そもそも犬用のハーネスとは?
犬用のハーネスとは、犬の胴体に装着してリード(引き綱)をつなぐための犬具です。首に装着する首輪とは異なり、胸や背中、肩など、より広い範囲で体を支える構造になっています。
散歩中に犬が前に進もうとすると、リードから伝わる力が首輪の場合は首の一点に集中します。しかし、ハーネスの場合はその力が胸や胴体全体に分散されるため、犬の首や気管への負担を大幅に軽減できるのが最大の特徴です。
特に、トイ・プードルやチワワのような小型犬や、気管がデリケートな犬種、引っ張り癖が強い犬にとって、身体的な負担が少ない選択肢として注目されています。また、体を広範囲で保持するため、犬の動きをコントロールしやすいという側面もあります。
犬用のハーネスの付け方!正しい手順を写真で解説
ハーネスは、正しく装着できて初めてその機能を発揮します。
サイズが合っていなかったり、付け方が間違っていたりすると、犬に不快感を与えるだけでなく、散歩中に抜けてしまう「すっぽ抜け」の原因にもなり危険です。
ここでは、最も一般的なハーネスの付け方を、順を追って詳しく解説します。
ステップ1:装着前の準備
まず、ハーネスの前後を確認します。一般的に、リードを取り付けるためのDカン(D字型の金具)が付いている方が背中側(上側)になります。
ハーネスを床や地面に広げ、犬が足を入れやすいように形を整えておきましょう。
犬が落ち着いている状態で始めることが大切です。興奮している場合は、少し待ってから装着しましょう。
ステップ2:ハーネスの装着
ハーネスの形状によって装着方法は異なりますが、基本的な流れは同じです。
頭からかぶせるタイプの場合は、まず首の部分を優しく通します。次に、犬の前足を一本ずつ、ハーネスの足を入れるための輪にそっと通していきます。
このとき、犬が嫌がるそぶりを見せたら無理強いせず、一旦中断しておやつを与えるなどして、ハーネスに対する良い印象を持たせることが重要です。
ステップ3:バックルの装着とサイズ調整
両足を通したら、背中側や体側部にあるバックルを「カチッ」と音がするまでしっかりと留めます。最後に、最も重要なサイズ調整を行います。
ハーネスと犬の体の間に、人の指が2本程度スムーズに入るくらいの隙間が適切とされています。緩すぎるとすっぽ抜けの原因になり、逆にきつすぎると皮膚が擦れたり、犬の動きを妨げたりしてしまいます。
各部のベルトを調整し、犬が動いてもずれないか、苦しそうにしていないかを確認して装着完了です。
犬のハーネスの種類(タイプ)と付け方の違い
ハーネスには様々な種類があり、それぞれ形状や付け方、適した犬種が異なります。ここでは代表的な3つのタイプをご紹介します。
8の字型(フィギュア8)ハーネス
8の字型ハーネスは、2つの輪が連なったシンプルな形状が特徴です。首と胴体にそれぞれ輪を通して装着します。
軽量で犬の動きを妨げにくい反面、体にフィットさせるための調整がやや難しいことや、引っ張る力が強いと体に食い込んでしまう可能性があります。
柴犬やコーギーなど、活発に動く中型犬によく使用されます。付け方は、まず首の輪を通し、次にもう一方の輪を胴体に回してバックルで固定します。
H型(エイチ型)ハーネス
H型ハーネスは、犬を上から見たときにアルファベットの「H」のような形に見えることからそう呼ばれています。
首と胴体を2本のベルトでつなぐ構造で、体にフィットさせやすく、犬の動きを邪魔しにくいバランスの取れたタイプです。
8の字型と同様に、まず首を通して、次に胴体のベルトをバックルで留めて装着します。調整箇所が多く、犬の体型に合わせやすいのがメリットです。
ベスト型(ソフトハーネス)
ベスト型ハーネスは、洋服のように広範囲で体を包み込む形状をしています。
面で体を支えるため、体への負担が最も少なく、衝撃を和らげる効果が高いのが特徴です。特に、体が小さくデリケートなチワワやポメラニアンなどの小型犬や、シニア犬に適しています。
頭を通して前足を入れるタイプや、足を入れずに背中で留めるタイプなど、様々な装着方法の製品があります。初心者でも比較的簡単に着脱できるものが多いのも魅力です。
犬用ハーネスを付けるメリット・デメリット
ハーネスの導入を検討する上で、その利点と注意点の両方を理解しておくことが重要です。
ハーネスのメリット
