ワクチン接種の普及などにより犬・猫の平均寿命が過去最高に
東京農工大と日本小動物獣医師会の大規模調査により、2014年時点で、日本国内でペットとして飼育されているイヌとネコの平均寿命が、イヌは13・2歳、ネコは11・9歳と、それぞれ過去最高を記録したことが発表されました。
また、この25年間で、イヌは1.5倍、ネコは2.3倍も長生きするようになったともされています。
人間の平均寿命も緩やかに長寿化の傾向にありますが、25年間でこれだけ平均寿命が伸びるのは、ある意味で"凄過ぎる”と言えるでしょう。
では、なぜこれ程に平均寿命が伸びたのでしょうか?
ワクチン接種の普及
この記事を書いている筆者の親世代、つまり昭和20年~40年代頃の話ですが、現在のように動物病院でのワクチン接種は一般的ではありませんでした。
当時、イヌについては外飼いが一般的でしたし、ネコについては家猫であっても日中は外で自由に活動しているのが当たり前の光景だったといいます。
これは一見すると自由度が高くていいように思いますが、実際には5歳~10歳頃の間に、ある日、急にぐったりしたり苦しんだりして亡くなることが多かったようで、何らかの疾病を抱えていたと推察されます。
昔のイヌとネコの死因については、頻繁に動物病院にかかる時代でなかったことも手伝い、データとしては明らかにしようがありませんが、ワクチンの必要性が認識され普及率が上がることで、病に対する防御が可能になったのは想像に難くありません。
飼育環境の向上
イヌ、ネコ、共に言えることですが、飼い主さんの知識が広がった結果、食事や住環境が飛躍的に向上している点も同時に挙げなければいけないでしょう。
『ペットのご飯は人間の残飯で十分!』と冷やご飯に、玉ねぎやネギの入った味噌汁をかけたぶっかけを与えていた時代も長くありましたし、『外で飼うのが当たり前!』と考える飼い主さんも多くいたものですが、今ではそのリスクが広く知られるようになりました。
玉ねぎやネギについては、イヌ・ネコ共に食べたら危険な食材であることは周知の事実として認識されていますし、イヌ・ネコ共に人間とは必要な栄養のバランスが異なることも常識として浸透しています。
また、イヌやネコにもアレルギーを持っている場合があることなども知られていますし、犬種や猫種ごとの暑さ寒さに対する耐性や、外で飼われることで病気を貰ったり、通りかかる人に余分なオヤツを与えられたりすることなどもあって、最近では家の中で飼われている家庭も増えています。
場合によっては、外飼いのペットが悪意のある仕打ちをされるという事件の報道なども、室内飼いするきっかけになっているかもしれません。
時々、イヌ・ネコの方がいい生活していない?過保護じゃない?と苦笑いするシーンもあるかもしれませんが、愛するペットであるイヌ・ネコの健康的な長寿の基本は、この飼い主さんの与える飼育環境にあるのではと思います。
長寿化に伴って、飼い主が用意すべきこと
愛犬の衣食住+美+動環境の再考と改善
年齢を重ねるということは、どうしても身体に不調が生じる可能性が高くなるということ。
人間も30代、40代、50代、60代・・と年齢を重ねる中で、これまでの経験に裏打ちされた円熟味のある生き方が出来る様になる一方で、肩こりや腰痛、膝の痛み、胃腸が弱くなった等、病気とまではいえないけれど憂鬱な症状のために活動が億劫になったりします。
これはある程度は避けられないことですが、だからといって何も対策をしないでいるのと、対策を講じるのとでは大違いですから、みなさん様々な対策を取られているかと思います。
これは、愛犬についても同じことで、我慢強い愛犬達は、本当にどうしようもなくなるまで意思表示をしてくれません。
そんな苦しみを抱えさせる前に、早め早めに対応を考えてあげましょう。
- 衣について
服を着せる習慣については、飼い主さんのポリシーも大きく影響すると思いますが、四季がある日本においてはどの季節においても、何もしなくても愛犬が適温で快適に過ごしているというケースは稀です。
