犬の歴史をご存じですか?
今回は昔と今を比較し、犬を取り巻く環境で起こっている変化についてご紹介していきますが、その前に、皆さんは犬の歴史をご存じですか?最初はどのように生活しており、いつ頃から私たち人間と共存するようになったのでしょう。まずは犬の歴史から辿っていきたいと思います。
祖先はオオカミ?
大昔まで遡ると、元々犬は「犬」として生活していたわけではありません。では、犬の祖先は一体何だったのでしょうか。ご存じの方も多いと思いますが、実は犬の祖先はオオカミだったと言われています。
それよりも前に遡ると、1600万年以上前には肉食動物のトマークトゥスも直系の祖先ではないかと考えられている説もあるようです。
話を戻しまして、このオオカミですが、具体的には「タイリクオオカミ」と呼ばれており、広範囲に渡り生息していたと言われています。また他のイヌ科の動物(アメリカアカオオカミ、コヨーテなど)とも交配が可能であったため、多くの子孫を残すことが可能であったと考えられます。
体長は約100~160cmと大きいサイズの個体であれば、成人女性並みの大きさを誇っていたのです。体高も60~90cmあったと言われているので、現在私たちと暮らしている犬と比べても大きめのサイズだったと言えるでしょう。
人間との歴史も長い
そして気になるのは、オオカミから犬へと変化し、いつ頃現代のように、人間と共存するようになったのか、という点です。
犬と人間が共存するようになった、という点で見ると、その歴史はとても長いです。ある一説によると、犬が人間と共存するようになったのは約1万5000年ほど昔だったと言われています。
しかし、この頃は家族として一緒に暮らすのではなく、家畜として共存していたと考えられており、主に他の獲物を狩る役割を果たしていたと言われています。
そして時は流れ、犬を家族のように認識し始めたのは、紀元前15年~7年頃だったのではないかと言われています。これは古代ローマ時代に当たり、この頃から家畜として働くだけではなく、人間と共に暮らすという形の原型が出来上がっていたと考えられているのです。
つまり、犬と人間が共存している歴史はとても長く、家族として接する歴史も約2000年以上は下らないということになります。
日本でも江戸時代に徳川家第5代将軍の徳川綱吉が愛犬家として有名ですよね。様々な説がありますが、結果的に「生類憐れみの令」が後世でも有名となり、「お犬様」なんて言葉も生まれてしまいました。
したがって、日本でも1700年頃には、既に犬を愛玩犬として認識する風潮はあったのでしょう。
犬の「昔と今」で変わったこと
上記で紹介したように、犬と人との歴史はとても長いものです。では、その中でも近年、犬の状況を考えるにおいて「昔と今」を比較すると変わったことが何点かあります。ここでは3つの代表的な例を挙げて見ていきたいと思います。
犬の平均寿命
まずは犬の平均寿命についてご紹介します。「犬の平均寿命は大して変わっていないのでは?」と思われる人もいるかもしれませんが、実は少しずつ変化しており、昭和58年の統計と現在の統計を見るだけでも約2倍の違いが見られるのです。
実は昭和58年に調査した犬の平均寿命では、7.5歳という結果が出ていたのです。皆さんもお分かりだと思いますが、この年齢は今の犬で見ると「シニア世代突入時期」に当てはまります。つまり、昔は今に比べて平均寿命が明らかに短かったのです。
対して今の犬の平均寿命はと言いますと、一般社団法人ペットフード協会の平成26年度の犬の平均寿命調査では、14.17歳と最初にご紹介したように2倍の年齢となっているのです。
なぜここまで平均寿命が延びたのかという理由については、やはり食事や医療が充実してきたことが1番大きいでしょう。また近年、老犬用のリハビリ施設なども導入され始めているため、徐々に寿命が延びてきていると言えます。
飼育頭数
続いて飼育頭数について見ていきましょう。先ほどもお話ししたとおり、最近では犬を始めとするペットの食事や医療面が充実していたり、一緒に入れるドッグカフェなども多く見かけます。
そのため、「飼育頭数は増えてるでしょ」と思う方も多いのではないでしょうか。実は筆者もその1人でした。朝や夕方に街中を歩けば、多くの犬が散歩をしているのを見かけていたからです。
しかし、実は2012年の調査と2016年の調査結果を見てみると、減少傾向にあることがわかるのです。狂犬病の予防注射を受けている犬の頭数で調査した結果のため、信頼できる数字だったために驚きを隠せません。
具体的に数字を見ていきますと、2012年度の飼育頭数は約1,153万頭、そして2016年度の飼育頭数は988万頭と減少しているのです。
なぜ減少しているのかという点に関して、一説によれば人間の少子高齢化社会が犬の飼育頭数にも影響しているのではないかと言われています。また、最近猫ブームが加速していることも少なからず影響しているのかもしれません。
殺処分数
そして最後に殺処分数の推移を見ていきたいと思います。
まずは具体的な数字から見ていきましょう。昭和49年度は当時の総理府の調査によって発表されたもの、そして平成23年度は環境省が調査し発表したものです。
昭和49年度の犬の殺処分数は115万9000頭と信じられないほど多くの数字が発表されていました。そして平成23年度の犬の殺処分数は4万4000頭です。数字だけ見ると「減ったな」という感想を持ちますが、それでも4万頭以上もの犬の命が人間の手によって失われているのです。
最近では、昔に比べると犬を家族として真摯に向き合っている飼い主さんがとても多くなっているように感じます。しかし、それでも4万4000という数字が発表されてしまっている現実があるのです。まだ1頭1頭、人間と同じ重さの命を持っていることを自覚せず、軽い気持ちで家族として迎えてしまう人がいるのです。
保健所の方は、保護している犬に優しい里親さんが見つかって欲しいという賢明な気持ちで日々頑張っています。しかし、中にはどうしても見つからず、その日を迎えてしまう犬も未だ多くいます。
前にある記事を見ました。殺処分当日、該当してしまった犬がいつもと変わらない愛らしい姿で自分へ寄ってくるのを見て、「お願いだからそんな顔で見ないでくれ」と悲しいという言葉では言い表せないほどの感情がこみ上げてきたというものです。
今後、犬を迎えるにあたって、しっかりと「家族を迎える」ということはどういうことなのかという意識を持ち、殺処分されてしまう犬がより減少してくれることを祈るばかりです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。平均寿命が長くなったという嬉しい数字がある一方で、減少はしているものの未だ多くの犬が殺処分されているという現状があるのも事実です。ぜひこの現実から目を背けず、今自分の飼っている愛犬に何をしてあげられるのかという点を考えていきましょう。
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30代 女性 ルイス