犬の記憶力はどのくらい?
犬を飼っていると、犬に記憶力が備わっていることは、日頃の行動から容易に察することが出来ます。
犬は10秒前の事を覚えていないという話をよく聞きますが、私達飼い主の事を忘れることはありません。
では、犬の記憶力はどの程度なのか?人の記憶の仕組みと比べながら、犬の記憶能力について考えてみましょう。
犬と人間の記憶能力の違い
そもそも記憶とは、「経験したことを頭の中に覚えておき、必要な時にその経験を思い起こして利用する」ことです。
具体的には、
- 外界から得た情報(経験)を意味に変換して記憶として取り込むこと
- 取り込んだ情報を保存すること
- 保存している情報を適切なタイミングと場所で思い出すこと
この三段階となりますが、記憶の概念に関しては、人と犬との間で大きな違いはないと考えています。
人間が持つ記憶力はどのぐらい?
記憶の種類により保存期間が異なります。
感覚記憶
視覚、聴覚、触覚、嗅覚等、感覚による記憶で、1秒程度で消失します。
短期記憶
外界から得た情報を受け入れ、それを覚え込む記憶で、数10秒から数10分保持されます。
中期記憶
短期感覚で記憶した中で、興味のある情報は一時的に貯蔵されます。その記憶を長期記憶にするのかどうかが判断されるまでの記憶で、1時間~1ヶ月程度保持されます。
長期記憶
一時的に貯蔵されている記憶のうち、情報の意味を解釈したり、他の情報と関連付けが行われた記憶(連想記憶)で、数時間~生涯保存されます。
犬の短期記憶は10秒が限度
犬の記憶にも「短期記憶」と、長期に渡り覚えている「連想記憶」があり、「短期記憶」については10秒程度で忘れてしまうようです。人間の「短期記憶」は数10秒から数10分間保持されていますので、「短期記憶」保持期間の違いは、人間と犬の記憶力の違いのひとつと考えられています。
犬の「短期記憶」が短いことで、人間と犬の間で意思疎通のズレが生じてしまうことがあります。
例えば、犬がソファーの上で排泄してしまい、その行為を1分後に叱っても、犬には「ソファーで排泄する事」と「叱られた事」を関連付けすることが出来ないので、「ソファーで排泄する事=叱られる」という経験が連想記憶として記憶に残りません。
もしも、トイレの失敗をすぐに叱らずに、時間をおいて叱っていた場合、どんなに強く叱っても、何度叱っても、犬はトイレの失敗を「いけないこと」として覚えられないのです。
犬は連想記憶が得意
犬は物事を関連付けて記憶する連想記憶が得意です。
小さな頃から共に暮らしている飼い主の姿や声、そして匂いを様々な出来事に関連付けて記憶しており、私達飼い主の事を忘れることはありません。
また、繰り返し教わった「お手」「おすわり」「トイレの場所」も、「上手に出来る事=飼い主に褒められる」といった楽しい思い出が「長期記憶」として頭の中に残っているはずです。
人間同様に犬の「長期記憶」も、長いものでは生涯忘れることなく、記憶として保存されると考えられています。
犬は人間を超える記憶能力をもっている?
我が家には2頭の犬がいます。彼らを見ていると、人間と同じように経験することで蓄積してきた記憶を、上手に取り出しながら行動している姿が見受けられます。
そして、記憶により得た判断結果を行動に移すスピードは、人間の能力を超えていると感じる事も少なくありません。
車を覚えている?
犬を車に乗せて散歩に出かける事が多いのですが、散歩を済ませて車の前まで戻ってくると、ちゃんと自分が乗っていた右側後部ドアの前でお座りをして、扉が開くのを待っています。
車を買い替え車種が変わってしまっても、やはり右側後部ドアの前で待っています。
荷物の都合で別の場所に乗せて来ることがありますが、その場合でも犬は右側後部ドアの前で待っていますので、「今日は左側の後部座席に乗ってきた」という記憶は無いようです。
スイカと梨が大好物!
