犬が食べてもいい果物・いけない果物
結論から言うと、犬は一部の果物であれば、おやつとして少量を楽しむことができます。果物に含まれる水分やビタミン、食物繊維は、上手に取り入れれば健康維持のサポートになることもあります。
ただし、すべての果物が安全というわけではありません。中には、犬が摂取すると嘔吐や下痢などの消化器症状を引き起こしたり、急性腎障害など命に関わるトラブルにつながる果物も存在します。とくにぶどうやレーズンは、ごく少量であっても危険性が高く、絶対に与えてはいけない果物の代表例です。
また、果物によっては、果肉は比較的安全でも、種や芯、皮、葉などに自然毒が含まれている場合があります。同じ果物でも、どの部分なら与えてよく、どの部分は避けるべきかが異なるため、「種類」と「部位」の両方を意識することが重要です。
さらに、糖分やカリウムなどの栄養素は、持病や体質によっては負担になることがあります。腎臓や心臓にトラブルを抱えている犬、肥満気味・糖尿病傾向の犬、子犬やシニア犬などは、とくに慎重な判断が必要です。
このように、犬にとっての果物は「適切な種類を、適切な範囲で楽しむもの」です。どの果物をどのくらい与えられるのか、そもそも与えてはいけないのかを見極めたうえで、安全に付き合っていきましょう。
犬に果物を与えてもいい量の目安
果物は、ドッグフードの栄養バランスを崩さない範囲で与えることが大切です。
基本的な目安としては、1日に必要な総摂取カロリーの10%以内に収めることが適量の指標になります。これはあくまで「おやつ」の扱いであり、主食の代わりにすることはできません。
以下は、一般的な果物を与える際の「可食部量の目安」を体重別にまとめた表です(健康な成犬の場合)。果物の種類ごとの特性や危険性ではなく、あくまで“量”の目安としてご活用ください。
| 体重 | 1日に与えてよい果物の量 | 例:りんご換算(可食部) |
|---|---|---|
| 1〜3kg(超小型犬) | 5〜15g | 薄いスライス1〜2枚 |
| 4〜10kg(小型犬) | 15〜40g | 1/8個〜1/6個ほど |
| 11〜20kg(中型犬) | 40〜70g | 1/4個前後 |
| 20kg以上(大型犬) | 70〜120g | 1/3個〜1/2個 |
同じ果物でも個体差が大きいため、「何個」ではなく「可食部の重さ」で考えると過剰摂取を防ぎやすくなります。また、水分量の多い果物ほど一度に食べ過ぎるとお腹が緩くなるため、初めて与えるときは少量から始めるのが安心です。
子犬は消化機能が未発達なため、生後半年までは果物を控えるのが無難です。シニア犬は代謝が落ちたり喉に詰まりやすくなるため、量を少なくし、細かく刻んであげる配慮が必要です。
病気や持病のある犬は、体質により少量でも負担になる場合があるため、事前に獣医師へ相談してください。
犬が食べてもいい果物の種類
犬が安心して食べられる果物はいくつかありますが、種類ごとに特徴や注意点が異なります。ここでは、代表的な果物について「どの部分を与えるか」「どんな栄養が期待できるか」を中心にご紹介します。
いずれの果物も、あくまでおやつとして少量を与えることが前提です。詳しい量の目安や、持病がある犬に与える際の考え方については、別項目をご確認ください。
りんご
りんごは、犬にとって与えやすい果物のひとつです。皮と芯、種をしっかり取り除き、やわらかい果肉だけを小さくカットして与えます。
水溶性食物繊維のペクチンやポリフェノールを含み、腸内環境のサポートや抗酸化作用が期待できます。
種にはアミグダリンという成分が含まれており、体内で分解される過程で有害物質を生じるおそれがあります。芯ごとかじらせるのではなく、必ず人の手で下処理をしてから与えるようにしましょう。
いちご
いちごは、ヘタを取り除き、よく洗ってから与えます。ビタミンCやポリフェノールが豊富で、抗酸化作用による健康サポートが期待できます。甘みが強く香りも良いため、食いつきがよい果物です。