最大のメリットは、犬の首や気管への負担を軽減できることです。リードを引いた際の力が分散されるため、咳き込みやすい犬や、呼吸器系に配慮が必要な短頭種(フレンチ・ブルドッグなど)も安心して散歩ができます。
また、体を保持する面積が広いため、犬の急な動きをコントロールしやすく、特に力の強い大型犬や、交通量の多い場所での散歩における安全性が高まります。
ハーネスのデメリット
デメリットとしては、首輪に比べてすっぽ抜けのリスクが挙げられます。犬が後ずさりしたり、パニックになったりした際に、体の構造上抜けてしまう可能性があります。そのため、体にぴったりとフィットさせるサイズ調整が非常に重要になります。
また、洋服を着るような感覚に近いため、体に触れられるのが苦手な犬にとっては、装着自体がストレスになる場合があります。
ハーネスを付けるのが苦手な犬向けの練習方法
愛犬がハーネスを嫌がる場合、無理やり付けるのは逆効果です。「ハーネス=嫌なこと」と学習してしまい、さらに抵抗が強くなる可能性があります。焦らず、段階を踏んで練習しましょう。
ステップ1:ハーネスに慣れさせる
まずはハーネスそのものに慣れてもらうことから始めます。
犬の生活スペースにハーネスを何気なく置いておき、匂いを嗅いだり、触れたりしたら褒めておやつを与えます。
これを数日間繰り返し、ハーネスが「自分にとって害のない、良いことがあるもの」だと認識させます。
ステップ2:体に触れる練習
次に、ハーネスを犬の背中に乗せるところから始めます。
乗せることができたら、すぐに褒めておやつを与え、ハーネスを外します。これを繰り返し、徐々に乗せている時間を延ばしていきます。
このステップをクリアしたら、次はハーネスを頭の上や足元に近づける練習へと進みます。
ステップ3:短時間の装着練習
犬がハーネスに抵抗を示さなくなったら、いよいよ装着の練習です。
まずは室内で、バックルを留めずに頭や足を通すだけ、といったごく短い時間から試します。成功したらすぐに褒めて外し、たくさんのおやつを与えます。
徐々に装着している時間を延ばしていき、最終的にバックルを留めて室内を少し歩く練習をします。
全てのステップで、犬がリラックスしている状態で行うことが成功の鍵です。
目的別おすすめ犬用ハーネス3選
市場には数多くのハーネスがありますが、ここでは目的別に選び方のポイントとなる3つのタイプをご紹介します。
初心者でも扱いやすい「簡単装着ベスト型ハーネス」
初めてハーネスを使う飼い主や、着脱の手間を省きたい方には、簡単装着を謳ったベスト型がおすすめです。
足を上げずに頭を通して背中のマジックテープとバックルで留めるだけのタイプなど、犬に負担をかけずに素早く装着できるものが多くあります。
通気性の良いメッシュ素材のものを選べば、一年中快適に使用できます。
引っ張り癖の強い犬には「機能性ハーネス」
散歩中の引っ張り癖に悩んでいる場合は、引っ張り防止機能がついたハーネスを検討すると良いでしょう。
例えば、リードを胸の前側にあるリングに取り付けるタイプのハーネスは、犬が前に引っ張ると自然に体の向きが飼い主の方へ変わるため、引っ張りを抑制する効果が期待できます。
犬のトレーニング理論に基づいて設計された製品を選ぶのがポイントです。
デザインも楽しみたいなら「ファッション性の高いハーネス」
毎日の散歩がもっと楽しくなるような、デザイン性の高いハーネスも人気です。
洋服とコーディネートできる柄物や、上質な革を使用した製品、夜間の散歩に安心な反射材付きのものなど、機能性だけでなくファッション性も重視して選ぶのも一つの方法です。
ただし、デザインだけでなく、愛犬の体型に合っているか、素材は安全かといった基本性能を必ず確認しましょう。
まとめ
ハーネスは、正しく選び、正しく使うことで、愛犬の身体的負担を減らし、散歩の安全性を高めることができる非常に優れたアイテムです。大切なのは、ご自身の愛犬の犬種、体型、性格、そして癖をよく観察し、最適な一品を見つけてあげることです。
もし装着を嫌がる場合は、焦らずにこの記事で紹介した練習方法を試してみてください。飼い主がリラックスして接することで、犬も安心してハーネスを受け入れてくれるようになります。愛犬にぴったりのハーネスを見つけて、毎日の散歩をさらに楽しく、快適なものにしてください。