかけている人は多い香辛料です。
こういった山椒の種類の中で、主に家庭でも使われることが多く、犬が食べる可能性が高いのは実山椒・粉山椒と言えるでしょう。
山椒の成分が犬に与える影響は?
独特の山椒の辛みは、「サンショール(sanshool)」という成分から発生しています。舌がピリッとしびれるような感じもこの成分から来ていて、簡単な局所麻酔のような麻痺作用があります。
漢方の世界では、胃腸の働きを活性化させて、消化不良に伴う様々な症状を改善させるものとして昔から知られてきました。他にも、食欲不振の改善や利尿剤として活用されたこともあります。
しかし、犬にとってはこの辛味成分が強すぎることがほとんどで、舌をしびれさせるその食感にびっくりしてストレスになってしまいます。辛い物を食べた犬が一時的にパニックになってしまった例もあるため、普段香辛料を食べなれない犬にとってはその刺激は衝撃でしょう。
また、食べ物すべてにおいて、アレルギー症状が絶対に出ない食品というものはありません。継続して山椒の混じった料理のおこぼれを食べたりしている子は、山椒で食物アレルギーを引き起こす可能性があるということも知っておきましょう。
同時に、人の体格や体の仕組みが違う犬にとって、胃腸を刺激しすぎて消化不良を起こす可能性もあります。人の場合でも、胃腸の病気を抱えている人やお腹が日頃から弱い人では下痢の原因・消化器疾患の悪化にもつながると言われているため、犬には与えないように注意しましょう。
犬が山椒を食べてしまった際の対処法
あえて愛犬のごはんに山椒をふりかけたり混ぜることはなかったとしても、愛犬が食卓の上のごはんを盗み食いしてしまったり、山椒の存在を忘れて料理の1品として食べさせてしまうことは十分考えられます。
もしも愛犬が山椒を食べてしまったら、食べた直後の愛犬の様子を見てみましょう。少量でさほど気にしない大らかな子であれば、その辛み成分も気にならないほどかもしれません。しかし、その刺激によって口を気にする様子があれば、他の味がする少量のおやつなどでごまかしてあげたり、飲水させてあげたりとびっくりしている気持ちを落ち着かせてあげましょう。
その後様子がいつも通りで、食べた山椒の量が少なければ1~2日お腹を壊さないか様子を見てください。もしも下痢をしたり、それ以外にも嘔吐まで症状に混じるようであれば、酷くなる前に動物病院へ向かいましょう。
山椒を食べた時に焦るあまり無理に吐かせようとすると、それが逆に犬の体や心にストレスをかけてしまいます。犬自身が山椒を食べてもケロッとしていれば、その後は与えないように注意すれば十分です。
犬が山椒の匂いにつられて食べ物を欲しがる時は?
山椒の強い匂いは、犬を人の食卓に誘う一因になることもあるでしょう。しかし、人用に調理された料理のほとんどは、犬たちにとって濃い味付け・多すぎる塩分の食事ばかりです。特に山椒を使う料理では、和食ならではのしょうゆやみりん、料理酒など、犬の体には必要のない調味料であふれていることがほとんどです。
また、山椒の刺激だけでなく、人の食卓にはねぎ類をはじめとする中毒成分を持つ食材や、きのこや魚介類など、そのままでは消化不良を起こしやすい食材もたくさんあります。メインのごはんは総合栄養食と記載のあるドッグフードにするか、犬にとって毒性のない、消化が良い調理法で作られた食事かのどちらかにしましょう。
基本的には人と犬の食卓は別にし、人がごはんを食べている時には、愛犬の場所(サークルや別室など)にいてもらうように心がけてください。そうすることで、山椒以外の食材の「うっかり誤食」を防ぐことにもつながります。
ごはんは体を健康に保つためのものです。せっかくなら、愛犬が刺激物で辛い思いをするリスクは避け、おいしく・体に優しい食材だけ選んで食べさせてあげてくださいね!