空港で働く探知犬の種類と役割
麻薬探知犬
空港で働く犬として、知っている人も多いのがこの麻薬探知犬。麻薬類が入ってくることを防ぐために、荷物や衣服の中に隠された麻薬類を嗅覚で嗅ぎ当てて見つけ出す役割を果たします。国内に麻薬が入ることを防ぐため、麻薬探知犬は空港以外にも港や国際郵便局など、様々な場所で活躍しています。
麻薬探知犬には、麻薬が入っていると思われる荷物・貨物をひっかいて知らせるアグレッシブドッグと、携帯品などに隠された麻薬の存在を座って知らせるパッシブドッグの2種類います。ただしアメリカでは大麻が合法化されている州などもあるため、一律に活動できない場合があり、大麻合法化の州法が定められている地域では、新体制で訓練・再教育された犬たちが捜査の第一線に参加しています。
検疫探知犬
検疫探知犬は、動植物検疫の検査を必要とする肉製品・果物などを荷物から嗅ぎ分けて発見する訓練を受けている犬。それらを発見することで、ASF(アフリカ豚熱)やCSF(豚熱)・鳥インフルエンザ・口蹄疫などの家畜の伝染病やミバエなどの病害虫が国内に侵入することを防ぐ役割を果たします。
ちなみに、日本には検疫探知犬の訓練施設がないため、アメリカやオーストラリアの施設で訓練を受けています。
爆発物探知犬
爆発物探知犬は嗅覚を使って荷物内の爆発物を探し出す使役犬ですが、爆発物探知のみの役割を持つことは少なく、警察犬や麻薬探知犬が、爆発物を嗅ぎ分けて発見するよう訓練されていることがほとんどです。また、爆発物だけでなく隠された銃器探知を行う犬もいます。
麻薬とは異なり爆発物マーカーに関しては入手・管理が比較的しやすいため、警察だけでなく民間での育成も可能。アメリカでは民間の爆発物探知犬も数多く活躍しており、日本でも民間警備会社での導入などが期待されています。移動の利便性や追跡・特定能力に関する精度の高さから爆発物探知機を上回る働きをするとも言われています。
アメリカの探知犬にたれ耳が多い理由
麻薬探知犬や爆発物探知犬など、アメリカの空港で働く犬はこれまでジャーマンシェパードやドーベルマンが多く見られましたが、最近ではビーグルやラブラドールレトリバー・ゴールデンレトリバーなどのたれ耳の犬が増えてきています。
その理由のひとつとして、たれ耳の犬の方が「親しみやすい」「怖くない」というものが挙げられます。米運輸保安局(TSA)は空港や鉄道、イベント会場など人が集まる場所で保安検査のために活躍する探知犬の種類に意図的にたれ耳の犬種を増やすことを説明しています。
それらの場所で子供たちを怖がらせないためや、親しみを持ってもらうためだとしており、TSAで活動している約1,200頭の犬のうち垂れ耳は80%、立ち耳は20%の割合となっています。
探知犬として活躍している犬種について
探知犬として活躍する犬は、警察犬との併用などからジャーマンシェパードやドーベルマンも多く見られますが、役割の性質上特に嗅覚に優れた犬種が採用されることも多くあります。嗅覚をたどって獲物を追う仕事をしてきたセントハウンド(嗅覚ハウンド)と呼ばれるグループの犬として、ビーグルやダックスフンド、ブラッドハウンドなどがいます。
それらの犬が持つ地面につくほど長いたれ耳は、周囲の雑音や関係ない場所のにおいを遮る効果があり、より集中してその場のにおいを嗅ぐことができるとされています。セントハウンドのにおい追跡欲求は非常に強く、どこまでも頑固に追いかける気質を持ちます。多くのセントハウンドは人間に従順ですが、その本能が発揮される際には人間の制御が及ばないこともあるほどだとされています。
また、セントハウンドの特徴であるたれ耳は見る人への威圧感を減らす効果もあり、親しみやすい犬種でもあるため特に多く起用されています。
まとめ
アメリカの空港で働く様々な探知犬は、犬の持つ能力をいかんなく発揮して国内の安全を守っています。麻薬や爆発物、銃器を始め、危険をもたらす可能性のある検疫検査対象物を発見するほか、象牙などの密猟物を探知する犬などもいます。
アメリカはそうした探知犬の訓練が積極的に行われ世界的に先進国としても知られています。そのため、世界各地にアメリカで訓練された探知犬が提供されており、日本の麻薬探知犬第一号もアメリカから提供された犬でした。
アメリカのみならず、日本や世界各地の空港で探知犬を見かける機会があるかもしれませんが、その際には静かに見守ってあげるようにしてください。声をかけられたり撫でられたりすることで集中力を欠いてしまう犬も多いので、探知犬を見つけた際には騒いだり触ったりせず遠くから心の中で応援してあげましょう。