犬がカレーを食べてはいけない理由
香辛料の強い香りが食欲をそそるカレーは、多くの家庭で人気のメニューでしょう。しかし、カレーは、犬にとってはたくさんの危険を含んだ食べ物です。
今や飼い主の間ではよく知られている玉ねぎ中毒だけでなく、意外と知られていないカレーの危険性や、万が一犬が食べてしまったときの対処法をお伝えします。
玉ねぎ中毒を引き起こす危険性がある
カレーに必須の具材である玉ねぎは、犬にとっては危険な食べ物です。
玉ねぎには有機チオ硫酸化合物という酸化作用を持つ物質が含まれており、犬の体内に入ると赤血球やヘモグロビンを酸化し、溶血性貧血を引き起こします。
有機チオ硫酸化合物は、人間にとっては血栓を予防するうれしい効果を持っていますが、犬はこれを消化する酵素を持っていないのです。
現在では犬の玉ねぎ中毒は飼い主の間によく知られています。
しかし、注意しなければならないのは煮込んで形を失った玉ねぎや溶け出したスープにも中毒成分が残っていることです。玉ねぎの中毒成分は、熱をかけても分解されません。
刺激が強い香辛料が入っている
刺激の強い香辛料も、犬には与えない方がよいでしょう。
一般的なカレールーの原材料表示を見ると、多くの商品で「カレー粉」「香辛料」または「ガーリックパウダー」などの記載があります。
カレー粉や香辛料に入っている唐辛子やコショウなどの刺激物は、犬の胃腸に負担をかけ嘔吐や下痢の原因となるのです。
また、ニンニクは玉ねぎと同じくユリ科ネギ属の植物で、玉ねぎ中毒を引き起こすことがあります。中毒成分は乾燥させても変化しないため、パウダー状に乾燥させた玉ねぎやニンニクでも危険性は同じです。
カレー以外でも顆粒だし、洋風ブイヨンなどの原材料表示には、玉ねぎ粉末の記載をよく見かけます。固形の玉ねぎだけでなく、スープのだしにも注意しましょう。
犬にとって塩分が多すぎる
カレールウには、犬にとって過剰な塩分が含まれているため、与えるべきではありません。
市販のカレールウには約10%の塩分が含まれています。これをカレーライス一皿分に換算すると、約2gになります。体重5㎏の犬の場合、1日の塩分摂取量の目安は約0.18gですので、一皿分の10分の1を舐めたとしても過剰摂取です。
食塩は動物が生きていくうえで不可欠な栄養素ではありますが、過剰に摂取すると高血圧、心臓・腎臓障害、皮膚のかゆみなどを引き起こしてしまいます。
アレルギーを起こす食材が入っている
カレーに入っている具材や成分に対して、犬がアレルギーを持っていることもあります。
ナス科の野菜にアレルギーがある場合は、ジャガイモやトマトに反応が出る場合があります。セロリやニンジンなどのセリ科の野菜にアレルギーを持つ犬もいます。
また、市販のカレールウのほとんどには、食用油脂、小麦、でんぷんなどのアレルギーの原因になりやすい材料が含まれています。
カレーはたくさんの具材が魅力の料理ですが、その分アレルギー物質が入っている可能性が上がってしまうのです。
犬はカレーの匂いが苦手
嗅覚が鋭敏である犬は、カレーの匂いも苦手です。
犬は人間の100万倍~1億倍も優れた嗅覚を持つと言われ、においを脳へ伝える嗅細胞の数は、人間が500万個程度であるのに比べて、犬は約2億2000万個と人間の嗅覚を圧倒しています。
嗅覚が優れている分、匂いに敏感にもなります。スパイスの強烈な匂いを嫌う習性を利用して、犬のいたずら防止用スプレーにコショウや唐辛子の成分を入れている商品もあるほどです。
このような商品は、刺激臭を嫌う犬を遠ざける用途で使用されます。自宅で本格的なカレーを調理する場合は、犬を別の部屋へ移動するとよいでしょう。
たとえ少量であっても危険!
