野良犬の減少傾向
現在、犬を飼う際の飼い主の義務として「狂犬病予防接種」や「犬の登録」が義務化されていることは、皆さんもご存知だと思います。また、室内飼育の人が増えたことで放し飼いが減り安易な繁殖が減っています。また、保健所の野良犬の捕獲(保護)も積極的に行われています。
これらの影響もあり「野良犬」となる犬の数は減少傾向にあります。野良犬自体が減少したことで、産まれた時から野良犬だったという子犬も減っており、今、野良犬を目にすることがあれば、それはほとんどが人間により捨てられた元ペットたちです。(捨て犬の数は毎年1万匹を超えています。)
そんな野良犬ですが、人間に飼われている「飼い犬」と飼い主のいない「野良犬」には残念ながら大きな寿命の差があります。産まれながらの野良犬(数は随分と減りましたが)もしくは、捨てられて野良犬となってしまった犬はどうして寿命が短くなるのか、考えてみましょう。
人間に飼われているかどうか、の違い
野良犬に限らず「野生動物は短命」です。野生で生活している動物は、常に命の危機にさらされています。危機にさらされているというよりも、命と向き合っているという方が正しいかもしれません。例えば体に傷を負って動きが鈍くなっていたり、少しでも身体が弱っていると、即座に敵に襲われます。ちょっとした怪我や病気が野生動物の場合は命取りとなります。
例え食事中であっても、睡眠中であっても、敵はいつ襲ってくるかわかりません。また、食事にもいつありつけるのかわかりません。野生動物は常に命の緊張状態にさらされているのです。これらの理由から野生動物が「寿命」を全うするということは、ほとんどありません。
逆に人間に飼われているペットや、動物園の動物は長寿です。第一に敵に襲われるといった心配がありません。また、自分で狩りにいかずとも食べ物は人間に与えられます。食べ物に困ることがなく、敵に襲われないという点。またこれらが野生動物と違って「脳に安心感を与える」という点。この3つは人間に飼われている動物が寿命を全うできる大きな要因となるのです。
野良犬の寿命が短い理由
人間に飼われている場合と野生動物とで寿命が異なる理由をご説明しました。それが野良「犬」の場合どうでしょう。野良犬になると野生動物と同様に食事の心配と敵に襲われる心配に常にさらされることになります。それ以外にも次のような理由で飼い犬に比べて寿命が短くなってしまいます。
病気にかかりやすい
野良犬になった場合、飼い犬と比べると病気にかかる確率が高くなります。最も大きな要因として、野良犬となって栄養バランスの優れた食事が与えられなくなることで、栄養状態が著しく低下します。また、野良犬となってしまうと常に様々な脅威からさらされるため、例え傷ついたとしても安心して休むことはできません。
これらの要素が重なり、病気にかかりやすく、治りにくくなってしまうのです。もちろん飼い犬と違って適切な治療を受けることもできません。結果として病死、もしくは病気が主原因で命を落としてしまう野良犬は少なくありません。野良犬が生き抜くためには、例え病気にかかっても自力で栄養を摂って、自力で回復するしか道はないのです。
群れで生活することができない
「群れで生活することができない」というのも、寿命が短くなる原因の一つです。犬は本来、群れを作って生きていく動物です。1匹で生きていくのは犬の習性上、とても難しいものなのだそう。
例えば飼い主から捨てられた犬は狩りのやり方を知っているでしょうか。運よく生き抜いた野良犬の子犬も狩りのやり方は群れで教わって学ぶものです。しかし前述したように、現代の日本に野良犬はそうそういません。いたとしても、同じように狩りのやり方を知らないペットだった捨て犬です。野良犬になったとしても、群れを作って生きるという選択は簡単ではないのです。結果として、群れを形成できない野良犬は飢えに苦しんで死んでいくことになります。
まとめ
現代の日本には「野生の犬」はいないといわれています。飼い主がいない犬は法律上、捕獲、抑留することが定められているからです。これは致死率の高い狂犬病の予防のために作られた法律です。この法律があるからこそ野生の犬が減り、われわれ人間が狂犬病という脅威から逃れられていることは言うまでもありません。
これらの現状を踏まえると、野良犬が生きやすい世の中を目指すよりも、野良犬を生み出さない、つまり捨て犬を生み出さない世の中を目指す必要があるのだと思います。まだまだ減らない捨て犬の数。命との向き合い方を今一度見直す機会なのではないでしょうか。