土佐犬の歴史
土佐犬の読み方は「とさいぬ」と読み、一般的言われている「とさけん」は呼び名になります。土佐犬と呼ばれている犬の正式名称は「土佐闘犬」であり、高知県では天然記念物にも指定されています。
土佐犬のルーツ
土佐犬のルーツは、高知県で狩猟用の犬として人間と共に暮らしてきた、現在の「四国犬」です。
幕末から明治に入る頃から、戦いに出る武士の士気を高めるために「闘犬」という娯楽が盛んになり、強さと持久力を持った体の大きい犬種を生み出すために、四国犬にマスティフ、グレートデーン、ブルドッグ、ピットブルなどを交配させ、現在の土佐犬が生まれました。
国内最強犬種とも言われる土佐犬は海外の反応や評価も非常に高く、マスティフの血を色濃く残しているため「ジャパニーズマスティフ」とも呼ばれています。
しかしイギリスなどでは1991年から危険犬種として規制されるようになり、飼育するためには飼い主に厳重な管理を義務付けている国もあります。
土佐犬に関する近年の動き
高知県で人々に愛されてきた土佐犬ですが、県内には「土佐闘犬センター」など、土佐犬を見ることができる民間施設がありました。土佐犬について詳しく知ることのできる観光施設で、闘犬の様子が見れる場所や、子犬とふれ合えるコーナー、しめ縄と化粧まわしをつけた土佐犬と記念撮影ができるなど、土佐犬を見たいという人の望みをかなえてきた施設です。
2014年に施設名を「とさいぬパーク」に改め営業をしていましたが、2016年に50年以上の歴史に幕を降ろし、閉館したことで、現在は土佐犬を直接見られる施設はありません。
闘犬としての歴史
日本で闘犬が始まったのは14世紀頃からと言われています。海外でも闘犬は民間の中で広く親しまれており、死ぬまで戦わせるというルールで行われていた国もあったようですが、動物愛護の視点から現在は闘犬を禁止している国も増えてきました。
日本国内では、土佐犬普及会、土佐犬協会や土佐犬連合会などの愛好家によって、闘犬の歴史を守っていこうと、全国土佐犬選抜闘技大会や土佐犬大会などが定期的に開催されています。
収益を出すことを目的とした興行的な闘技ではなく、試合のために訓練された土佐犬たちは、細かなルールのもとで安全に試合を行います。勝ち進みチャンピオンとなった犬は横綱としてお披露目されます。
土佐犬の子犬の値段
土佐犬の子犬の相場は10万円~50万円と価格に幅があります。これは、人気の毛色である黒や赤は高値になる傾向があり、親の血統や体格によっても価格が変動するためです。親犬が歴代の横綱など、名犬の血統を持つ子犬は更に高値で販売されます。
土佐犬はペットとしてではなく闘犬として繁殖されているので、ペットショップなどでの販売はなく、ブリーダーからの購入が基本となります。
土佐犬の性格
- 聡明
- 警戒心が強い
- 闘争本能が強い
- 忍耐強い
- 人懐こい
- 穏やか
土佐犬の性格は勇敢で闘争心が強く、信頼した飼い主には大変忠実です。闘犬として、より強い犬を作り出すために交配されてきたため気性の激しい面もありますが、大型犬の特徴である穏やかで人懐こい性格も持ち合わせています。見た目は洋犬のようですが、忍耐強く賢い日本犬の性格も強く受け継いでいます。
土佐犬の特徴
大きさ
体重:30キログラム~100キログラム
体高:オス60センチメートル
メス55セントメートル
土佐犬の大きさは、30キログラム台の小型犬サイズから100キログラムを超える大型犬まで個体差がかなりあります。JKC(ジャパンケンネルクラブ)の土佐犬の規定にも体高だけが表記されており、体重の規定はありません。土佐犬の愛護団体によって異なる基準が設けられているようですが、55キログラム以上の場合は大型犬と分類されます。
被毛
土佐犬の被毛は短いスムースコートで、毛色は「赤毛」「黒毛」「虎毛(ブリンドル)」「金色がかった茶色(フォーン)」と呼ばれる色が基本です。JKC(ジャパンケンネルクラブ)では胸や足にある白斑も認定カラーとして認められます。
体の特徴
土佐犬はがっしりとした頑丈な骨格を持ち、引き締まった筋肉質な体をしています。皮膚のたるみは相手の犬に噛まれても致命的なダメージを受けないためと言われています。大きく四角い頭にたれ耳で、角張った鼻が特徴です。鼻先から口元まで黒く、マスティフ種に共通する堂々とした威厳のある顔つきをしています。
土佐犬をブリーダーから迎えるには
土佐犬を迎え入れることを決めたらブリーダーを見つけてコンタクトを取りましょう。土佐犬専門のブリーダーは経験も豊富で飼い方やしつけの方法なども教えてくれます。
より強い犬種を生み出そうと土佐犬を他の犬種と交配させてミックス犬を販売しているブリーダーもいますが、純血種を保存しようとしている団体ではこれを禁止しています。信頼できるブリーダーを見極めるため、犬舎の見学を申し込んでから購入しましょう。