カレーは犬が少量なめただけでも中毒が出る可能性があります。
最も危険な玉ねぎは、スープに溶け込んでも乾燥させてパウダー状になっていても中毒成分は変わりません。中毒量は体重1㎏ごとに15g~30g程度と言われますが、個体差や調理方法による差が大きく、一概にはいえません。
犬種や大きさにも寄りますが、1~3㎏の超小型犬の場合は、玉ねぎスライス1かけら(約45g)を口にしただけで中毒症状が出る可能性があります。
玉ねぎだけでなく、高い塩分や刺激物となる香辛料など、カレーには犬の体に悪影響を与えるものが多く含まれますので、犬に与えるのはもちろん、調理中や配膳にも十分注意しましょう。
犬がカレーを食べたときに起きる症状
犬がカレーを食べてしまったとき、一番心配なのは玉ねぎ中毒です。玉ねぎを食べた瞬間を見ていれば、すぐに病院へ連れて行くことができるでしょう。
しかし、食べた場面を飼い主が見ていなかった場合、一つの症状だけでは玉ねぎ中毒か判断できない場合もあります。そのため、典型的な症状を複数覚えておくと早期発見に繋がりやすいでしょう。
下記の症状が見られる場合は、玉ねぎ中毒を起こしていることが考えられます。
嘔吐・下痢・食欲がなくなる
毒素が消化吸収されると、初期症状として嘔吐や下痢を繰り返すようになります。食欲は消失し、元気もなくなります。
貧血
足取りがおぼつかない、立つことができないという症状があれば、貧血を起こしている可能性があります。歯茎などの粘膜が白っぽくなっているか確かめましょう。
血色素尿
赤血球が毒素により大量に破壊されると、血色素が尿に混じりしょうゆ色もしくはコーヒー色になります。膀胱炎との違いは、頻尿ではないことです。
黄疸
黄疸は、赤血球のヘモグロビンから作られるビリルビンという色素が溶血性貧血のため血中に増加し、皮膚や粘膜に沈着して黄色っぽくなった状態です。
黄疸の症状は非常に危険な状態で、命にかかわることもあります。特に柴犬や秋田犬などの日本犬を飼育している場合は、洋犬よりも注意が必要です。
日本犬は遺伝的に赤血球の細胞膜が傷つきやすいという性質を持っているため、玉ねぎ中毒が重篤化しやすいのです。
犬がカレーを舐めたり食べたりしたときの対処法
犬がカレーを舐めた瞬間を見てしまうと、すぐに吐き出させてあげたいという気持ちになります。ネット上には犬に食塩やオキシドールを飲ませて嘔吐させる、などの誤った方法も上がっていますが、これは大変危険です。
食塩を食べさせると副作用で塩分過多になり、場合によっては高ナトリウム血症により意識障害を引き起こす可能性もあります。
また、オキシドールは確かに犬の胃を刺激して異物を吐かせることができるかもしれませんが、副作用として胃の粘膜を傷つけ、胃炎の原因になります。なにより、どちらも犬に大変な苦痛を与える方法ですので、絶対にやめてください。
では、犬がカレーを食べてしまった場合にはどのように対処したらよいのでしょうか。
すぐに動物病院を受診する
食べた量、中毒症状の有無にかかわらず、まずは早急に動物病院を受診しましょう。
玉ねぎ中毒には特効薬はなく、消化吸収される前に吐き出させるか、吸収されてしまった成分を排出するしかありません。玉ねぎがまだ胃にあるうちに受診すれば、催吐処置で吐き出させることができるでしょう。
しかし、中毒症状が進み貧血が深刻な場合、輸血が必要になる場合もあります。早急に処置をすれば、治療に対する犬の負担も大幅に軽くすることができるのです。
下痢や嘔吐の回数は記録しておく
すぐに動物病院へ連れて行けない場合は犬の様子を観察し、下痢や嘔吐の症状が出ている場合はその回数を記録しておきましょう。
玉ねぎ中毒はすぐに発症することもありますが、摂取してから症状が出るまで3~4日程かかることもよくあります。
病院へ連れて行った際には、いつ、どのような調理法で、どのくらいの量を食べたか、現在どのような症状が出ているかを伝え、獣医師の指示に従いましょう。
あくまでもすぐに病院へ連れて行くことがベストです。夜間や休日でかかりつけの動物病院が空いていないことも念頭に入れ、普段から動物病院はいくつか探しておくようにしましょう。
まとめ
カレーは犬にとって多くの危険を含んでいます。家庭でカレーを食べるときは、調理中だけでなく、配膳や食事中にも注意しましょう。
玉ねぎは熱を加えて形を失っても、パウダー状に乾燥されて顆粒だしに入っていても中毒を引き起こす可能性があります。そのため、洋風スープやシチューなども危険です。
玉ねぎ中毒は時間が経過してから発症することがよくあるため、症状がなくても動物病院を受診しましょう。自己判断で処置をすると、中毒症状以上の苦痛を犬に与えてしまうこともありますので、絶対にやめましょう。
早めの処置が、治療の負担を軽減させてくれます。日ごろから万が一に備えて、動物病院は、かかりつけ医以外にもいくつかチェックしておきましょう。