スイカをまな板に乗せ、包丁を入れた瞬間に大騒ぎしています。スイカの匂いと包丁を入れた音を覚えていると思うのですが、反応の速さには驚かされます。
梨も大好きなようで、梨に包丁を入れた瞬間に大騒ぎです。ちなみにりんごには無反応ですので、りんごには興味がないようです。味覚があまりないと言われる犬でも好みはあるようです。
お湯が沸きましたよ。
お湯が沸いたことを知らせてくれます。お湯が沸いたのに気が付き、慌ててガスの火を消している私達の姿を、犬は小さい頃からずっと見ていて記憶していたようです。
犬は私達の発する、お湯が沸いた時の慌てた声のトーンやガス台まで早歩きで歩く足音を、お湯が沸く音に関連付けて記憶しており、お湯が沸く音が聞こえた時には、私達に知らせなければいけないと思っているようです。
まとめ
人の記憶も犬の記憶も、その仕組みについては、全て解明されているものではありません。
そして、記憶の量や質、記憶の保存期間についても、生体の固体差によってまちまちなのです。
私は人間の記憶の仕組みの中で、「忘れる」という機能が優れた能力だと考えています。もしも「忘れる」機能が備わっていなければ、悲しい出来事や辛い事を乗り越えられないかもしれません。そのような意味で、私は「忘れる」事が必要だと考えています。
犬の記憶についても同様の考えがあります。犬の連想記憶は、上書きされることにより、別の記憶に書き換えることが出来ます。人間の「忘れる」機能と同様に、連想記憶として長期間記憶さている虐待等で関連付けされた辛い記憶を、うれしい記憶、楽しい記憶に上書きすることも可能なのです。
極端な例になりますが、人の手により虐待を受けた犬は、人の手を嫌がるでしょう、どんなに心優しい人の手が、その犬を撫でようとしても、犬は恐怖を感じて嫌がることでしょう。
その犬の嫌な記憶を、よい記憶に上書きすることはできないでしょうか?優しい声や表情で褒められながら、人の手で撫でられたら、犬はどう思うでしょうか?根気のいることではありますが、優しく撫でることを繰り返すことで、虐待の記憶を消し去ることが出来るのではないでしょうか?
犬は私達が思っている以上に私達を理解しようと、常にその言動を観察しています。そして私達の言動を記憶し、その記憶を上手に取り出して、私達に接しています。
私達人間も、犬の気持ちや行動、記憶に関する特性を理解することで、お互いの信頼関係を深めていけるのではないかと思います。
ユーザーのコメント
50代以上 女性 こじ
旦那さんが車で帰って来たら玄関に行き待っています。それから毎日の目薬後のおやつをとても楽しみにしています。
毎日の習慣で私の行動から先の事を想像しているようです。その分愛犬にとって期待はずれな事もよくあります。
お座りや待て等の躾も訓練による長期的な記憶ですね。
ちょっとした事は直ぐに忘れても、嬉しい事や習慣付いた事は良く覚えているというのは、犬って頭が良いと思います。
嫌な事も習慣的に起これば忘れないという事で、虐待された子などは苦しむかも知れませんが、沢山の愛情を持って接すると嫌な記憶が書き換えられるのは、犬にとって幸せな事です。
良い記憶が沢山積み重なる毎日を過ごして行きます。
40代 女性 SUSU
ただ、愛犬を見ていても、4ヶ月どころから数年ぶりに会った人のこともきちんと覚えているようで、自分が大好きな人を忘れたという場面を見たことがありません。これは逆も言えることで、今までは会えば挨拶程度は交わしていたワンコでも、一度、喧嘩のように吠えあってしまうことがあると、半年以上経っていても会えば吠えてしまいます。こちらの方が物覚えが悪く忘れてしまっていることもしばしばです。あちらのワンコはぽかんとしていても、愛犬の方はアイツ!っといった感じで吠えることがあるので、個体差も多少あるのかもしれません。
記事にもありますが、犬の物事を関連付けで理解し記憶していく能力は人間が思っている以上に優れていると思います。
初めは何を言われているのか全く理解出来なかったとしても、同じ言葉(ここが重要かと思います。)を同じ状況で話していくと、その言葉の後に起こることを関連付けで意味を理解し、記憶していっているように思います。
簡単な言葉で言うと、「お散歩」と言われた後に外に出て歩くことを経験すると、お散歩の意味を理解するといったことです。
かなり高度な言葉も理解していくようで、我が家ではお留守番の際にもきちんと伝えてから出かるようにしています。お買い物と言われれば短時間、お出かけと言われれば少し長いなどは簡単に理解しており、最近では、○○時間くらいで帰るよといたことまで伝えていますが、伝えていた時間よりもかなり長くなってしまうと、帰宅後の構ってアピールが激しいため、時間の感覚も経験に基づいて理解しているように思います。
ちょうど昨日のことですが、実家に愛犬を連れていった際、いつもは置いてあるオヤツがきれていて私が新しいのを持参するのを忘れてしまいました。愛犬はいつものようにいつもオヤツが置いてある棚の前でお座りをしていましたが、ないものはどうしようもなく、理解出来るかなと思いつつ説明をしました。食べてしまってもうないこと、今日は持ってくるのを忘れてしまったこと、家に帰ったらあげるからね、と伝えました。
帰宅後、荷物の片付けでバタバタしており私はまたしても忘れてしまっていたのですが、愛犬は何か言いたげにずっと私の後をついてきていました。あっ!そうだった!と言うと、思い出した??通じた!といった感じで目をキラキラさせながら尻尾を振っていました。実家で話しをしてから帰宅まで数時間ありましたが、ちゃんと覚えているのですね。私の方が忘れっぽくて嫌になってしまいます。
人間もそうですが、悲しい記憶、辛い記憶など、忘れた方がいいこともたくさんあります。過去になんらかのトラブルを抱えている子はフラッシュバックのように思い出してしまうこともあるのだろうと思います。全てを忘れさせてあげることは難しいかもしれませんが、言葉と状況の関連付けによって起こる記憶を新しい出来事で埋めることは出来るのかなと思います。
女性 熊子