ブリーダーとは
ブリーダーとは、動物の繁殖や飼育を行い、ペットショップや個人の飼い主さんに販売する人を指します。
ブリーダーの種類は、犬を扱うドッグブリーダーや、猫を専門とするキャッテリー、他にも小動物や鳥、熱帯魚、爬虫類を扱うブリーダーなどさまざまです。
ドッグブリーダーの場合、チワワ専門、トイプードル専門、柴犬専門のように専門的に1つの犬種の繁殖を行っていることが多いです。この記事では、犬のブリーダーになるために必要なことをまとめてみました。
ブリーダーになるには資格が必要?
ブリーダーになるには、特別な免許や国家資格などは必要ありません。しかし、正しく犬の繁殖を行うブリーダーになるには、遺伝や病気、血統に関する知識を身につけなければいけません。
これらを身につけるためには、ドッグブリーダーの育成を行う専門学校や通信講座で知識を習得するか、実際にブリーダーとしての実務経験を積む必要があります。
なお、全国ペット協会に登録すると、犬に関する知識を身につけて、スキルアップを目指すための資格取得などのサポートをしてくれるようです。
資格以外に必要なもの
第一種動物取扱業の登録
ブリーダーになって動物を取り扱う(動物の販売、保管、貸出し、訓練、展示、競りあっせん、譲受飼養を営利目的で行う)場合は、営業をスタートする前に「第一種動物取扱業」の登録をしなければいけません。各都道府県に届出をして、許可を得る必要があります。
参考文献:第一種動物取扱業者の規制|動物の愛護と適切な管理|環境省
動物取扱責任者の選任
さらに、第一種動物取扱業の登録をするためには、動物取扱責任者の選任をしなければいけません。動物取扱責任者になるためには、3つの要件の中のいずれかに該当する必要があります。
- 動物取扱業の登録をしているペットショップなどで、半年以上の実務経験を積むこと。
- 愛玩動物飼養管理士や家庭動物販売士、動物看護師など約30種類ほどある資格の中のどれか1つを取得すること。
- 第一種動物取扱業に関する技術や知識について、1年以上教育している学校法人やその他の教育機関を卒業していること。
動物取扱責任者になるための詳細については、事業を営む予定の都道府県の行政で確認するようにしましょう。
ブリーダーになるために必要な費用
- 通信講座を受講する場合:約10万円
- 専門学校に通う場合 :約100万円
- 動物取扱業者の登録料 :15,000円
- 繁殖犬購入費 :30万円~60万円
(犬種や血統により異なる) - 設備・備品 :2万円~3万円
(ケージ、給水器、フードボールなど)
※犬1頭につきそれぞれ備品が必要になります。
通信講座で専門的なブリーダーの知識を身につけたい場合は約10万円ほど、ドッグブリーダーの専門学校に通う場合は約100万円ほどの費用が必要になってきます。また、動物取扱業者の登録をする時も1万5千円ほどの費用がかかります。
さらに設備を整えるための費用も必要になり、ブリーダーの規模や飼う犬の数によって費用はさまざまです。例えば、自宅の一部を使用してブリーダーを始める場合はリフォーム費用がかかることもあります。
また、自宅にスペースが確保できない場合は、別の場所を借りるための費用が必要になるでしょう。その他にも、犬1匹につき1つずつ飼育グッズが必要になり、それらのグッズを揃えるだけでも最低1万円はかかるといわれています。
ブリーダーの年収
ブリーダー系企業に就職した場合
・20代前半で220万~250万円
・30代前半で400万~500万円
独立してブリーダー開業した場合
・年収1000万円超えも可能
(頑張り次第)
ブリーダー業を営む企業に就職した場合の平均年収は、20代前半で年収220万~250万円、30代前半で400万円から500万円といわれています。
企業に就職してブリーダー業に携わる場合は、給与制になるため生計が立てやすい他、繁殖に関する知識や独立してブリーダーになるには、どのようなノウハウが必要なのかを学ぶことができるでしょう。
一方、独立してブリーダー業を営む場合は、毎月決まった収入があるわけではありません。取り扱う犬の種類や数、本格的にショーやコンテストの受賞を目指すのかどうかによっても収入はさまざまです。
ブリーダーから犬を購入する時はそれなりの値段がするため、もしかしたら儲かる仕事のように思う方もいるかもしれません。しかし、実際は食費やワクチン代などの他にもさまざまな経費がかかるため、販売価格がそのまま収入になるわけではありません。
ブリーダーの始め方
家族に相談する
ブリーダーになるには、まず家族への相談が必要です。ブリーダーは、朝から晩までほとんど1日中犬の世話をしなくてはいけません。また、年中無休なので家族の理解が必要不可欠になります。
家族の了承を得た上で、協力してもらわなければ、優良ブリーダーとして長く続けることは難しいでしょう。
- 年中無休で1日中犬の世話が必要になるため、家族の理解は必要不可欠です。
ビジョンを決める
どのような規模にするのか、どの犬種を扱うかなどのビジョンを決めてからブリーダーを始めることをおすすめします。ビジョンを決める時は、どんなブリーダーになりたいのかや、どんなところにこだわりを持つのかがポイントになるでしょう。
また、安定した経営状態を保つことができるブリーダーになるには、生き物を扱うことを意識して、長期的な計画を立てておく必要があります。
