犬が人間の「うつ病」を改善する力があるって本当?
犬と人間が共存してきた歴史は非常に長く、人間と動物という関係性の中でも特別な関係を持っているとされています。 実際、現在では私たち人間と一緒に働く「職業犬」と呼ばれる犬も、多く活躍していますよね!
さて、そんな私たちとともに過ごす時間が非常に長い犬には、人間の「うつ病」を改善する力があると言われていることをご存じでしょうか。
犬自体に、特殊能力が備わっているという話ではありません。
犬と一緒に触れ合ったり、犬を家族として迎えたりすることにより、人間側に様々なメリットを与えてくれるという点から、うつ病を改善する力があると言われているのです。
日本国内でも活躍する「セラピードッグ」
先ほど、様々な「職業犬」が存在するという話をしました。
代表的な犬の職業に警察犬、麻薬探知犬、災害救助犬が挙げられます。
こちらは皆さんもご存じでしょう。では、「セラピードッグ」をご存じですか?
セラピードッグとは、人間の病気の治療やリハビリに関わり、病気の症状や身体機能・精神機能の改善を助ける役割を担う犬です。この動物介在療法の対象には、高齢者や身体的な障がいを持つ方の他に精神疾患も含まれているのです。
うつ病の患者さんがセラピードッグと触れ合うことで癒やされ、ストレスレベルを低下させることができたり、症状改善に繋がったりする例は、非常に多く報告されています。このセラピードッグという仕事から見ても、犬は人間の「うつ病」を改善する力を持っている、と言っても過言ではありません。
犬が人間の「うつ病」を改善する力があると言われている理由
「セラピードッグ」が活躍しているように、犬が人間に与える精神的なメリットは非常に大きいとわかります。 では、なぜ犬が人間の「うつ病」を改善する力があると言われているのでしょうか。 具体的にその理由を見ていきましょう。
犬は人間を無償で受け入れてくれる
まず犬は、人間を無償で受け入れてくれるという考えが人間にあるからです。 すべての犬がそうとは言えませんが、人懐っこい犬が多く、犬は「こちらが何かをしなければ受け入れてくれない」といった相手ではありません。
人間同士であれば、「あの人は裏で私のことを嫌っているのかもしれない」「本当はどう思っているのだろう」などと、人間関係に不安をかかえがちです。 それが現代病と言われる「うつ病」に繋がる原因の1つでもあります。
しかし、犬にそのような心配をする必要はありません。
その人に興味を持ったり好意を持ったりしているならば近寄ってきますし、その行動に裏はないからです。
このような犬の存在が、「うつ病」を持つ患者さんにとって大きな存在となっているのです。
犬は人間の行動に変化を与える
また犬と触れ合う、犬を自分の家族として迎え入れることで、その人の行動に変化を与えてくれる効果もあると言われています。どういうことなのでしょうか。
うつ病を発症すると、人によって様々な影響が出てきます。 中には性格が変わってしまい、それが行動にも悪影響を与えてしまうケースもあります。 例えば、うつ病を発症し、疑心暗鬼になってしまい、他者に攻撃的になる…といったケースです。
しかし、こうした症状を犬が緩和してくれることもあります。
これはごく稀なケースではありますが、最初にご紹介した「犬は人間を無償で受け入れてくれる」という考えから、まずは犬と関わりを持つようになり、徐々に他の人間にも心を開くようになることがあります。
もちろん、うつ病の症状がどのレベルまで進行してしまっているか、あるいはその人の元々持つ性格などによって、効果の程度は変わります。 しかし、行動に変化を与えてくれるきっかけを作り出すことができる例も報告されているのです。
犬は人間を外の世界に連れ出すきっかけを与えてくれる
家に引きこもるようになってしまった人や、うつ病を発症してしまった人は、なかなか自分から外の世界と接点を持つことは難しいようです。 しかし、犬は人間を外の世界に連れ出すきっかけを与えてくれることがあります。
例えば、ふだん出不精の人が犬を飼うことにより、毎日散歩に連れて行くために外に出るようになる…。
これにより、近所の人(特に犬を散歩させている人)と以前よりも交流を持つようになった、という話はよく聞きます。身に覚えがあるという方は多いのではないでしょうか。
これは、うつ病患者にも同様のことが言えます。
犬を家族として迎え、その犬と仲良くなることができれば、「この犬のために外に出よう」という意欲が湧いてくることがあります。それが外の世界と接点を持つ第一歩となるかもしれません。
また、より症状が改善されることで、「次はこの子を連れて少し遠出してみよう」「ドッグランにも行ってみようか」と行動範囲を広げるきっかけになることもあるでしょう。
犬は人間のストレス度を低下させる
ここまで、犬と触れ合うことで人間に良い影響を与えてくれるという話を紹介してきましたが、その根本となる理由が、犬には人間のストレス度を低下させる力があるという点です。
他の動物よりも人懐っこく人を受け入れてくれる姿勢を持つ犬だからこそできる能力と言っても良いでしょう。
実際、多くの人間は犬と触れ合ったり、アイコンタクトを取ったりすることで、ストレスレベルが下がるという研究結果も報告されています。
その研究によると、ストレスレベルが低下するだけでなく、免疫力も最適化されたというから驚きです。
こうした研究結果から、最初にご紹介したような「セラピードッグ」という職業犬が生み出されたのかもしれません。
人間と犬がアイコンタクトをとったり触れ合ったりするとオキシトシン分泌が増加する、という研究結果が複数報告されています。オキシトシンは「幸せホルモン」とも呼ばれ、母子の絆や社会的に良い関係を作るのに役立つだけではなく、ストレスを軽減させひいては免疫力を高める効果もあると言われています。このオキシトシンにより、動物介在活動の効果が現れ、犬が人のストレスを低下させてくれると考えられています。
犬は人間に責任感を与えてくれる
うつ病を患う人だけでなく、健康な人であってもこれは言えることですが、犬は家族として迎えることによって、人間に対し責任感を与えてくれる存在でもあります。
「自分がお世話をしなくちゃ、この子は生きていけない」という思いから、「愛犬がより快適に過ごすにはどうしたら良いだろう」と考える人は非常に多いです。これも一種の責任感ですよね。
「誰かのために動く」という心理は、人の心を開放的にしてくれる面を持ちます。
行動力もつきますし、自分が役に立っているという実感も湧きやすいからです。
このような「飼い主としての責任感」を持たせる効果はうつ病の人にとってだけではなく、子供がいる家庭で犬を迎える場合には、子供たちにも期待できます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。 様々な理由から犬には、「うつ病」を改善する力があるとされています。 もちろん、絶対に完治させることができる、ということではありませんが、きっかけ作りや症状緩和に貢献してくれていることは確かでしょう。
やはり犬は、人間にとって最高のパートナーということですね。
犬をトレーニングしてセラピードッグを育成している民間団体が日本にもいくつかあります。
トレーニングされたセラピードッグを飼育して動物介在療法を行っている人間の医療機関もあるようです。
アニマルセラピーが日本で広まってから久しいですが、医療従事者の指導のもとで医療行為の一部として行われる「動物介在療法(Animal Assisted Therapy; AAT)」はまだ少ないようで、犬と人との触れ合いを目的にして行われる「動物介在活動(Animal Assisted Activity; AAA)」がアニマルセラピーと呼ばれるものの大部分を占めているようです。
トレーニングされたセラピードッグとの動物介在療法だけではなく、性格や飼育管理などについて条件を満たした一般の犬との動物介在活動、またご自身が飼われているわんちゃんとの触れ合いも、人の精神活動の改善に有効だと言われています。