果肉には天然のキシリトールがごく微量に含まれますが、通常の量をおやつとして与える範囲であれば問題になることはほとんどありません。糖分が多いので、とくに体の小さな犬には一度にあげ過ぎないように注意しましょう。
バナナ
バナナは必ず皮をむき、やわらかい果肉だけを一口大にして与えます。
消化されやすい糖質と食物繊維、カリウムなどを含み、軽いエネルギー補給や腸内環境のサポートに役立つことがあります。薬を飲ませるときに、バナナで包む方法が使われることもあります。
一方でカロリーと糖質が比較的高い果物でもあります。肥満気味の犬や、腎臓・心臓に持病がある犬では、与える前に獣医師に相談し、量を慎重に調整するようにしましょう。
みかん
みかんは外皮をむき、内側の硬い薄皮もできるだけ取り除いてから、果肉だけを与えます。ビタミンCやクエン酸、水分を含み、さっぱりした風味で好む犬も多い果物です。
外皮や白い筋の部分には精油成分(リモネンなど)が含まれ、敏感な犬では胃腸の負担になることがあります。皮ごと遊ばせたり、かじらせたりせず、果肉だけを少量与えることが大切です。
梨
梨は、皮と芯、種を丁寧に取り除き、果肉を小さめの一口大に切って与えます。水分が多く、カリウムやアスパラギン酸などを含むため、暑い時期の水分補給や、軽い疲労回復のサポートが期待できます。
体を少し冷やしやすい果物でもあるため、お腹が弱い犬や冷えやすい体質の犬には、与える量や頻度を控えめにすると安心です。
シャリシャリとした食感が消化されにくい場合があるので、細かめに刻んであげるとよいでしょう。
スイカ
スイカは外側の硬い皮と種をすべて取り除き、赤い果肉部分だけを小さくカットして与えます。非常に水分が多く、カリウムなどのミネラルも含まれているため、暑い季節の水分補給に向いた果物です。
水分とカリウムが多いことから、軽い利尿が促される場合もありますが、食べ過ぎると下痢をしやすくなります。一度にたくさん与えず、少量をゆっくり味わわせるようにしましょう。
メロン
メロンは外皮とワタ、種をしっかり取り除き、やわらかい果肉を一口大にして与えます。水分とカリウム、βカロテン(品種による)などを含み、甘みが強いため犬の好みやすい果物です。
ウリ科の植物に対してアレルギーを持つ犬では、まれに口の周りのかゆみや赤みが出ることがあります。ヒトではブタクサ花粉との関連が指摘されている果物でもあるため、初めて与えるときはごく少量から様子を見てください。
キウイ
キウイは皮をむき、中央の硬い芯の部分を避けて果肉を与えます。ビタミンCやビタミンE、食物繊維を含み、アクチニジンという酵素がタンパク質の消化を助ける可能性があるとされています。
酸味が強い実は胃腸への刺激になりやすいため、なるべく完熟して甘みの強いものを選ぶと安心です。
シュウ酸カルシウムを比較的多く含む果物とされているため、尿路結石の既往歴がある犬や、結石リスクを指摘されている犬では、念のため控えめにしておきましょう。
ブルーベリー
ブルーベリーは、よく洗ってから皮ごと与えることができます。アントシアニンやビタミンEなどの抗酸化成分を含み、活性酸素から全身や目の健康を守るサポートが期待されています。
粒が小さいため、そのまま飲み込んで喉に詰まりそうな場合は、半分に切るか軽くつぶしてから与えると安心です。とくに体の小さな犬やシニア犬では、飲み込みやすい大きさに整えてあげましょう。
パイナップル
パイナップルは、硬い皮と芯を完全に取り除き、果肉だけを細かく刻んで与えます。ブロメラインという酵素やビタミンB1、食物繊維を含み、消化やエネルギー代謝をサポートするとされています。
繊維質が多く、一度に大量に食べると消化不良から下痢を起こすことがあります。缶詰のシロップ漬けは砂糖が多すぎるため避け、必ず生の果肉を少量ずつ与えるようにしましょう。
マンゴー
マンゴーは皮と大きな種を取り除き、やわらかい果肉部分だけを一口大にして与えます。βカロテンやビタミンC、ビタミンEが豊富で、抗酸化作用による健康サポートが期待できる果物です。
