犬の味覚について
犬にもきちんと味覚があり、生後6カ月程度で嗜好性が定まるとも言われています。犬がえさを飲み込むように食べるのは野生時代の習性が残っているからで、「他の犬や動物にとられないようにするため」「食べられる時にたくさん食べるため」と考えられています。犬は具体的にどのような味覚を感じることができるのしょうか。
犬の味覚と舌の構造
犬の舌の構造
犬の舌は人間の舌に比べて細長く、表面は粘膜で覆われています。筋肉が発達しているため、毛づくろいをする、食べ物を舐め取る、たくさんの水をすくうなどの複雑な動きが可能です。舌全体に「味蕾(みらい)」と呼ばれる味覚を感じ取る細胞があり、その細胞によってさまざまな味を認識することができます。
犬が感じる味覚
犬が感じられる味覚は「甘味」「苦味」「酸味」「旨味」とされています。犬が主食とする肉には適量の塩分が含まれているので、それ以上摂取する必要がないために「塩味」には鈍感になっているそうです。
また、犬には水の味にだけ反応する特殊な味蕾細胞があるため、「水味」を感じることができるとも言われています。水のイオン濃度を感知し飲水量を調整することで、体の塩分調整を行っているそうです。
犬の味覚とえさ
甘味
犬の味覚の中で一番発達しているものが甘味だと言われています。特に果糖やショ糖に敏感に反応するので、犬に果物やクッキーなどのお菓子をあげるととても喜びます。甘味は肉を構成する動物性アミノ酸にも含まれるため、犬は魚よりも肉を好むのだそうです。
人工甘味料の甘味を感知することもできますが、「ステビア」や「サッカリン」には苦味成分が含まれるので拒否反応を示す犬が多いようです。また、犬がキシリトールを摂ると重い中毒症状を起こすことがあるため、基本的に人工甘味料が含まれたえさやおやつはあげない方が無難でしょう。
苦味
苦味は犬が嫌う味覚であり、食べたものを苦いと認識することで毒物だと判断します。ただし苦味を感知する部分は舌の奥の方にあると考えられているので、犬が食べ物や異物を苦いと認識して吐き出すまでには少し時間がかかります。
苦味を利用したしつけグッズも販売されており、代表的なものに「ビターアップル」があります。これはリンゴの皮から抽出した天然の苦味成分を利用した液体で、噛まれたくないものにスプレーをすることで噛み癖や食糞をしつけることができるとされています。
酸味
犬の味覚は、甘味に次いで酸味が優位だとされています。犬は野生時代に腐敗が始まった肉も食べていたことから、酸味の程度によってその食物が食べられるかどうかを判断しています。そのため、弱い酸味のものは食べられるものの、レモンなど柑橘系の強い酸味は苦手なのだそうです。また、水や無機質の酸にも反応するとも言われています。
旨味
これまで犬は旨味を感じないとされてきましたが、近年の研究で犬も旨味を感じられるという説が出てきました。旨味と言ってもアミノ酸や核酸などの「肉らしい味」に反応しているため、人間が「おいしい」と感じるような味覚ではありません。鶏肉や馬肉に比べて牛肉や豚肉を好むのは、牛や豚の肉の方が犬が好むアミノ酸を多く含んでいるからだそうです。
また、犬はアミノ酸の中でも「アラニン」や「ロイシン」などの甘いアミノ酸を好み、「トリプトファン」などの苦いアミノ酸は避けるとされています。
えさの食べ方
犬の嗅覚は人間の10倍以上で味覚よりも発達しているので、犬がえさを食べるときの優先順位は「におい」「食感」「味」「見た目」です。野生で生き抜いてきた犬にとって重要なのは「美しさ」や「おいしさ」ではなく「食べられるかどうか」であるため、食べられるものを早く体に入れてしまえるよう、食べ方が丸飲みや早食いになるとされています。
嗅覚が優れていることを利用して、高齢で食欲がなくなってしまった犬には、ウェットタイプのドッグフードを温めてにおいを引き立てる、えさに甘いにおいのフレーバーをふりかけるなどすると効果があるそうです。
犬の味覚と人間の味覚との違い
人間と犬の味覚の大きな違いは、犬には水に反応する味蕾細胞があること、犬は塩味をあまり感じることができないことの2点です。
また、人間の味蕾細胞が約1万個であるのに対し、犬は約2千個と言われています。よって、人間は甘味、塩味、酸味、苦味、旨味(辛み)を詳細に感じて食事を楽しむことができますが、犬は味覚がそれほど発達していないため味に鈍感だと言えるでしょう。
