「犬」の文字が入った四字熟語はたくさんある!
みなさまご存じのように、2018年の干支は「戌年」です。犬を飼われている人は、自身の愛犬を年賀状やカレンダーの写真に載せた方も多いのではないでしょうか。かく言う筆者もそのうちの一人なのです。
戌年ということから、犬をテーマにしたイベントが各地で多く開催されているようです。犬同伴OKのお店、レストラン、ホテル、アミューズメントパークなども年々増えてきていると思います。
インスタグラムなどをのぞいてみても、犬の投稿は本当に本当に増えていますよね!みんなかわいく着飾ったり、かぶり物をしたり、愛らしい姿で映っています。
かわいらしい姿ももちろん捨て難いですが、少し立ち止まって「犬」の文字の入った四字熟語を見ていきましょう。四字熟語には、はるか昔からの慣用表現であったり、故事成語であったり、はるか昔からの生活や習慣がそこに表現されています。
突き詰めてみると、何と「犬」の文字が入った四字熟語、実はたくさんあるんです。数ある四字熟語の中から、今回は10個ピックアップして、その意味を見ていきたいと思います。
犬にまつわる四字熟語<人との関わり>
- 犬牙相制(けんがそうせい)
- 邑犬群吠(ゆうけんぐんばい)
犬牙相制(けんがそうせい)
こちらも同じく「史記」に出てくる四字熟語。意味は国境が犬の牙のように入り組んでいて、その国々が互いにけん制しあっている様子を例えています。犬の歯のかみ合わせが入り組んでいることを知っていたということは、それだけ人と犬とが密接な関係にあったと言えるのではないでしょうか。
邑犬群吠(ゆうけんぐんばい)
こちらも出典は古く「楚辞」に出てきた四字熟語。小者たちが集まってうわさや悪口などを話し合ってうわさを立てることを表しています。一文字目の邑は「むら」を表す言葉で、群がり吠え立てる村里の犬のように見えることから、この言葉が生まれたのでしょう。
近くに犬同士がいると、1匹が鳴き始めると、他の犬たちも呼応するように鳴き出します。それは犬がもともと群れで生活していた名残があるからとも言われています。群れ意識、仲間意識のあることを昔の人はよく知っていたのですね!
犬にまつわる四字熟語<他の動物との関わり>
- 犬猿之仲(けんえんのなか)
- 犬馬之心(けんばのこころ)
- 瓦鶏陶犬(がけいとうけん)
- 鷹犬之才(ようけんのさい)
- 淮南鶏犬(わいなんのけいけん)
- 犬馬之労(けんばのろう)
- 犬吠驢鳴(けんばいろうめい)
- 豚児犬子(とんじけんし)
犬猿之仲(けんえんのなか)
これは余りにも有名な四字熟語ですよね。犬と猿は相性が悪く互いに敵視することから、非常に仲が悪いさまを表現した言葉です。ことわざから来た言葉で「犬猿の仲」と「の」が平仮名で表記されることも多いでしょう。
犬馬之心(けんばのこころ)
これは古く「史記」を出典とした四字熟語。主君への忠誠心を四字熟語で表しています。馬や犬が飼い主に対して忠誠心を尽くすことは、よく知られていることと思います。特にこの言葉は、自分の忠誠心を謙遜して伝えるときに使われるそうです。
瓦鶏陶犬(がけいとうけん)
それぞれの漢字の表している意味は、素焼きの鶏と陶製の犬。偽物ではいくら似せていても、本来の役に立たないことを例えています。本物だからこそ、鶏が朝を告げたり卵を産んだり、また犬が吠えて番をしたり家畜を守ったりすることができます。犬が人の生活にしっかりと根付いていたことが分かる、四字熟語です。
鷹犬之才(ようけんのさい)
猟で使われる鷹や犬は主の意思に従って働くことから、 手先として使うことで役に立つ才能やその才能の持ち主のことを例えています。今でも猟に限らず、様々な分野で働く犬たちが社会で数多く活躍しています。従順でかつ賢い犬たちは、昔も今もこれからも、人のために尽くしてくれる存在なのでしょう。