マンゴーはウルシ科の植物で、ヒトでは口の周りのかぶれやアレルギーが報告されています。犬でもまれに口周りの赤みやかゆみが出る可能性があるため、初めて与えるときはごく少量から始め、皮膚や体調の変化がないか確認しましょう。
犬が食べてはいけない果物の種類
犬にとって危険な果物は、「少量なら大丈夫」ではなく一口でも避けるべきものとして扱う必要があります。中には、ごくわずかな量でも中毒を起こし、急性腎障害や呼吸困難など命に関わる状態に進行するものも含まれます。
見た目や香りが甘くても、人間にとって安全だからといって犬にも安全とは限りません。とくに、種や皮、葉、枝などに自然毒が多く含まれる果物もあり、誤ってかじってしまっただけで危険なケースもあります。
ここでは、とくに注意してほしい代表的な果物を紹介します。
ぶどう・レーズン
ぶどうやレーズン(干しぶどう)は、犬にとって最重要レベルで注意が必要な果物です。
原因物質はまだ完全には解明されていませんが、近年は酒石酸が関与している可能性が指摘されており、ごく少量でも急性腎障害を引き起こすおそれがあることが分かっています。
品種や大きさ、種あり・種なしにかかわらず危険で、皮をむいた場合でも中毒が起こり得ます。摂取後数時間以内に見られやすい症状は、嘔吐、下痢、元気消失、食欲不振などで、その後に尿量の減少や無尿がみられることもあります。
口に含んで飲み込んでしまった場合は様子見をせず、すぐに動物病院へ連絡してください。
アボカド
アボカドは、果肉・皮・種・葉など全体に「ペルシン」と呼ばれる成分を含んでおり、動物種によっては強い毒性を示します。
犬は鳥やウマなどに比べるとペルシンへの感受性はやや低いとされていますが、それでも嘔吐や下痢などの消化器症状を引き起こす可能性があります。
さらに、アボカドは脂肪分が非常に多い果物です。脂質のとり過ぎは、急性膵炎など重い病気の引き金になることがあり、厚みのある大きな種を飲み込むと腸閉塞の危険も生じます。
こうしたリスクを考えると、アボカドは犬には与えないほうが安全です。
プルーン
プルーン(乾燥プラム)や生のプラム(すもも)の種・茎・葉には、アミグダリンという成分が含まれています。
体内で分解される過程で有害な物質を生じることがあり、大量に摂取すると呼吸が速くなる、粘膜が赤くなる、ふらつき、けいれんなどの症状を引き起こすおそれがあります。
果肉自体は少量であれば強い毒性を示すとは限りませんが、乾燥プルーンは糖分とカリウムが非常に濃縮されており、下痢や電解質バランスの乱れを起こしやすくなります。
誤って種をかじったり飲み込んだりする危険もあるため、犬の届く場所には置かないようにしましょう。
イチジク
イチジクの果肉や皮には、「フィシン」というタンパク質分解酵素や、「ソラレン」といった成分が含まれており、犬が食べると口の中の炎症や多量のよだれ、嘔吐などを引き起こすことがあります。皮膚が敏感な犬では、口周りの赤みやかゆみがみられることもあります。
家庭菜園や庭木としてイチジクを育てている場合、葉や枝をかじるだけでも、白い樹液によって皮膚炎を起こすことがあります。実だけでなく木全体に近づけないように配慮し、落ちた実などもこまめに片づけるようにしましょう。
ドライフルーツ
ドライフルーツは、水分が抜けている分だけ糖分やカロリーが凝縮されているため、少量でも血糖値や体重に大きな負担をかけやすい食べ物です。
レーズンはぶどうと同様に非常に危険であるほか、他のドライフルーツでも下痢や嘔吐の原因になることがあります。
人間用のドライフルーツには、砂糖やシロップ、保存料、漂白剤などが添加されている場合が多く、製品によっては人工甘味料のキシリトールが使われていることもあります。
キシリトールはごく少量でも重い中毒を起こす危険な成分です。ペット用として安全性が確認された製品以外のドライフルーツは、犬には与えないようにしましょう。
犬に果物を与えるときの注意点
果物は、正しく扱えば犬にとって良いおやつになりますが、与え方や体質によっては思わぬトラブルにつながることがあります。
