シベリアンハスキーの青い目の理由を探る
青い目を持つ犬と言えば、多くの人がシベリアンハスキーを連想するのではないでしょうか。シベリアンハスキーは、確かに青い目を持つ個体が多く、その美しさはとても印象的です。
シベリアンハスキーの他にも、青い目が発生する犬種があり、どの遺伝子がその色を決めるのかという研究が多く行われてきました。
いくつかの犬種では、2つの遺伝的変異が青い目に関連することが分かっていますが、シベリアンハスキーについては当てはまらず、ハスキーの青い目を決定づける遺伝子は未知の状態でした。
このたびアメリカのコーネル大学と、犬のDNA解析を請け負う企業エンバーク・ヴェテリナリー社が共同で研究を行い、シベリアンハスキーがなぜ青い目を持っているかというリサーチ結果を発表しました。
青い目の色を決定づける遺伝子
研究を行ったエンバーク社は、一般の飼い主から寄せられた検査用サンプルから、犬がどの犬種のDNAを持っているか、特定の病気に関連する遺伝子を持っているかなどの検査を請け負っています。
今回の研究には、このエンバーク社の顧客の犬6070匹の遺伝子データが使用されました。
これらの遺伝子データと、飼い主から寄せられた犬の外観に関する情報を基にリサーチを行った結果、『イヌ18番染色体』上のタンデム複製と、青い目の発生に強い関連性があると判断されたのだそうです。
このイヌ18番染色体は、『ALX4』という遺伝子の上流領域にあります。ALX4は以前に他の研究者によって、哺乳動物の目の発達及び色素沈着に役割を果たすことが示されています。
研究チームが立てた仮説は、イヌ18番染色体が複製されることで、ALX4遺伝子の発現を変えて、目の色素沈着に関連する遺伝子の抑制につながる可能性があるというものです。
青い目というのは青い色の遺伝子ではなく、茶色や黒い目を作る色素沈着が起こらないために色の薄い青になるのですね。
他の犬種の青い目
さて、先に挙げた「青い目を発生させる遺伝的変異」ですが、これはオーストラリアンシェパードやダルメシアンなどの青い目、又は片方が青、もう片方が茶色の目につながることが知られています。
これらの遺伝子変異は犬の毛色とリンクしています。例えばマールや、パイボールドの犬はこの遺伝子変異体を持っています。
しかしこの変異体は、なぜマールではない、トライカラーのオーストラリアンシェパードにシベリアンハスキーのような青い目が発生するのかを説明するのに、十分ではありませんでした。今回の研究の中で、トライカラーのオーストラリアンシェパードは、シベリアンハスキーと同じく、イヌ18番染色体の複製を持っていることが分かったのだそうです。
まとめ
シベリアンハスキーの青い目の発生に関連する遺伝子が特定されたという研究をご紹介しました。
この研究にデータを提供したエンバーク社は、あらゆるタイプの雑種から純血種まで膨大な量の遺伝子データを保有しています。また消費者である飼い主とのコンタクトの際に、犬が暮らしている環境についての質問をすることも容易です。
同社はこれらのデータを用いて、犬の病気の発症における遺伝と環境の役割や関連を明らかにする研究を行い、犬と飼い主両方の生活改善を目指しているとのことで、その最終的な目標は、「予防可能な犬の病気を根絶すること」としています。
『犬の遺伝学』などと言うと、大変難しくて近寄り難いというイメージがあるかと思いますが、愛犬の健康な生活に密接に関係しています。
今後も注意してチェックしておきたい分野ですね。
《参考》
https://journals.plos.org/plosgenetics/article?id=10.1371/journal.pgen.1007648
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