淮南鶏犬(わいなんのけいけん)
こちらも中国の古い故事から来た四字熟語。出典は「神仙伝」。他人の権力と勢力で、自分が利益を得たり出世したりすることを表しています。中国の前漢時代、淮南の王である劉安が昇天した後に、彼が調合した仙薬の残りを犬や鶏がなめると、その犬や鶏も昇天できたそうです。人と犬が密接な関係であったことが、この故事からも見えてきますね。
犬馬之労(けんばのろう)
これは中国の三国時代の頃の四字熟語で、出典は「三国志演義」。自分のできる限りのことを、主君や他人のためにすることを表す言葉です。「犬や馬なみにしかできませんが」という謙遜の意味が含まれていることから、この言葉が生まれたようです。
しかしたとえ謙遜であったとしても、犬も馬も人が指示すれば懸命に精いっぱい尽くしてくれます。謙遜の言葉にとって代わるほど、犬が献身的であることを表しているとも言えます。
犬吠驢鳴(けんばいろうめい)
漢字だけを見ると「犬が吠え、驢馬(ろば)が鳴く」と読めます。ろばや犬の鳴き声のように、意味のない話という意味から、くだらない文章や聞くだけ無駄な話を例えた言葉だそうです。
犬が鳴くに意味があるはずなのですが、しつけができていないと、いわゆる「無駄吠え」が多くなってしまいます。余りにも鳴きすぎる犬の場合、どんなにその犬がかわいくても正直参ってしまうこともありますよね。無駄吠えする犬は、はるか昔からもきっといたのでしょう。
豚児犬子(とんじけんし)
他者を軽蔑して言うときや、愚かな子供のことを例えていう四字熟語。豚や犬のように愚かであると言っているそうです。豚と犬が横並びかと、思わず思ってしまいがちですが、そういえば犬は「犬畜生」と言われていた時代が、それほど古い昔のことではありません。
場合によっては、自身の子供を謙遜して言うときにも使われていたとのこと。犬中心の生活をしている愛犬家が多い今の時代では、ちょっと考えにくい表現かもしれませんね。時代の移り変わりが感じられる四字熟語であると言えます。
まとめ
こうして見てみると、本当に様々な四字熟語に「犬」の文字が含まれていますよね。そして、その多くがはるか昔の故事成語からきたものが多いことが分かります。犬が人間の生活に密接していたことが容易に伺えます。
昔の犬たちは、恐らく愛玩用というよりは、番犬であったり猟犬であったりというような、人の生活に役立つための一員として飼われていた場合が多いと思います。
それでも、これら四字熟語から読み取れることは、犬たちが人が生活していく上で尽くしてくれていたであろうこと。また犬が賢く忠実で、家族の一員として大きな役割を果たしていることも見えてきます。
時代は変わり、犬が洋服を着たり、トリミングやシャンプーをしたりするのは当たりの今日この頃。時には犬の学校に通わせる人や、フィットネスクラブでルームランナーで走らせたり、酸素浴をさせたりと、まるで一人の子供を育てるように、大切に育てている人も多くいると思います。
一般家庭において、番犬として犬を飼う人は随分と減りました。そして大型犬・中型犬でも室内飼いをする割合が増えてきたように思います。それでも、今も昔も変わらないのは、犬が人の生活を大きく支えてくれているということではないでしょうか。
犬がいることで癒しをもらい、時には生活を明るく変えてくれる光のような存在にもなってくれます。多くの介助犬が、厳しいトレーニングを乗り越えて、社会の中で大いに役立っています。
犬が好きな人も苦手な人もいるとは思いますが、その感情はどうあったとしても、犬が献身的で賢い存在であり、そして人間の生活とは切っても切り離せない存在であることは間違いないと言えるでしょう。
こうして四字熟語などで犬との歴史を振り返り、戌年の2018年を、これから更に犬と人が向き合っていくためのすばらしい年にしたいものです。