犬の指って何本?狼爪って何?数や構造、起こりうるトラブルについて

犬の指って何本?狼爪って何?数や構造、起こりうるトラブルについて

愛犬の爪切りをしているときに、前足と後ろ足の指の本数が違うことに気がつき、思わず指を探してしまった、なんて経験がある方もいるのではないでしょうか。また、これから初めて犬を飼おうと思っている方は、犬の指の本数が違うことに不安になるかもしれません。そこで今回は、犬の指について解説します。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

犬の指の数

片手をあげて足の裏を見せている犬

犬の指は、何本あると思いますか?犬の足の裏を見ると、爪があって短い指があって、肉球があって...でも、前足の指には関係ない場所にも肉球があったり、肉球がないのに爪が生えているたりと、不思議な構造になっていますね。ここでは、犬の指について見ていきましょう。

犬の指の数と狼爪

人間には手も足も5本ずつ指がありますが、犬の指は前足に5本ずつ、後ろ足に4本ずつとなっています。

前足には、地面に接する指が4本と、地面に接することがない離れた場所に1本あり、離れた場所の爪の生えた指が人間でいう親指で、犬では狼爪(ろうそう)と呼ばれています。ブリーダーによっては、生まれてすぐに狼爪を切除してしまうこともありますよ。

後ろ足の指が4本なのは、この狼爪が退化して消滅してしまったから。もともとは、犬の後ろ足の指も5本だったのです。

ただし、現在でも後ろ足に狼爪がある犬も存在します。代表的な犬種はグレート・ピレニーズで、山岳地帯の岩場を歩く犬にとっては岩を掴むために必要だったため、後ろ足の狼爪が1本ではなく2本あるということも珍しくありません。

他の犬種であっても、稀に後ろ足に狼爪を持った個体が生まれることもありますが、奇形というわけではないので心配する必要はありません。

また、遺伝によっては指の本数が通常の本数よりも多い状態で生まれてくることもあります。多指症と呼ばれますが、犬の生活に支障がなければ特に治療をする必要はありません。

肉球の名称と働き

犬の指には肉球があります。真ん中の大きな肉球は「掌球(しょうきゅう)・足底球(そくていきゅう)」で、人間でいう手の平の盛り上がっている部分です。

爪の生えている4つの指にある肉球は「指球(しきゅう)」で、人間でいう人差し指、中指、薬指、小指の”指の腹”のようなものです。

ちょっと離れた場所に1つだけある肉球は「手根球(しゅこんきゅう)」ですが、これは進化に伴い使わなくなって退化した肉球の痕跡器官であるとされています。

実は前足と後ろ足では呼び名が変わり、後ろ足の真ん中にある大きな肉球は「足底球(そくていきゅう)」、4つの指にあるのは「趾球(しきゅう)」となります。

犬の肉球は皮膚の角質層が厚く進化した部分で、人間にとって靴のような役割があります。犬はつま先立ちの状態で歩くため、全体重が足先にかかるのを保護していたり、走ったり急ブレーキをかけるときのグリップ機能や、体にかかる衝撃を吸収する、地面からの圧力を効率的に分散する、体温調整といった、様々な機能が備わっています。

爪の働き

犬の爪は猫のように出し入れすることはできず、先端も尖っていないため木登りすることもできません。

常に出ている爪ですが、カーブ状になっているため地面にしっかり力を入れて踏ん張ることができます。人間でいえば、スパイク靴のような働きをしてくれているのです。

ですから、普段のお散歩や運動によって犬の爪は自然にすり減って、そこまで長くなることはありません。しかし、地面に接することのない狼爪は、爪が伸び続けてしまうため定期的に爪切りをしてあげる必要があるのです。

犬の爪を見ると、白っぽい部分のほかに、爪の中に赤っぽい部分が見えませんか?私たち人間の爪にもピンク色と白っぽい部分がありますが、ピンク色の部分は神経と血管が通っています。