更に、高齢化に伴い、暑さ・寒さへの耐久能力も落ちますので、犬種や個性、体質を見極めて、時には服を着せるなどの対応を考えてあげましょう。
- 食について
パピー世代、若い世代、シニア世代とドッグフードが用意されている事からもわかるように、シニア世代に必要な栄養もあれば、カロリーを抑えるといった工夫も必要になります。
犬種にもよりますが、7歳ぐらいを目安に、食事内容の見直しやサプリメント(関節や目に関するものが一般的です)の利用も視野に入れましょう。
同じ犬種を飼育している先輩飼い主さんのアドバイスや、獣医師さんの指導を元にするのが得策でしょう。
人間ドックならぬ犬ドック、アレルギー検査も必要に応じて受けましょう。
- 住について
ワンちゃんは1人で静かに眠る時間を好む傾向にあるので、落ち着いて眠れる場所があるかどうかの確認をしましょう。
また、関節に問題が生じるワンちゃんは本当に多いので、フローリングの床ならばカーペットを敷く、ソファに上がるならば階段を用意する等、足腰に負担のかからない環境をつくっていきましょう。
- 美(ケア)について
ブラッシングや耳掃除、歯のケアをコミュニケーションもかねてしっかり行ないましょう。
涙焼けや涎焼け、足先を噛む事での変色や肉球の炎症は、コミュニケーション不足の他に、アレルギーや体調不良等のサインの証拠です。
放置して治るものではありませんので、早めにケアを考えましょう。
また、歯石が気になる場合は歯石除去も必要な場合があるかも知れませんし、歯石除去手術となると全身麻酔を要するため、高齢になる前に決断しましょう。
- 動(散歩運動)について
精神的にも落ち着いてきて、若い頃ほど遊びたがらなくなったりはしますが、犬という動物の特性上、適度な運動は欠かせません。
ワンちゃんの体力を考えて、無理のない時間の散歩を心がけましょう。
また、足腰の状態によっては補助具の使用も必要になるかもしれません。
もし仮に歩行が困難になっても、愛犬の健康状態が悪くなければカートに乗のせて、よく知った公園で昔なじみのお友達に会う時間を作るのも、高齢犬の心のケアには有効です。
飼い主さんは心と先立つものの準備を
ざっくりとですが、愛犬が15年生きる仮定して考えましょう。
15年という期間は、産まれたばかりの赤ちゃんが中学校を卒業するのに相当します。
子供で考えると大変な変化ということがわかると思いますが、これは大人の人間でも15年前と全く変わらない生活をしているケースは非常に少ないでしょう。
結婚・出産を経て家族が増えたり、その逆に家族が減ったり、住居や職を変わっていることもあるかもしれません。そうなれば、収入や支出も変わりますし、震災をはじめとする想定外のダメージを受けることもあるかもしれません。
そんな変化に対応するのは簡単ではありませんが、心の準備をどれだけ普段から積み重ねておくかが大切なことだと思います。
また、下世話な話題になりますが、どれだけ愛犬を愛する気持ちがあっても、先立つもの・・「お金」がなければ実現できない事が多々あるのも現実です。
食事、検査や治療、高齢になるにつれ必要な出費が必ずといっていいほどありますので、愛犬のための保険や貯金といった準備も考えておきましょう。
まとめ
たまたまなのかもしれませんが、私自身は、18歳、19歳といった高齢犬と出会う機会がままあります。
外で出会うので、飼い主さんと一緒に散歩(ヨチヨチ歩きだったりしますが)していたり、カートに乗っけてもらって外の空気を楽しんでいるという事が多く、飼い主さんも高齢の方が多いのですが、みなさん愛犬の面倒を見れるぐらいの健康状態は維持されていらっしゃいます。
愛犬が健康長寿の生活を送る基本は、飼い主さんが健康であること、もう、これに尽きると思います。
お互いに健康に気を使って、長く楽しく生きたいものですね。