このような違いがある理由には、生活環境の他、食べ方の差や唾液中の消化酵素の有無が関係しています。人の唾液には食べ物を分解する消化酵素が含まれていて、口の中で十分に咀嚼してからでないと消化不良や腹痛を起こしてしまいます。
一方、犬の唾液には消化酵素が含まれておらず、唾液は胃の中にえさを流し込むだけの役割を果たしていました。犬は口の中で食べ物を味わう必要がないため、人間ほど味覚が発達しなかったと考えられています。
まとめ
犬も人間と同じようにきちんと味覚があり甘味や苦味を感じ取ることができますが、塩味に鈍感であったり水味に反応する細胞があったりすることが人間の味覚との大きな違いです。
犬は味覚よりも嗅覚が優位なので食事の見た目を楽しむことはほとんどありませんが、このことを利用して、えさのあげ方やしつけの方法を工夫するのもよいかもしれませんね。
ユーザーのコメント
50代以上 女性 ろちゃん
完全肉食動物のはずの猫は、お腹がすいていると白いご飯でもおいしそうに食べます。犬よりも味覚が発達していなかったからなんですね。
犬が人間のように旨味を味覚として感じていないというのは少し意外な気がしました。
お肉多めの時のほうが食べっぷりがいいのは肉の旨味を感じているせいかと思っていました。
人間の感覚とはやはり違うという事を認識して、記事にあるようにしっかりと健康管理をしてあげるのが大切だと感じました。
50代以上 女性 K9-ABC
20代 女性 小夏
わんちゃんは、甘味を一番感じるのですね〜私も甘いもの好きです!
美味しいですもんね〜(笑)
犬は臭いが強いものを好むと何かで聞きましたが、ちゃんと甘味や塩味もわかっているのですね!
40代 女性 ナツ
パンは作る過程で発酵のためにお砂糖が多少は入りますし、小麦粉にも糖質が含まれています。ワンコもその糖質を舌で感じて、好んで食べていたのですね~。なるほど。
先代の犬はとても少食で毎日の食事には本当に苦労しましたが、やはり甘味の強いものは好んで食べていました。美味しそうに食べてくれると、ついあげすぎてしまいそうになりますが、食べすぎと肥満には要注意ですね!
40代 男性 eda
30代 女性 38moto
苦味や酸味を感じる部分は、食べられるものかどうか新鮮かどうかを判断する部分なので、とても精密で敏感に働きます。ですが年老いて衰えてしまうと、ここの味覚で判断できず食べられるものかどうかがわからなくなってしまいます。食欲減退の原因のひとつでもあります。
シニア期に食欲減退がみられた場合は、バランスよく高カロリーなものを選び、トッピングに甘味のあるものをふりかけてあげることで食いつきが変わると思います。
犬の舌は甘味を察知する機能が他の部分よりも発達しているため効果は高いと思います。
30代 女性 おはな
うちのわんこは好き嫌いがほとんどなく、食べることが大好きです。ドッグフードもどの種類も完食してくれるので飼い主としては助かっています。ですが、以前少し高めのドッグフード(品質重視、初めて)とよくあるお手ごろドッグフード(いつも食べてたもの)を一粒づつ左右の手に隠してどっちと遊び感覚で選ばせたことがあります。3~4回同じことをしたのですが、結果はどの回も迷わず高めのドッグフードでした。においから違うのか、好みの味だと直感が働いたのか。愛犬の好みを知るには面白い遊びだなと思いました。その他、プランターで作っている葉物の野菜をたまにあげるのですがこれにも好みはあるようです。8割がた、むしゃむしゃと食べるのですが苦味のある葉物は何度か咀嚼した後にペッと吐き出します。その後食べたそうににおいをにおってはいますが、決して食べることはありません。愛犬の好みを知っていくのは飼い主としてとても楽しいです。
女性 コロ
フードも少し温めてみたところ、においが立つようでいつものフードでも喜んで食べてくれました。高齢犬には甘味と温度が重要ですね!
女性 タルト
やはり匂いが重要なんですね。
一度食べ始めれば順調に食べ進んでくれるのですが、気に入らないともうお皿に近づきもしません。
毎回試行錯誤で、愛犬が気に入るトッピングをしています。
女性 ゴン吉
女性 ななこ