犬は人間の喧嘩を理解しているのか?
犬は観察能力に優れた動物で、私たち人間の感情を読み取ることもできると言われています。人間の表情や仕草、声のトーン、息遣いなど些細に感じられるあらゆる要素からその感情やストレスを感じ取ると考えられているのです。
また、麻布大学獣医学部や奈良先端科学技術大学院大学、熊本大学大学院先端科学研究部、名古屋大学大学院工学研究科の研究者らによる共同研究グループでは人間の情動が犬に伝染するということが明らかにされました。
特に長く一緒に生活している関係性である程、伝染しやすくなるということがわかったのです。飼い主と犬の心拍を心拍変動解析を用いて秒単位で評価することで、自律神経の変化を観察しました。そこで人間にストレスがかかった状態のときに犬にも同様の傾向が見られるという結果が出たのです。
このようなことから、犬は人間の喧嘩やそれに伴う人間の感情の変化を感じ取り、理解することができると考えられます。
人間の喧嘩が犬に与える影響
人間の喧嘩が家庭の中など身近な環境で起きているとき、犬には次のような感情を生じさせます。そのどれもが悪影響と言えることばかりなので、ぜひ改めて認識しておいてください。
まず人間の喧嘩を近くで見たり聞いたりすることで、犬は体感的な恐怖を感じてしまいます。喧嘩をすると怒鳴り合ったり、物を投げたり乱暴に扱ったりすることで大きな音が発生することが多くなりますが、犬はそうした大きな音や甲高い声、突発的に発せられる金属音などがとても苦手です。私たち人間が聞いても不快な音や声は、犬にとってさらに不快なものとなるということを覚えておきましょう。
また、人間同士が軽くでも叩いたり物をぶつけたりする暴力行為を行うと、犬はその仕草や動きにとても恐怖を感じます。攻撃が自分に向かってくるわけではなくても、家族間で暴力行為などが起こるととてもストレスを感じて委縮してしまうようになります。
また、派手な喧嘩をしていなくてもイライラしたりストレスを感じていることは、態度やため息などを通じて犬はしっかりと感じ取ります。さらに、飼い主さんがイライラしていることで犬への態度も悪くなり、八つ当たりをされてしまうことも。
犬に直接的な攻撃をしないとしても、喧嘩をしているせいで家の中の雰囲気が悪くなったり、散歩やコミュニケーションの時間が減ってしまうことなども考えられます。このようにあらゆる観点から、家庭内の喧嘩は犬にさまざまな悪影響を与えるということが考えられます。
犬は人間の喧嘩でストレスを感じてしまう
犬が人間の喧嘩を見て、その物音や雰囲気に恐怖を感じたり委縮をしたりすることがわかっています。また、犬は飼い主さんの感情に非常に敏感な動物だということもわかっているため、喧嘩をしている飼い主さんを見てストレスを感じてしまうとも考えられています。
オーストリアとドイツの大学が共同で行った実験では、ホルモン分泌量を測定することで飼い主さんがストレスを感じるとその飼い犬にも同レベルのストレスがかかるということが明らかになりました。
そうした研究・実験から喧嘩が多く荒れた家庭で飼われている犬の吠えがひどくなる傾向にあることや、落ち着きのない行動を取りやすいということもわかっています。その反対に穏やかな家庭環境で育った犬は、心身共に落ち着いており安定した性格に育ちやすいとも考えられているのです。
まとめ
犬は私たち人間の表情や態度から感情を読み取り、共感する能力を持っています。特に一緒に過ごす時間が長く、信頼関係が築けている程共感力が高まると考えられているため、飼い主さんの怒りやストレスなどに共鳴して同様の感情を抱えてしまうことがあります。
また、家族間の喧嘩では特にストレスを感じやすいとも考えられており、喧嘩の多い荒れた家庭で育った犬は精神的に不安定になりやすいとも言われています。
家族間ではどうしても喧嘩になってしまうことはあると思いますが、犬の目の前では喧嘩をしないようにしたり、喧嘩をしているときでも犬に対してはいつも通りの態度で接したりするよう心がけましょう。犬を不安にさせたり、ストレスを与えることは飼い主さんとの信頼関係にも大きな影響を与えるということを忘れず、できるだけ穏やかな時間を過ごせるように気を配ってあげてくださいね。