犬には繁殖可能な時期が決まっています。その期間が過ぎて繁殖能力がなくなった犬たちを、どのように飼育していくのか、また飼育する上でかかる費用はどうするのか、などを開業前に考えておきましょう。
- 規模を決める
- 扱う犬種を決める
- こだわるポイントを決める
- 繁殖能力がなくなった犬たちをどうするか決める
- 資金をどうするか決める
場所を確保し備品を揃える
ブリーダーになるには、場所を決めて犬を飼育するために必要な備品を揃えなければいけません。
まず、犬1匹につき1つのケージが必要になります。また、犬が自由に運動することができるように、犬が飛び出さない高さのサークルも用意しておかなければいけません。
その他にも、リードや首輪、ブラシ、トイレシート、ドッグフードなど犬の飼育に必要な備品を用意しておきましょう。さらに、住宅街でブリーダー業を営む場合、「鳴き声」や「臭い」で近隣トラブルになることが多いため、そのあたりの注意も必要です。
- 飼育に十分な広さの場所を確保する
- 「鳴き声」や「臭い」で近隣住民とトラブルにならないよう配慮する
人脈をつくる
ブリーダーになるには、人脈をつくることも必要です。繁殖させたい犬種のドッグショーを実際に見に行き、他のブリーダーと交流を持ちましょう。
信頼関係を深めることができれば、その犬種ならではの飼育方法や、どのような環境で飼育や繁殖を行っているのかなどを教えてもらえるかもしれません。
信頼できるブリーダーにノウハウを学び、人脈を広げた後に開業する流れが理想的です。また、ブリーダーを始める前に人脈を広げておけば、より良い犬を親犬として迎えることができるかもしれません。
ブリーダーの1日
午前
朝起きたらまずはじめに、親犬と子犬の健康状態に異常がないかどうかを確認します。その後は朝の散歩の時間です。夏は日が出て暑くなる前に起床して、涼しい時間に散歩に出かけます。
散歩から帰ってきたら、決まった時間に食事を与え、その後ケージの掃除や換気を行います。子犬の場合は1日数回に分けて食事を与える必要があるため、11時頃になったら2回目の食事を与えます。
午後
午後からは犬舎で使用したタオルを洗濯したり、消耗品の買い出しに行ったりします。犬種にもよりますが、被毛のお手入れが毎日必要になることもあり、日によってはシャンプーが必要になるかもしれません。
夕方になったら、もう一度散歩に出かけて最後の食事を与えます。
夜
1日の終わりに親犬の健康チェックと、子犬がしっかりと母乳を飲んで順調に育っているかどうかを確認します。
犬が就寝した後は、個人のお客様や取引先のペットショップから届いたメールなどの対応を行います。出産の時期になると、夜中であっても犬から目を離すことができません。
ブリーダーになるには、自分の時間や完全な休日を取ることが難しくなるかもしれないことを知っておきましょう。
副業としてやりたい場合
専業のブリーダー以外に、他の仕事をしながら副業としてブリーダー業を行う方もいます。繁殖や生態に関する知識や経験、スキルを持っていれば、副業でブリーダーになることも可能です。
ただし、本業の方があまりにも忙しい場合は、副業でブリーダー業を行うことはおすすめできません。犬の飼育は、決して簡単なことではありません。
副業としてブリーダーになるには、生き物を扱う仕事であることをしっかりと認識し、責任感を持って犬を飼育することができるかどうかを考えてからにしましょう。
ブリーダー崩壊のリスク
犬の健康状態や血統の管理をせずに、利益のためだけに多頭飼いをし、繁殖活動を繰り返すブリーダーがいます。犬の管理ができなくなり、破綻してしまった状況を「ブリーダーの崩壊」といいます。
破綻したブリーダーに飼われていた犬は、衛生状態の悪さから感染症にかかっていたり、餌を与えられずにそのまま餓死したりするなど悲しい運命をたどります。ブリーダーになるには、このような現状があることを知っておかなければいけません。
動物愛護法という法律が改正され、不適格なブリーダー業者に対して、登録の拒否や取り消しができるようになりました。しかし、日本では未だに資格がなくてもブリーダーになることができます。
誰でもなることができるブリーダーですが、必ず犬の繁殖や飼育に関する専門知識を学び、命を扱う責任重大な仕事であることを意識しなければいけません。
「ブリーダー」と「繁殖業者」の違い
ブリーダーと繁殖業者は、両方とも犬の繁殖を手がけているため同じように思われることがありますが、実際は異なります。
ブリーダーは、扱う犬種の血統や質の良い犬を残すために、衛生管理や健康状態に細心の注意を払って、繁殖や飼育に取り組んでいます。また、特定の犬種に魅了されて繁殖活動を行っていることが多く、犬種の流行に左右されることはほとんどありません。
一方、繁殖業者は、利益を求めて子犬を乱繁殖しています。劣悪な飼育環境の中で、生きていくために必要なほんの少しの餌を与え、散歩に連れて行くこともありません。犬種ごとの育て方や特徴を理解することなく、人気の犬種を飼育し、犬を商品として扱い悪質な経営を行っています。
まとめ
犬のブリーダーになるには特別な資格は必要ありませんが、軽い気持ちで始められる仕事ではないことを知っておきましょう。
犬の命を扱うブリーダーの仕事は、犬への愛情や責任感がなければ務まりません。しっかりと専門的な知識を身につけ、なぜブリーダーになりたいのか、どのようなブリーダーを志したいのかをよく見つめて、信頼され続けるブリーダーを目指してもらえればと思います。