過去に暴力を受けていた犬を安心させる3つの方法

過去に暴力を受けていた犬を安心させる3つの方法

過去に人間から叩く、蹴るなどの暴力を受けた犬は心に深い傷を負っています。そういった犬たちの中には飼育放棄などの末に保護され、新たな飼い主の元へ引き取られるということも少なくありません。人間の暴力によるトラウマを持つ犬にはどのように接すればいいのか。そしてどうすれば安心して心と体を預けてもらえるのか考えていきたいと思います。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

①犬から近づいてくるのを待つ

こちらを見据える薄茶×白のミックス犬

人間から暴力を受けた犬は人間に対して強い不信感を持っている場合が多いと思います。人間に近づいたことで殴られ、蹴られ、苦痛を与えられた過去を持つ犬は、人間の手が届かない距離、すぐに逃げることのできる距離を保とうとして常に警戒心を持っています。そしてその距離を不用意に縮めてくる相手に対して不安や恐怖を感じ、恐怖心から逃走や攻撃といった行動に出てしまうことは少なくありません。

そのため暴力を受け人間に警戒心を持っている犬との接し方として大切なのが、こちらから距離を詰めないということ。犬の視界には入るけれど犬が逃げない距離を保った場所でしゃがんで体を小さくし、さらに体を犬に対して正対させたり犬の目を見つめたりしないようにしてください。犬の動向を気にしつつも、あえて見ていないふりをし、犬が近づいてくるまで根気よく待ってあげるようにしましょう。犬が近づき背後から体のにおいを嗅いでくるような行動を見せても、できるだけ動かず犬がにおいを嗅ぎ終わって納得するまで待っていてあげてください。こうすることで「私はあなたに危害を加えることはありません。どうぞ確認してください。」と伝えることができ、安心して近づいていい相手だと犬に認識してもらいやすくなります。

②手の匂いをかがせてから触る

人の腕のにおいを嗅ぐウェスティ

暴力を受けた経験のある犬の中でも特に人間の手を怖がる“ハンドシャイ”な犬との関わりでぜひやってほしいことです。上記したように犬から近づいてきて興味を示すようであれば腕を伸ばして握った手の甲を犬に向けてにおいを嗅がせてあげてください。犬にとってにおいを嗅ぐという行為は非常に重要で、対象を観察し把握するために欠かすことのできない行動なので犬が納得できるまでじっくりと嗅がせてあげてください。

ここでポイントとなるのが以下の通りです。

  • しゃがんで体を小さくして犬から来るまで待つこと
  • 手をなるべく動かさないこと
  • 握った手の「甲」を見せること

自分自身の目の前に手をかざしてみても分かると思いますが、手の平というのは圧迫感を感じさせやすく犬によって恐怖を感じやすいものです。それに比べ手の甲というのはやや無機質で圧力を感じにくいため、犬も恐怖感が少なくなると言われています。手を握るのは、開いた手よりも小さくなりより犬に恐怖を感じさせにくくするためと、万が一犬が噛んできた場合にけがをする部分を出来るだけ少なくするためです。握った手の甲を犬に差し出して嗅がせるというのは初めて出会う犬に対しての最初のあいさつの時にも使えるテクニック。特に初対面の人に少し警戒心を持つタイプの犬には効果的で、仲良くなるための近道でもあります。そして触るのは犬がにおいを嗅ぎ終わってその場にとどまったり、鼻で手に触れてきたりしたり、犬からのアプローチが認められてからにしましょう。

③絶対に無理強いをしない

頭を下げて構えるブラックのチワワ

犬とのあいさつが済み、やや警戒心が取れてきたり犬から近づいてくることが増えてきたとしても決して油断はしないでください。犬を飼っているということは基本的に犬が好きな人だと思いますので、犬と触れ合いたいという気持ちを持っている場合が多いと思います。しかし、過去に暴力を受けた犬の場合、その多くが人間に対する恐怖心を持っているのでちょっとでも怖いと感じるようなことがあると一気に距離を取り心を閉ざしてしまう傾向にあります。

そのため触ることができるようになった犬でも、決して乱暴な扱いをしたり無理強いをしたりすることのないように注意が必要です。触っている時などに犬が手を避けるような仕草をしたり体を引いたりするようなことがあれば、その後無理に触ったり押さえつけたり引き寄せたりすることは絶対にしないようにしましょう。

<まとめ>暴力を受けた犬を安心させる方法

安心して抱っこされるブラウンのトイプー

ここではあえて“安心させる方法”のひとつとして挙げませんでしたが「暴力をふるわない」ということは最低条件であり絶対条件です。犬にとって一度受けた恐怖を伴うような暴力は決して忘れることはできないでしょう。その恐怖心を和らげるためにはとても時間がかかります。実際、虐待などを経験して保護された犬の中には、人間に対する恐怖心を克服できず人に心を開けないまま生涯を終えてしまう犬も少なくありません。そんな犬たちに安心してもらおうと必死に努力をしても、一度暴力をふるってしまったらまた一からやり直し、むしろより不信感を強めてしまう事態に陥ることもあります。

暴力を受けてきた犬との接し方には非常に注意が必要で、その関わりは根気のいることでもあります。それはとてもとても時間や手間のかかることかもしれません。しかし人間から受けた暴力によるトラウマを克服させることができるのは、同じ人間でしかないのです。焦らず、ゆっくり、その犬のペースに合わせて寄り添うことが何よりも大切です。

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