犬も同様に、爪の中の赤っぽい部分は神経と血管です。爪切りする際は深爪しないように気を付けてあげましょう。

指に水かきがある犬も

指と指の間に、水かきのような皮膜がある犬も存在します。水中での作業を好むとされている犬種で、レトリバー、プードル、ペキニーズ、ダルメシアン、ニューファンドランド、アイリッシュ・ウォーター・スパニエル、秋田犬などなど、挙げきれないほどとても多いです。

水かきがある犬は泳ぎが得意で、かなりのスピードで泳ぐことができるとか。犬種によって進化の過程で発達する部分が違うというのは、とても面白いことですね。

犬の指に起こりうるトラブル

横たわる犬の足の肉球アップ

気がつくと愛犬が足先を舐めている、ということはありませんか?単に暇つぶしであったり、クセであることもありますが、ストレスや病気が原因のこともあります。犬の指に起こりうるトラブルは多々あるので、気になるときは獣医師さんに相談してくださいね。

指間炎

犬の指間炎は、指と指の間の皮膚に炎症が起こることで発症する病気です。肉球と肉球の間が炎症を起こしても指間炎となります。指間炎になってしまうと、赤みや腫れが表れるだけでなく、出血したり膿んでしまうこともあり、痛みや痒みを伴います。

指間炎の原因は様々ありますが、多くみられるのは外傷や、火傷、指や肉球の間に異物がはさまったことで犬が気にして、自分で舐めて舐め壊してしまうことです。

お散歩のときに、砂や小石、土、草の実、木片、トゲ、ガラスの破片などの異物が犬の指や肉球にはさまってしまうと、異物によって皮膚に物理的圧迫が加わって炎症を起こしたり、傷口に入ったまま皮膚がふさがり刺激となって炎症を繰り返すことも。

また、指間炎はアレルギーやアトピーであったり、ばい菌やダニ、カビといったものが原因であったり、足裏のバリカンによる違和感、ストレスによって舐め続けてしまう、などが原因となることもあります。犬が気にして舐めてしまうことができる場所のため、指間炎は完治が難しい病気です。

乳頭腫

乳頭種は皮膚や粘膜にイボのようなものができ、カリフラワー状に増殖する良性腫瘍です。体のどの部位に起きても不思議ではなく、もちろん指の間の皮膚でもみられます。

比較的若い犬ではウイルスが原因であることが多いですが、老犬ではウイルスの関与はなく発生します。

若い犬の乳頭種は、ウイルスが原因だった場合は他の犬に伝染してしまうため注意が必要ですが、数ヵ月で消滅してしまうものです。老犬では老化現象の1つでもあるため、消滅することはありません。

乳頭種に傷がつけばもちろん出血することもありますが、良性腫瘍なので治療を必要とすることは多くありません。

ただ、場所によって犬の日常生活に支障がある、何らかの害をきたすといった場合は、電気メスで切除するといった治療が行われます。

発症の原因がはっきりわかっていないため、予防法はありませんが、指の間にできた指頭種は傷つきやすいため注意してあげましょう。

腫瘍

犬の指と指の間や、肉球の間にしこりができることもあります。指間腫瘍と呼ばれ、良性、悪性どちらの場合もあります。

良性腫瘍であれば、そこまで心配することもありませんが、悪性であれば扁平上皮癌、肥満細胞腫、皮膚組織球腫種、悪性黒色種腫などで、早期の治療開始が重要です。

腫瘍の発生した場所によって、腫瘍だけを摘出することもあれば、指の切除や足の切除が必要となることも。腫瘍の怖いところは、犬にまったく症状が表れないこともあるところです。

足先を気にして執拗に舐める、しこりのようなものがあると感じた場合は、動物病院を受診するようにしましょう。

巻き爪

犬の爪は自然とすり減るものですが、お散歩や運動量によってはすり減る量が違います。狼爪について言ってしまえば、自然にすり減ることはありません。

犬の爪は地面に食い込むようにカーブして生えているため、伸びすぎると肉球が地面に接地しづらくなり、スムーズに歩行することができなくなります。

爪のスパイク機能も、肉球のグリップ機能も働かなくなってしまい、滑ったり転んだりする危険が増えるだけでなく、伸びた爪が何かに引っかかって根元から折れてしまうことも。