土佐犬の里親になるには
土佐犬を迎え入れたい場合、里親になる方法もあります。しかし、土佐犬は里親に出されることがあまりない犬種なので希望するタイミングで出会えることは難しいかもしれません。インターネットでも里親募集を見ることができるため、こまめにチェックすることをおすすめします。
何らかの理由で保護された犬を引き取る場合、これまでどのようにしつけられてきたかや、里親に出された経緯などをしっかり知っておくことが大切です。きちんとしたしつけがされていないと危険な犬種であるため、過去の生育環境などが不明な土佐犬を引き取るにはかなりの心構えが必要です。
土佐犬の飼い方
環境
土佐犬は縄張り意識が強く知らない人が近づくと攻撃的になることがあるので、広い庭で頑丈な檻を用意して飼育する必要があります。このことからも室内飼いには向かない犬種であるということがわかります。
海外では土佐犬は「危険犬種」として飼育の規制対象に指定されています。日本ではそこまでの規制はありませんが、自治体によっては届け出や飼育許可の申請が必要とされ、檻の設置などを明示する必要がある場合もあるので、飼うことを決めたら事前に居住自治体に問い合わせましょう。
運動
土佐犬はたくさんの運動量が必要な犬種のため、1日2回、1時間程度の散歩を行いましょう。適正な運動量を確保してストレス発散をさせて下さい。警戒心が強く闘争本能が強いので、散歩の際も小さい子供や他の犬がいない場所、時間帯を選び、リードを外すようなことは絶対にしてはいけません。土佐犬は力も強いのでリードや首輪も丈夫なものを選びましょう。
しつけ
土佐犬は闘犬の血が強いため、しつけをしっかり行わないと他の犬との喧嘩など事故につながる可能性があります。子犬の頃から社会性を養えるよう、他の犬や家族以外の人と触れ合ったり、慣れさせることが大切です。徹底したしつけと訓練で飼い主との信頼関係を築きましょう。土佐犬の性格を理解しているプロにトレーニングしてもらうことも一つの方法です。飼い主も一緒にトレーニングを受け、しっかり犬をコントロールできる知識や技術を学びましょう。
餌
土佐犬の食事の量は1回に400グラムから750グラムとかなり多いですが、太りやすい犬種なので摂取カロリーに注意して適正体重を保つようにしましょう。股関節形成不全にかかりやすいので、関節ケアに効果があるドッグフードを選ぶのがおすすめです。
お手入れ
土佐犬の被毛は短く硬いスムースコートなので、週に1~2回のブラッシングで十分です。しかし、皮膚病を起こしやすい犬種なので、ブラッシングと同時に皮膚のチェックとマッサージをしてあげましょう。シャンプーは月に1回から2回程度で良いですが、汚れたら濡らしたタオルなどで体を拭いてあげて下さい。よだれが多い犬種なので、口周りや顎もこまめに拭いて清潔にしてあげましょう。
土佐犬の寿命
土佐犬の寿命は10年~12年と言われ、大型犬としては平均的な寿命です。体の大きさによっても寿命に差があり、18歳まで生きた土佐犬もいたという記録もあります。股関節形成不全や胃捻転など土佐犬がかかりやすい病気を予防し、健康管理に気をつけることが土佐犬と長く一緒に過ごせる秘訣です。
土佐犬がかかりやすい病気
皮膚病
皮膚にたるみのある土佐犬は皮膚病に注意が必要です。たるみに汚れがたまらないよう顔周りなどの汚れをこまめにふき取り清潔を保つようにしましょう。脂肪の多い餌や脂質の摂りすぎは皮膚トラブルの原因ともなるので、バランスの取れた食事を心がけましょう。
胃捻転
大型犬に多い胃捻転も、土佐犬がかかりやすい病気です。胃捻転は胃が拡張したり、ねじれたりすることによって低血圧性や敗血症ショックを起こしてしまう病気で、速やかに胃を減圧する処置が必要になります。水をがぶ飲みをしない、勢いよく大量の食事をとらない、食後すぐに激しい運動をしないことなどで予防できます。
股関節形成不全
土佐犬がかかりやすい股関節形成不全は、遺伝的疾患とされています。成長期に多く発症するので、1歳から2歳の間にレントゲン検査などを受けておくと安心です。遺伝的要因だけではなく環境要因も関係していることもあるため、栄養バランスの整った食事と適度な運動を心がけるようにしましょう。太らせないように股関節を支える筋肉を強化することも大切です。
まとめ
土佐犬は攻撃的な面がありますが、信頼している飼い主には甘えてなつくこともあります。飼育が難しい犬種ですが、子犬の頃から人や犬に慣れさせ社会性を身に着けておけば家庭犬として飼育することも可能と言われています。
土佐犬を飼うためには充分な時間を取って世話をできることや経済的余裕が必要です。飼い主が最期まできちんと責任を持って面倒を見られるよう、モラルと覚悟を持って迎え入れましょう。