ここでは、果物全般に共通する注意点を整理し、日常的に気をつけたいポイントを分かりやすくまとめました。
種類ごとの危険性ではなく、「どの果物にも共通して気をつけるべきこと」を中心に紹介しています。安全に果物を楽しませるための基本としてお役立てください。
皮・種・芯は必ず取り除く
果物の皮や種、芯は、犬にとって消化が難しいだけでなく、自然毒が含まれることもあります。
とくにバラ科の果物(りんご・桃・プラムなど)の種には、アミグダリンなどの有害成分が存在し、体内で分解される過程で毒性を生じるおそれがあります。
また、種や芯を丸飲みすると喉に詰まったり、腸閉塞を起こす危険もあります。果物を与えるときは、皮・種・芯を丁寧に取り除き、食べやすいサイズにカットしてから与えましょう。
冷たい果物・食べ過ぎによる下痢に注意
冷蔵庫から出したばかりの冷たい果物は、犬の胃腸を冷やし、下痢や嘔吐のきっかけになることがあります。与えるときは常温に戻すか、ごく少量からスタートすると安心です。
また、水分の多い果物は、食べ過ぎるとお腹が緩くなりやすくなります。初めての果物や久しぶりに与える果物は、少量から与えて体調の変化がないか観察することが大切です。
糖分による肥満・糖尿病リスク
果物の甘さは主に果糖によるものです。ビタミンや食物繊維が摂れる一方で、糖分が多いため、とり過ぎると肥満や糖尿病のリスクが高まります。とくに小型犬では、果物数口でも総摂取カロリーの割合が大きくなってしまいます。
毎日たっぷり与えるのではなく、特別な日のごほうびや軽いトッピングとして、量を控えめにするのが安全です。糖尿病や肥満傾向の犬には、果物の頻度や種類をあらかじめ獣医師に相談するとよいでしょう。
アレルギーが心配な場合は少量から
食物アレルギーを持つ犬は、果物に対しても反応を示すことがあります。
ほとんどの果物はアレルギー食材としては一般的ではありませんが、体質によっては口周りの赤み、かゆみ、下痢、嘔吐などが出ることがあります。
初めての果物は、ごく少量から与えて、半日ほどは体調や皮膚の変化を観察してください。複数種類を同時に試すと原因がわからなくなるため、1種類ずつ与えるのがおすすめです。
加工品(缶詰・ゼリー・ジュース)は与えない
人間向けに加工された果物製品は、砂糖やシロップ、保存料、香料などが多く含まれており、犬にとっては過剰な糖分や添加物の摂取につながります。
とくにキシリトール入りの製品は、ごく少量でも重い中毒を引き起こす可能性があり、非常に危険です。
果物を与える場合は、必ず生の果肉を選び、加工品は避けましょう。缶詰のシロップ漬けやフルーツゼリー、ジュースなどは犬には不向きです。
子犬・シニア犬・持病のある犬は慎重に
生後半年までの子犬は、消化機能がまだ十分に発達していないため、果物は控えるほうが安心です。
与える場合も、ごく少量に留めて様子を見ましょう。また、シニア犬は代謝が落ちるほか、飲み込みが苦手になることがあるため、細かく刻むなどの配慮が必要です。
腎臓病や心臓病、糖尿病などの持病がある犬は、果物に含まれるカリウムや糖分が症状を悪化させる可能性があります。持病がある場合は、種類や量について必ず事前に獣医師へ相談してください。
まとめ
犬は、りんごやバナナ、スイカなどのように安全性が確認されている果物であれば、適量をおやつとして楽しむことができます。
果物には水分やビタミン、食物繊維などが含まれ、上手に取り入れることで健康のサポートにもつながります。一方で、ぶどうやレーズン、イチジク、アボカドなどは中毒や消化器トラブルの危険があり、少量でも避けなければならないものが存在します。
また、種や皮、芯には自然毒が含まれる場合があり、誤飲による窒息や腸閉塞のリスクもあります。果物はあくまで“おやつ”として、1日の総摂取カロリーの10%以内にとどめることが大切です。
初めて与える果物は少量から始め、アレルギーや体調の変化がないか丁寧に観察してください。もし食後に異変が見られたり、危険な果物を口にした可能性がある場合は、早めに動物病院へ相談することが愛犬を守る最善の行動です。