中には肉球に刺さってしまったり、肉球を貫通してまた肉球から爪が出てくる、なんてこともあります。いずれにしても痛みを伴い、その傷口から感染症を起こすこともあるので注意が必要です。

破傷風

破傷風菌という細菌によって引き起こされる破傷風は、犬でも人でも感染する可能性がある人獣共通感染症です。錆びた鉄でケガをすると破傷風になる、という話を聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。

破傷風は犬から犬、犬から人、人から人といった、ほかの個体に感染する病気ではありませんが、破傷風菌が傷口に付着すれば、神経に影響を及ぼすとても怖いものです。

場合によっては命を落とすことも。犬が散歩中に足の肉球をケガして破傷風になる、という可能性もあります。

日頃からできる犬の指ケア

ドライヤーとブラシを当てられている犬

犬の指に起こりうるトラブルは、原因がはっきりしないものも多いです。しかし、日頃からケアしてあげることでトラブルを避けられたり、指の異常にいち早く気づくことができます。

清潔に保つ

私たち人間であれば、指をこすり合わせて手を洗ったり、シャワーで足を洗ったりすることができますが、犬はそんな器用なことはできません。

お散歩に出た犬の足の裏には、いろんな菌や汚れが付いていたり、異物がはさまっていたりしています。

お散歩のあとは、指の間や肉球の間まで丁寧にタオルやウェットティッシュなどできれいに拭いてあげたり、足を洗ってあげるなど清潔に保つようにしましょう。

しっかりと乾かす

足を洗ったあとやシャンプーのあと、水遊びをしたあと、雨の日のお散歩など、犬の指の間や肉球の間が湿っていると、細菌が繁殖して皮膚炎を引き起こしてしまう可能性があります。

ドライヤーを苦手とする犬も多いですが、指のトラブルを避けるためにも、しっかりと乾かしてあげることが大切です。

足裏カット

肉球の間から生えてくる毛は、長く伸びすぎると肉球の働きを邪魔してしまいます。犬が気にして足の指や肉球を舐めるようになり、舐めすぎて指間炎を引き起こしてしまうことも。

指のトラブルだけでなく、フローリングなどで滑りやすくなってしまうため、足腰のトラブルにも発展してしまいます。

定期的にハサミやペット用のバリカンを使用して、足裏の毛のカットをしてあげるようにしましょう。その際は、皮膚や肉球を傷つけないように、注意してくださいね。

自分でカットすることができない場合は、ペットサロンにお願いしてもいいでしょう。足裏カットだけなら500円程度で行ってくれますよ!

爪切り

上記でも何度か犬の爪について触れてきましたが、お散歩やしっかり運動をしている犬であっても定期的な爪切りは必要です。狼爪の伸びが早い犬や巻きが強い犬は、1ヵ月もすれば肉球に近づいた状態になります。

爪のすり減り方は犬の個体差もありますが、1ヵ月に1回くらいの頻度で爪切りをしてあげるようにしましょう。

爪切りが苦手な飼い主さんも少なくないと思いますが、自分ではできないという場合は、健康チェックも兼ねて動物病院で切ってもらってもいいですね。診察料は病院によって異なりますが、爪切りは500円程度です。

マッサージ

おもむろに犬の指の間を見ようと思っても、犬は警戒して見せてくれませんね。でも、それが犬にとって気持ちのいいことと関連していれば、話は別です。肉球のマッサージが好きな犬もいれば、指の間を撫でられることが好きな犬もいます。

本格的なマッサージをする必要はないので、毎日愛犬の好むマッサージをしながら指の間や肉球の状態をチェックしてあげましょう。

まとめ:愛犬の指をチェックしてみよう!

笑顔でお手をする犬

今回は、犬の指や足の裏の構造についてご紹介しました。指の数は普段あまり気にすることがないと思いますが、狼爪や指根球など、何であるのか不思議な部分についての謎が解けたのではないでしょうか。

犬は私たち人間と違って、指で何かを掴むといったことはできませんが、その代わりに短い指と肉球には、人間には備わっていない機能がたくさんあります。

指の仕組みを知ると、愛犬の指が今まで以上に気になりませんか?これを機会に、日頃のケアと共に愛犬の指をチェックしてみてくださいね!

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